じわぁっと血が滲む感覚がする。手をその場所に持っていくと生暖かいものが触れる。 やっぱ痛いか。あたりまえだけど。でもなんでだろ、後悔とかそういうのは感じない。 でもまだたった一振りだ。幸村の受けた傷よりは遥かに軽いといえるだろう。 問題を起こしたのは私自身で、それならば解決も私がするべきだ。そうでしょ? 明智軍が武田軍に奇襲を掛けたことは間違いなく、ぐずぐずしていると武田軍全体が 危ない状況にもなる。お館さまのことも心配だ。佐助がこの事態に気付くといいけど。 ACT.14 「殿!!殿!!しっかりするでござる!」 「ははっ・・心配症だなー・・・幸村は」 「少し手元が狂ってしまったようですね。一発で殺して差し上げようと思ったのですが」 「残念だったね・・・しぶといんだ。この通り、」 幸村の腕が肩にまわされ、ぐっと引き寄せられる。情けない、自分で守ったくせに体はまた 震え出している。やっぱ怖かったか。臆病者だもんな、私。 でもきっと大丈夫だろう。香が無くなった今、幸村の障害になるものは 私と幸村の傷ぐらいなものだろうから。 血が思ったより出ているのだろうか、だんだん手の先が冷たくなっていく。 それを無理やり動かして、手を幸村の首の後ろに掛けて、ぎゅっと抱きしめる。 幸村がはっと息を呑む気配がして、慌てて私の腕を自分の身体から離そうとするがもう遅い。 すぅっと幸村の負った傷のじくじくとした痛みが流れ込んでくる。 これで良しっと。なんとかなる。幸村ならきっと大丈夫だろう。 「殿・・・っ!なんということを・・・!」 「幸村・・・」 ちゃんと笑えていただろうか。ちゃんと笑えた自信はない。だって笑った瞬間、幸村の顔が 酷く辛そうに歪んだから。そっか、私はこの顔をさせたくなくて、したくなくて。 私は自己犠牲なんて所詮は自己満足でよくそんなことが出来るな、といつも思っていてそれを嫌っていたけれど逆に考えてみれば、 残された方は辛い思いをすることになる代わりに助けた方はそれを感じることもないということに気が付いたんだ。 そう、自己犠牲とは残された痛みを負わないというずるい選択肢。あとに残る人のことなんて微塵も考えてはいない行為。 でも私はずるい人間だから結局自己犠牲なんて道を選んだ。誰だって辛い方に残りたくはない。 そうでしょ?だから庇ったんだよ。だからそんな顔して私のことを心配しないで。 どうか幸村にそんな顔をさせておきながら、このまま自分だけが満足してしまうことを許して。 許して、ともう一度小さく呟いた。何故か周りは無音だ。明智が行動を起こした気配も感じられない。 もう限界だ。サバイバル度マイナス100ポイントの未来人の私にはこのアドベンチャーは、 いささか難しかったらしい。目が自然に閉じていくことだけを感じることが出来た。 もうすべてをやりきった後は誰の障害にもならないことを祈るだけだ。幸村が何かを叫んでいる。 駄目だ・・・全然聞こえないや。あとは頑張ってくれ。生き延びろよ、幸村。 そこまで考えて、私の意識は深く途切れた。 とりあえず、武田編はおわりかな? |