「ん?なんだこれ」

がさっと突然目の前に落ちてきたものを見て驚きつつ手にとる。
なんだか巻物みたいだけれどもそれにしても重い。何重にしてあるんだ。
どうやら手紙のようだけれども、こんなところに置いておくなんて見てくれと言っているような
ものじゃないか。名前のあて先は?とくるくるとひっくり返してから見るとそこには


――― 



そう書いてあったのだ。











ということはこれは私宛の手紙ということじゃないか。
てことは見てもいいんだよね、そうだよね。はらり、と紐を解いて自分の部屋の畳の上にころころーっと
転がして開いてみる。おお、隅から隅まで転がってった。読むの大変そうだなぁ。てゆうか長すぎない?
お館さまがふむふむ、と頷きながら読んでいた佐助の報告書でもこんなには長くなかった気がするんだけど。
おいおい、誰だよこんな報告書以上の手紙を私に寄越すのは。紙はこの時代では貴重なものなのにさ。
そう思いながら字面に目を向ける、どれどれ。






「HELLO!元気にしてやがったか?!俺は相変わらずエキサイティングな日々を送ってるぜ!!」





実を言うともう冒頭のHELLO、のところで差出人が誰か分かってしまったのだけれど。
というか英語を使ってくる奴なんてこの時代では一人しか思い当たらない。
手紙の途中で、なんかもう読むのに飽きてきたのでそこはすっぱり切って後ろに目を向けた。





「―――奥州筆頭 伊達政宗、ね」





やっぱりというかなんというかまぁ伊達からだったわけだ。この長い手紙は!
伊達だったら別に真面目に手紙を読むこともないか、と思った。手紙を貰うのは初めてだけれども
あの英語使いだったら文面にも絶対ふんだんに英語が使われてるに決まってる。
最初からHELLOなんて書いてあったんだからそれは確実だ。ざっと見ただけでも漢字とひらがな
以外の単語が多く目に入って来る。うわぁ、読めねぇ。
英語の成績がどう頑張っても3から上がらなかった身としては少々解読するのに時間がかかりすぎる。
どうせ大切なこととか書いてあるわけじゃないだろうから本人から連絡があるまで放っておこう。うん。



「――殿の心の篭った手紙を読まないと申されますか」
「ぎぇっ!!!??」



突然天井から黒い影がすたっと降りてきた。
佐助かとも思ったが殿、と言った事からどうやら違うみたいだ。格好とかは似たような感じなんだけれども。
てゆうかいきなり声掛けんなよ。吃驚するじゃんか。


「ええっと、忍びの人?」
「はい。殿はそちらの手紙を殿にお渡しするように、と」
「はぁ・・・ということはこれあなたが持ってきたのかな」
「無論。出来るだけ早くということで昨夜から走ってまいりました」
「昨日から?ええーっとご苦労様。さすが忍びは早い」
「――返事を頂きたい」
「は?返事?ごめん、英語交じり(すぎ)で読めない」
「確か殿は異国語が堪能だと殿からお聞きしましたが?」
「たっ堪能?!んなわけないじゃん、さすがにハローとかはわかるけどさ」
「では手紙の意味がわからない、と?」
「うん、残念ながら。ごめん伊達にひらがなで書いてってお願いしてきて。あともうすこし短く」
「――承知」



忍びの人はそういうとしゅんっと消えてしまった。忍びなんだろうから当たり前なんだけどさすが忍び。
でも悪いことしちゃったなぁ・・・昨日から走り続けてさらにまた朝から走り詰め。うっわぁ。



「・・・可哀相なことしちゃったなぁ、どうせなら休んでもらうべきだったか?」



代わりに佐助に頼めばよかった、と心の中で思う。なんせあの超ドS顔の殿様は顔の通り、
人使いが荒いしかもあの性格だ、忍びも大変だろう。どうせさっきの手紙も朝までに届けろ、無理を言って
押し通したに違いない。ああ、武田にいて本当によかった。
武田軍にはちょっと暑苦しい奴とか変態とかいるけど、お館さまは立派な心の広い優しい人だから。








「なっ!殿!!それってもしかして某のことじゃ・・・?!」
「変態って・・・誰のこと〜?」


何故か聞こえていたらしい。地獄耳どもめ。
幸村はすぱーんっとふすまを開けて私の方に突進してくるし、佐助は屋根裏からしゅたっと降りてくるし。
おいおい、この軍はまったくもってプライベートというものがないなぁ。
てゆうか忍びの佐助がいる時点でもうないも同然だ。




「自覚・・・2人ともしてたんだー」
「では真なのでござるかぁぁあああ?!」
「黙れ幸村。うるさい」
「もー旦那が大声で叫びまくるからちゃんの機嫌がどんどん悪くなっていくでしょーが」
「佐助のせいでもあるんですけど。抱きつくな」
「ええーちゃんたら、つれないなぁ」
「ず、ずるいでござるよ!佐助!!某もー!」
「大の男が乙女の腰にしがみつくな!重いっ!」




ずーりずーりとしがみつくこの幸村と佐助を腰につけながらふすまを開けて廊下へでる。
床がひんやりとしていて気持ちよい。
まだうしろでぎゃーぎゃー騒いでいる奴らもいるが気にしない。こういうのは気にし出すと止まらなく
なるものだ。いやぁ、今日も天気がいいなぁ。はっはっは(笑顔)



「なんじゃ朝から騒々しいのぉ」
「お館さまぁ!」


お館さまが颯爽と廊下の端から現れた。喜びのあまり飛びつこうとするが、一歩出した足はがくっと
それ以上は前へ進めなくなった。



「なんなのよ!ったく!離れろってば!」
「やーだ。ちゃん離したら大将のところに行っちゃうでしょ?」
「幸村!佐助をどうにかしてよ!」
「しらないでござるー」
「てめ、このっ!」



それから離せ、離さない、離せ、離さないの押し問答を続けたけれど、2人は腰から離れようとしない。
はぁ?もうなんなの。いつもだったら幸村とかお館さまと殴りあいするじゃないの。変なの。
そうこうしているうちにお館さまが私の目の前まで来ていた。
佐助と幸村が離そうとして頑張っているけども踏ん張ってお館さまを笑顔で迎える。
やっぱり近くで見ても素敵である。ダンディである。輝いている。
さすが武田軍リーダー!(あれ、なんかずれてきた)



「時に、朝手紙が届いたか?」
「へ?あ、はい。伊達からでしたけどそれが何か?」
「実はな、」
「ああああああああああああー!!!!!殿っ!」
「ちょ、お館さまのお言葉を遮るなんて!本当にどうしたの幸村!」
にな、」
「わわわわわわわわわわわわー!!!!!ちゃーんっ!」
「YA―HA!!!ーっ!!」


は?なんか今違う声混じりませんでしたか。気のせいですかそうですか?
ってあれ、なにあの壁を飛び越えてくるものは。ん?馬?・・・の上に乗ってるのは・・・わぁーお。
どうでもいいが手綱をちゃんと持て。

「・・・伊達。もっと普通の登場の仕方ができないのかなぁ」
「手紙が読めない、だなんて俺のHONEYが駄々をこねたって聞いたから俺がじきじきに来てやったぜ」
「あんまり嬉しくないんだけど。ハニーって誰のことですか」
「勿論。お前だ」



あの口の端をにやりと上にあげて笑う凶悪なスマイルを浮かべながら馬から下りてこちらへ近づいてくる。
さっき駆け出していったばっかりなのにもう伊達にあのことが伝わったのか。
どんだけ頑張ったんだ、あの忍びの人。てゆうか手紙の意味ないよね。
最初から来れるんだったら来ればよかったのに、ん?でも奥州からここまでって距離あるよなぁ。



「あとあの手紙読めなかったんだけど、忍びの人にごめんって言っておいて」
「AHー・・・自分で言えばいいじゃねェか」
「そうそう行けるもんじゃないでしょ、奥州なんて」
「そうでござる!殿はまだ某と団子100本食べにも挑戦していないでござるしな!」
「いや・・・そんなこと約束したっけ?行きたいけど」
「HAHA!はそんな覚えがないっていってるぜ?残念だな幸村ァ、それには・・・」
「私がなにさー?」
ちゃんはオレ様と一緒に昼寝するっていう野望があんの、さぁ伊達の旦那は帰った帰った!」
「おいおいそりゃないだろ、武田の忍び」
「・・・結局何しにきたの伊達は」
「これだ、お前が読めねぇなんていうからわざわざ俺自ら届けてやったんだろ、感謝しろよ」




ほいっと渡された紙を受け取る。



「は?何これ」
「言葉どおりだ」
「これ、」



中を開くと小学生でも知ってるたったワンフレーズの英語。
これはいくら英語が3の私でもわかるけれども、今の伊達の顔をちらりと見ればいかにせよ冗談か?と思えるほど鈍いわけじゃない。
幸村と佐助が紙を覗き込むけれどやっぱり異国語だけあってよく分かってはいないみたいだ。
でも私の反応を見て、・・・まぁそんなようなことが書いてある事は理解したようだ。また幸村が騒ぎ出したから。
もう一回伊達の顔を真正面から見ると伊達は相変わらずあの意地の悪い笑顔で
ニヤニヤと私を見つめるだけだ。


「HEY、。俺と来いよ!」








I LOVE YOUを囁くから


(――殿!殿が手紙が読めないと!)(はぁああ?!くそあいつめ!俺の悩める1週間を返せ!)