ぴとり、ひたり、となにかが頬に当たる様な気がして、いつの間にか雨が降り出していた事を知る。 この冷たい・・・・冷たい、雨は一定のリズムを刻む訳でもなくぽつぽつと降り注ぐ。 何時の間に雨なんて、降っていたんだろうか。早くこのヒーロースーツを脱がないと、皺とシミの原因になってしまう。 そうなると衣装さんに怒られてしまう。いつもは優しいのにヒーロースーツ(特にひらひら具合が多いもの)は お気に入りらしく、汚したりひっかけたりすると目を吊り上げて怒るんだよねぇ・・・・。 お腹もすいたし・・・。そういえば出勤前に残してきたお菓子、ちゃんと残ってるかしら。 あれすごく並んだし絶対食べたいんだよね・・・・・・・、スイート・・・・ ☆ 「・・・・・・ポテト・・・・・・!」 「さん!!?目が覚めたんですね」 「え・・・・・・・・ん?あ、は・・い?」 「良かった・・・・」 「ええと・・・私、並んで買ったスイートポテトが・・・」 「・・・はぁ?・・・・・混乱しているんですか?大丈夫ですか」 何時のまにか横になっていたのだろうか、 視界に入ったのはいつもの皆さんではなく、ヒーロースタイルの皆さん。 そこまで考えてから、そうだ、ヒーローTVで私は・・・と気が付いた。 TVオンエア中には必死でまったく気が付かなかったけれど、お腹すいているのと、力を使いすぎた事による疲労で 倒れたのかなぁ、なんてぼやっと思う。 きっと犯人が捕まった事によって安堵から力が抜けてしまったんだと思う。ばたんきゅーってやつだ。 気が付けばヒーローTVは放送は終わっていて、いつものヘリは首を見回しても姿が見えない。 そして肩に手を回され抱きとめられた状態で、目の前いっぱいに広がるのは、バーナビーさんの顔。 私が目を開けた瞬間バーナビーさんのグリーンの目が柔らかく細められたと思ったのだけれど、目があった瞬間顔を背けて立ち上がる。 その横からイワンくんが顔を覗かせた。気を張り詰めていたようで、それがゆっくりとじわじわ緩まっていく。 どうやらとってもかなり心配を掛けてしまったようだ。 ぱちり、と目瞬いて見せれば、大丈夫そうだ、と判断されたらしく、いつのまにか集まっていたらしいヒーローの皆は、 一様に安堵の息を漏らした。 「あ、トレーラーがきたわよ、心配だからちゃんと今日は休む事」 「うん、カリーナ、ありがとう」 「また万全の時に遊ぼうね!!」 「パオリンちゃんも、ありがと」 「しっかり休んで、今度は女子会しましょ、もちろんめいいっぱい着飾ってね」 「ネイサンさんありがとう、ほどほどにね。楽しみにしてる」 手を振り返しながら、道路に向かって歩き出せば道路の角を曲がってこちらへくる大きな派手なトレーラーが見える。 私の前で緩やかにスピードを落として、入口が開くのをみて、乗り込もうとしたけれど、あれ?うん? という疑問が沸き上がる。 乗りこんで、ヒーローの皆に手を振れば、入口はプシューと閉まる。振り返ればマネージャーが立っていたので、 先程抱いた疑問をぶつけてみる。 だってトレーラーがないから今まで現場まで歩いて行ってたりしたんじゃないのか? 「え?トレーラー・・・うちにありましたっけ?」 「うちにトレーラー?あるに決まってるでしょ。ザクイーンハーツはエンターテイメントの会社だよ。ヘリとか出してたでしょ?わりと派手なやつ」 「そ、う言われてみれば・・・」 「でしょう?だってあなた会社にたむろってること多いから、トレーラーとかいらないこと多いし」 「そ、それは家にいると電気代がかさむからであってですねー!」 「ほら、そんな若いうちからせせこましいこと言ってるから倒れる羽目になるんだよ」 「せ、せせこましい・・・・はい、すみません」 「今日はしっかり休む、・・・まぁここ最近仕事忙しかったからね、そのせいかもしれないけど」 珍しくもマネージャーはゆっくり休みなさい、なんて言葉を掛けてくれた。 あら、これは珍しいと目を瞬かせれば、私だって心配する事くらいありますよ、なんてお返事を頂いてしまった。 まぁ、そんな反応は珍しいなぁ、なんて思って、トレーラーからマネージャーが運転する車へと乗り込み自宅まで 送ってもらった。 今日はちょっとオーバーワークしすぎちゃった為に自分の限界を超えてブラックアウトしてしまったけれど、 今度からはもうちょっと強くなりたいものだ。 そんな事を考えている内にいつのまにかその夜はぐっすりと深い眠りに落ちていた。 やっぱり人間適度な疲労があった方がよく眠れるみたい。 ☆ 翌日出勤すると、なんだか騒がしいことになっていた。 昨日のヒーローTVで私がオンエア中に倒れたのでは?大丈夫なのか?とかいう電話が鳴り響いているらしい。 オンエアはアニエスさんの機転でがっつり倒れてしまった所は放送していないらしいが、 途中までいたのになんのコメントもなしに画面からフェードアウトしたことで、それが騒動を 巻き起こしてしまったらしい。 かなり申し訳ないな、と思ったけれど心配の声は嬉しい。ただの実力不足なのが痛い所だけれど。 「ヘリペリデスファイナンスの折紙くんも責任感じちゃってすみませんでしたって謝りっぱなしだったよ」 「す・・・すみません・・・気を張りつめ過ぎてたみたいで・・・あはは、あとで菓子折り持ってくことにします」 「倒れた原因はそれかな?他になにか心当たりある?」 「多分自分の力を使いすぎたんだと思います、夢中でストッパー掛ける暇ありませんでしたし」 「オーバーワークしたのかな、とにかく昨日も言ったけど、気を付ける事。実力考えてほどほどにね」 「はい」 素直に頷いて反省の言葉を口に出せば、マネージャーは腕を組んで一息ついた。 なにかこれはくるな、とこちらも覚悟してしまうが、マネージャーの口から出てきた言葉は案の定、というかやっぱり 小言だった。うううう。覚悟は決めたけど、マネージャー口うるさいんだよね。 「それにしても、目覚めして一言目が”ポテト”ってなんなの、ポテトって・・・・カメラまわってなくて良かったよ」 「ちょっと会社に残してきてたスイートポテトの事を夢で思い出してて、あははは」 「・・・・・・あのね、」 「す、すいません!やーでも、あはは、気になっちゃって、あ、残ってますか?スイートポテト」 「残ってません」 「え!!!!マネージャー酷いです!あんだけ念を押したのにっ!すごく並んだのにっ!」 「こっちはこの事態で走り回るくらい大変だったの、スイートポテトくらい水に流す気持ちでさー」 流せない。自分の失態が酷く心に響く。あの失敗+スイートポテトを失ったという喪失感は半端ないものだった。 涙目になりながら反論したけれど、食べちゃったからないものはない、と辛辣なお言葉を頂いた私は 泣く泣くまたあの行列に並ぶことになったのだった・・・。おいしいものを手に入れるのは本当に大変である。 午後の時間をめいいっぱい使って目的の物を手に入れた時にはすでにその日は終わりに近づいていたのだった。 正義の星はいずこ ☆17 |