「なぁ、俺のこと好き?」
「・・・は?」

図書館からの長い道のりを乗り越え、ようやく
談話室に入ってきたばかりの人間にそれを言うのはどうだろう。
ちょっと、唐突過ぎる気がするんですけど。頭大丈夫か。
そんな不平不満を心の中だけで留めておくのは、はっきり言って無理なので口に出してやる。

「・・・頭大丈夫かって・・・いや、そんなことよりも好きか、嫌いか」
「え、何。好きと嫌いの2択しかないわけ?」
「いや、すごく好き、結構すき、まぁ好き、好き、嫌いぐらいには分かれると思う」
「幅狭くない?!すごく嫌い、結構嫌い、まぁ嫌い、ぐらいの選択肢入れてくれてもいいんじゃない?」
・・・!それ必要な選択肢か?!」
「え、一般的な意見として言ったんだけど」
「なっ、何だそうか。ビビらすんじゃねーよ、ったく」



何故、そこで私が罵られなきゃいけないのか。ビビらすんじゃねーよ、はこっちのセリフだ。
これから、本でも読もうという人間にそういうこというから屁理屈でもなんでもいいから、反論
してやろーじゃん?って気分になるんじゃない。あーあ。この本おもしろそうだからすぐに読みたいのに
シリウスがそんなこと言うから、遠ざかるじゃない。シリウスよりも今はこの本が読みたい。
正直なところはね・・・。まぁ言うと絶対すねるから言わないけど。あえて、言わないけど。
大体、好きか嫌いかってどういうことよ。そんなの気分よ、フィーリング!フィーリング!


「要は気持ちの持ちようってことよ。好きか嫌いかなんて言われたら今シリウスは、」
「待った!言わなくていい!!どうせまぁ嫌い、くらいって言って俺を凹ますんだろ?!」
「え、やだなぁシリウスったら。違うよ」
「え、本当か。、俺信じていいんだよな!」
「何を信じるつもりなの?正解はばんばばーん、結構嫌いでしたー」
「それ明るく言うことじゃねーよな。むしろそれは恋人が浮気してそれを問い詰められるような、そんな修羅場の
ところで言う台詞であって、今言うことじゃない。絶対そうだ、な、そうだろ?ちょっとした出来心って
やつなんだろ?別に俺のこと嫌いじゃないよな!そうだよな!」
「早口でそんなに言われても、わからんし。しかも妙にリアルだし」
「まっまぁな、それは経験の差じゃねーの?」
「・・・いやー私そんな経験いらないよ。浮気の経験なんて誰がいるっていうの」


なんだか得意げになっていたシリウスがどうしようもなくむかついたので、軽く彼のテンションを下げてやる。
というかいつもながらにして彼のテンションがおかしい。ジェームズ並におかしい。
ジェームズはおかしい、じゃなくて異常のレベルを超してるけど。まぁそれがジェームズっていうかなんていうか。


「シリウス、何かあった?ジェームズ以上に変な感じ」
「それ普通にダメージ大きいな。・・・何かあったと言われれば、多少」
「シリウスはね、の部屋にあった本を見つけて動揺してるんだよ、情けないね」
「は?何!いつのまに私の部屋に入ったの、シリウス・・・」
「おい、リーマス!お前が余計なこというからから変な目で見られてるじゃねーか!」
「は?僕のせいにするっていうの?前、僕の机の引き出しから勝手に紅茶とチョコレート盗んだのシリウスだよね。
あと僕のチョコレートをそのまま悪戯に使ったのも。僕がチョコレートを好きだということを知っていてそういうこと
するってことはそれなりの覚悟があるってことだよね?うんうん、いい心がけだ。あとで話し合おうね、シリウス」
「すいませんでした」



問答無用とばかりに、リーマスのとび蹴りを受けているシリウスを目の端で捕らえつつリーマスの言っていた本、について思い起こしてみる。
本?私の部屋にあった本ってなんだ?何借りてきたっけ?ホグワーツの図書館は広いからいろんな楽しい本が
借りれてすごくいいよね。前にリリーと行って借りてきた本、題名がすごくワンダフルだったから
つい借りてきちゃったけど、いやぁあれは参考になるよなぁ。


、この本!」
「ああ、そうだ。『10日間で男を綺麗に振るやり方』」
!なんでこんなもん借りてきてんだ?!俺、何かしたか?!」
「気になってるなら、最初からそういってくれれば良かったのに。シリウスって妙なところで遠回りするよね」
「そうか?そんなことは・・・ってそんなことはどーでもいいんだ今は!要はなんでこれを借りてくるんだってことだ」
「え?この本?なんで借りてきちゃいけないの?貸し出し禁止じゃなかったよ?」
「そーいう問題じゃなーい!これを持ってるってことはは俺、と・・・」
「情けないなぁシリウス、泣くなんて情けないね。」
「もうお前黙れ。しかも情けない、って2回も言われたし」
「確かに情けないね。・・・ああ、それで気にしてたのか」
「お前ら言い過ぎだし!情けない連発すんなって!!」


さっきまでへたれだったくせにいきなりシリウスのツッコみ癖が再発した。
なに借りよーが私の勝手でしょー?なーんて言ってみると、あ、へこんだ。
やだ、シリウス、本気にしたの?全然私シリウスと離れること考えてないから大丈夫。あ、喜んだ。
ぶんぶんと千切れんばかりにしっぽを振っている犬のようだ。
あ、まだ選択肢は結構嫌い、だけどね!あ、ずーんってへこんだ。
ちょっとこんなくだらない話してたらいつのまにか12時過ぎてるじゃん?!
あーもうばかばかシリウスのばか!良い子は寝る時間になっちゃったじゃないの!
でもさぁ、そういう訳か。図書館から帰るとき妙に視線を感じたんだよね。



「そのせいだったのか」
「は?何が?」
「図書館から寮まで帰るとき、みんながこそこそ話してたから」
「ちょ、おまっ!変な誤解与えてたらどーすんだよ!」
「へぇ知らなかったの?シリウス・ブラックはなにかをやらかしたらしいぞって噂で持ちきりだよね」
「リーマス!お前なんでそれを早く言わなかったんだよ!」
「なんで僕がおしえてあげなきゃいけないの?大体シリウス人のチョコレート取っておいて態度でかいよね」
「すいません」
「あ、それ私も思ってた!シリウスって態度でかいよね!」
「やっぱりもそう思う?ねぇ、僕ら気が合うね。向こうで紅茶でも飲んで語り合わない?」
「いいね!それ!議題はシリウスの悪口について」
「俺の悪口かよ!いい加減にしろ、お前ら!」
「ほら、でた。態度がでかいシリウス」
「すいません(なんで俺謝ってんの・・・)」


AM0:00前後