[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。
「今日は顔合わせしてもらうからー。まだ会ってないヒーローいるよね」 「はい。珍しいですね。こうやって時間合わせていただけるなんて」 「いやなんか向こうのヒーローさんが是非にって言ってきたみたいだよ」 「へぇ、そうなんですか・・・」 出社してバックをデスクに置いた所で、後ろからマネージャーに声を掛けられる。 おはようございます、と挨拶をすれば爽やかにおはようと挨拶が返ってくる。 他社ヒーローと顔合わせと言う事は、今日はコンビニバイトは出来そうにないな、と考えながらマネージャーの言う本日の予定を聞く。 顔合わせを午前中にやって、その後にジムで体力作りというコースらしい。 大まかな流れだけを聞き取って、了解ですと言う。 それにしても私現場でもほとんど目立ってないのに、向こうから顔合わせをって言われるのって本当に珍しいなぁ。 現場で会えばいいんだけど、中継とかもあってゆっくりお話出来る時間とかもないから、こういう機会があると凄く助かる。 ヒーロー大百科によるとまだ顔合わせしていない先輩ヒーローがまだまだいるようだし。 「じゃあ11時から、ここに行ってね」 「はーい、ってマネージャーは来ないんですか!私1人?!」 「もう大人でしょ」 「この前は子ども扱いだったくせに・・・」 「スカイハイ呼ぶ?空飛んでったら早いでしょ」 「スカイハイさんはKOHですよ?タクシー代わりとか、恐ろしい・・・!マネージャー私はあなたが恐ろしいです・・・!」 「はいはい。要は高い所が嫌なんだよね、1人で行けるね。頑張って」 ぽいっと投げ出された紙を慌てて受け取れば、行き先だけが書いてあった。 いや、前ジムの地図書かれた時もあれだったけど・・・ええと・・・・。 そう、パソコン立ちあげて、行き方調べようっと・・・。 また虎徹さんに迷子な所を見つかるのもあれだしね。 「ええと、あっ、よかった。近い所にある・・・!」 ネットで調べれば、会社から割と近い所にそのビルは立っているらしい。 アポロンメディアに顔合わせに行った時はかなり遠かったから、とても助かる。 というか虎徹さんとバーナビーさんに会いに行った時なんてすっごい大変だったからね・・・モノレールとかバスとか 入り組み過ぎて大変だった・・・・なんて遠い目をしながら地図をプリントアウトする。 まぁいかに近いとは言っても、念には念を。それに越したことはない。 そう思って、私はプリントアウトした地図に再度目を通したのだった。 ☆ 「つ、いた・・・いやほとんど隣のビルだから着かない訳ないんだけどね、でも達成感」 1人で何を言っているのだか、と自分で自分をつっこみながら、そびえ立つでかいビルの前に私は約束の時間10分前に 着いていた。約束のときは10分前が基本!これは人間関係で信頼される為にはなくてはならないものだ。 その点今回は完璧だ。時間厳守、身だしなみOK!カバンの中には、アリスキャットのヒーロースーツが入っているし、大丈夫。忘れ物もなし。 ぱぱぱっとそう確認して、いざゆかんとビルに踏み込もうとした、その、時だった。 思いっきり後ろから襟を掴まれた。 カエルが潰れたような声がしたのは気のせいじゃなくて、本当の事だ。 「ぐぇっ・・・・!!?」 「またそんな声出して・・・はぁ、こんなところでどうしたんですか?」 「・・・バーナビー、さん・・・・?あのもう少し優しく声を掛けるとかですね・・・。首が・・、」 「ああ、すみません。つい。猫と間違えて・・・」 「猫と間違え・・・どうやったら間違えるんですか?!バーナビーさんてば!ちょ、知らんぷりしないでください!」 「まぁそれは置いておいて、どうしたんです?このビルって・・・」 「あの、今日顔合わせなんです。ここのヒーローさんと」 「・・・へぇ、そうですか。頑張ってくださいね、」 「はい!ありがとうございます!」 「いえ、そうじゃなくて・・・やっぱりもういいです」 最初に見上げた時は輝かんばかりの営業スマイルであったのに、みるみるそれは消えてなくなり、 なんだか疲れた顔をされてしまった。私はと言えば、バーナビーさんの考える事がよく読めなくて、ただただ首を 傾げるばかりになってしまう。 しばらくそうしていると、はた、と気が付いた様に、バーナビーさんは顔を背けて眼鏡をくいと上げた。 そして同時に右手の重みが無くなった事に気が付いた。 「持ちますよ、行くんでしょう?」 「へ?!あ、はい!行きますけど、えと・・バーナビーさんも・・・?」 「誰か知っている人がいた方がいいでしょう?それとも僕では不満ですか」 「不満なんてとんでもないです!ありがとうございます、実は心細かったので」 「・・・・・早く行きますよ、七さん」 そう言ってバーナビーさんはすたすたとビルの中に入ってしまう。 それを追いかけて慌てて入れば、ビルの中にいた人が一斉にこちらを見る。 いや、こちらというよりは主に、というか まぁバーナビーさんだけをだが。 一気にビルのロビーにいた人たちに囲まれてしまい、サインをねだるファンが我も我もと手を伸ばす。す、すごいな・・・人気あるって 知ってたけど、実際近くで見ると、かなりの迫力だ。あまりの光景にぼけっとしているとその真ん中にいるバーナビーさんに にこにこと笑う営業スマイルで手招きされて呼ばれる。 「スーツ持って奥へ。僕も片付けたら後で行きますから」 「はい、ありがとうございます、バーナビーさんはゆっくりサインしてあげてください、では!」 「・・・・はい」 ロビーを横切って奥へと行くと、案内をしてくれる人が待ってくれていた。 慌てて駆けよれば、お待ちしておりました、こちらへと一室に通されてヒーロースーツに着替える。 第一印象はアリスキャットなのでその方がいいだろうと向こうが言ったのだ。 着替えるって言っても他の方よりもかなり簡略な簡単なスーツ(常々思っていたけれどこれはスーツじゃないんじゃ・・・) なので時間はまったく掛からない。ブルーローズさんや、スカイハイさんなんて結構時間かかりそうだけどなぁ。 しっぽをぶらぶらと揺らしながら、部屋を出る。 着替え終わると、また応接間の様な所に通された。 頭を下げて、部屋に入ると、そこにはもうすでにヒーローが待っていた。 「お待たせしてしまって申し訳ないです、ザクインハーツ社のアリスキャットです」 「心配御無用、拙者はこの通り平気でござる」 「折紙サイクロン、御挨拶を忘れているよ」 「はっ、これは申し訳ない、ヘリペリデスファイナンス所属の折紙サイクロンでござる!しゅっしゅっ!」 「折紙サイクロンさん、ですね。これからよろしくお願いします」 「こちらこそよろしくお願いするでござるよ」 部屋で待っていたのは、忍者コスチューム?と言ってもいいくらいのジャパニーズスーツの人だった。 折紙サイクロン、たしかヒーロー大百科では擬態が能力だったとか。見切れ技がすごいだとか、 そういうことが書かれていた気がするけれど・・・? 私に会いたい、と言ってくれた彼は、日本贔屓なんだろうか。 私も日本人だからそうならばとても嬉しいことなのだけれど。 では、と言って案内してくれた人が部屋を出ていき、私は彼と二人きりになる。 ソファーに座る様にと促してくれた折紙さんのお言葉に甘える。 「今回は折紙さんの方から申し出て頂いたと聞いて、とても嬉しくて・・・!どんな方か楽しみにしてきたんです」 「そ、そうでござるか・・・!拙者もとても楽しみに、」 「折紙先輩、こんにちは」 「ば、バーナビー殿?!」 「あ、追いついたんですね。お疲れ様です」 「ええ、疲れました」 表と裏の顔が激しすぎるバーナビーさんに苦笑しながらも、折紙さんの方に向き直って説明する。 な、なるほど・・・とびっくりしすぎて立ちあがった折紙さんは元のソファーへ腰を掛けた。 まぁ確かにびっくりしてしまうだろうなぁ、最近の新人と顔合わせかと思ったら今をときめくバーナビーさんまで 来たのだから。 「折紙サイクロンは僕の先輩なんですよ。ね、イワン先輩?」 「え?あっ、は、はははい!まぁ・・・一応」 「イワンさん?ええと、」 「折紙サイクロン、イワン・カレリンと言います」 仮面を外しながら喋る折紙さんは、バーナビーさんよりも年下に見える男の子だった。 ・・・なんかどこかで 見た様な気がするけれど思いだせない。 なんだか口調も変わった気がするんですけれども・・・キャラ作りなのかな? 考えている事が態度に出ていたのだろうか、折紙さんは苦笑してから話し出す。 「あの、僕・・テンションが上がるとつい口調がさっきみたいになってしまうんです」 「な、なるほど・・・!じゃあバーナビーさんとはまた違うんですね」 「なんですか、アリス。言いたい事があればこの場で言って頂いても構いませんけど」 「いや、あの、バーナビーさんの場合はそれでいいと思います、ええ、はい」 「それよりも顔合わせなんでしょう?他にやる事があると思いますが」 「あ!そうでした、あのこれつまらないものですが・・・」 「煎餅詰め合わせ・・・・!」 「お嫌いでした?すみません、」 「いえ!あ、ありがとうございます、嬉しいです」 「良かった!」 にっこりと猫の着ぐるみの下で笑えば、折紙さん、もといイワンさんもにっこりと笑って、私の渡した 煎餅詰め合わせセットを胸の前で抱く。気に入ってもらえたらしい、良かった。 と思ったら肩に異常に圧力が掛かった。 横を見れば、何故か私の横に腰かけていたバーナビーさんの手が私の肩に乗っていた。い、いたい、痛いんですが! 「ち、がうでしょう。なにほのぼのしてるんですか!というか貴女それまだやってたんですか」 「え、え?あれ、駄目でした?バーナビーさんもお煎餅セットが良かったですか?」 「そうじゃありません。・・・・はぁ。ほら、貴女も自己紹介ですよ」 「はい、ええとアリスキャットの片桐七です。これからよろしくどうぞ」 「えっ?!!???!!!」 「・・・?」 「折紙先輩?」 バーナビーさんの時は確か梅酒ゼリーだったけれど、お煎餅の方が良かったかな、と思っていれば バーナビーさんはそれには構わず、私の自己紹介を促した。 バーナビーさんがいるとさくさく進むなぁ。どうも私だけだと横道にそれる可能性が多々ある訳だし。 そしてその贈り物を止めれば、貴女もっといいもの食べられるんじゃないですか?と痛い所を突かれたけれど、私は 黙るしかなかった。その通りだけど、でも最初だし・・・。そして私、どんだけバーナビーさんにいつもひもじい子、みたいな イメージ持たれてるんだ・・・いや確かにきゅうりともやし生活は続いているけれどね・・・! そして促されるままに自己紹介をして、猫の着ぐるみを脱げば、予想以上の反応が前から飛んできた。 「あ、あの七さん、僕、あなたの事知ってます・・・!」 「え?」 「あそこのコンビニ店員さんですよね、あの・・・名札で名前知ってました」 「は?・・・あなたバイトしてたんですか」 「はい、最近会社の経営してるコンビニで始めたんですけど、そういえばいつも店内に」 「つい長居してしまって・・迷惑ですよね、・・・ごめんなさい」 「そ、そんな事・・!いつもいらしてくれてたんですね。ありがとうございます」 あのたむろしていると思っていたお客さんたちの中にまさかイワンさんもいたとは・・・。 どうりでどっかで見たことある顔だなぁと思った。私の記憶力は正しかった訳で。 でもイワンさんは確かいつも何か買っていってくれるお客さんだったから営業的にはとっても有難い存在だった。 ただレジの時はずっと俯いて、あまり話しかけれるような感じではなかったから、瞬時には思いだせなかったけれど。 ぎゅっと手を握って再度、挨拶を交わし合えば、イワンさんは俯くのを止めて花が咲くような笑顔で微笑んだ。 か、かわいい・・・顔が良いって素晴らしいなぁ。私は日本人だから背も低いし、童顔だし、手や足がすらっと長い訳でも ない。逆にイワンさんの方が乙女っぽく見えるくらいだ。 そんな事を思いながらじっとイワンさんを見つめれば、イワンさんはおずおずと口を開いた。 「七さんは・・・やっぱりジャパニーズなんですか?」 「あ、はい、シュテルンビルトには越してきたばかりで・・・」 「そうなんでござ、あっ!そうなんですね・・・じゃあスシバーとか行った事は・・・?」 「いやぁ、まだ給料が入らないのでなかなか食べに行ったり出来ないんですよ」 「じゃっ、じゃあ今度機会があれば是非、いっ、一緒に・・・って、あのほんと嫌でなければ、なんですけど」 「嫌じゃないですよ。私の会社から近いですし、また仕事帰りにでも!」 「ほ・・・・本当ですか、ありがとうございます・・・っ!」 「そういえば最近アポロンメディアには顔を出しませんね」 「ええ、まぁそうですね・・・アポロンメディアはうちの会社から一番離れてますしねー」 そう私が答えると、バーナビーさんは長い足を組みかえて、さらに腕を組んだ。 な、何故そこで不機嫌そうなオーラを出すんだろうか・・・?本当の事を言っただけなのに。 そしてそもそも大企業アポロンメディアに行く用事もない。あそこ緊張するんだよね。 ただでさえエネルギー不足なのに、余計にエネルギーを消耗する気がするんだ・・・。広いからかな。 でも直接行かなくたって、虎徹さんやバーナビーさんに出会う確率は相当なものだと思うけど。 「あっ、もうこんな時間?!ついつい長居してしまって・・・!今日はありがとうございました」 「い、いえ!大丈夫です、あの。こちらこそわざわざ来ていただいてありがとうございました・・・」 「ではまた!ジムか現場かコンビニで!」 「は、はいっ、よろしくお願いします」 「はい、またのお越しをお待ちしております」 冗談交じりにそう言いながら、ソファーから立ち上がり、お辞儀をすれば慌てたようにイワンさんも立ちあがってお辞儀をする。 ジムで体力作りのトレーニングをと、マネージャーと決めた時間は大幅に過ぎていた。 バーナビーさんを見れば、ようやくその足をほどいて、ゆっくりと立ち上がる。 不機嫌であっても途中で退席することはなかったみたいだ。 ロビーからビルの外へ出た所で、バーナビーさんはしらっとした顔のままこう言った。 「次はどこへ向かうんです?ジムなら送りますよ」 「な、なんで分かったんですか!というかジムにまだスムーズに行けた事がなくてですね・・・」 「その荷物見ていれば分かります。じゃあジムまで」 「ありがとうございますー、助かります!あの・・・さっきから視線を感じるのですが・・・バーナビーさんのせいですかね?」 「いや、それもありますけど、多分あなたの服の下から出ているしっぽのせいだと思いますよ」 「うっ、わぁああああ!!な、なんで早く言ってくれないんですか!めちゃくちゃ恥ずかしいじゃないですか!」 「わざとかな、と思いまして」 「にっこり笑ったってだまされないんですからね!・・・わざとな訳ないじゃないですか・・・!もう!」 正義の星はいずこ ☆10 「ずっと今日こそ話しかけようって思っていたんですけど・・なかなか難しくて・・・今日初めて話せました」 「そうだったんですか。あの人なんにも考えてませんから、もっと気軽にいっても大丈夫ですよ、先輩」 「そ、そうですか・・・?緊張するんです、すごく・・・!あああ、今度会った時どんな顔すればいいのか・・はぁ」 「いつも通りの先輩でいればいいんですよ。・・・でも本当になにも考えてないから困るんですけどね・・・」 |