リフィア・シュルツ。成績優秀、容姿端麗、クールビューティと名高い文句なしの レイブンクロー生。俺とリフィアの関係はまったくない。ただ1人の人間を通しての面識しかない。 いつもだったらこんなややこしい女こっちから願い下げなのだが、今の俺にとっては少しでもこの 状況に陥ったわけを知りたいという一心でリフィアに視線を向ける。 そのリフィアの心底呆れているといった目線にさらされつつ俺は(正確に言えば俺たちは) 内心嫌な予感をかなり感じたが、ここの場から逃げ出すことも出来ずそのままの姿勢でいた。 リフィアのほうが俺よりも身長は低いはずなのに、何故だろうか、この上から目線を食らっている気に なってくるのは。 「とりあえず、あなた」 イスに腰掛けながらかったるそうにそう話すリフィアは俺に向かって指を向けた。 「私のに勝手に手を出すの止めてくれないかしら?」 「そっからかよ!」 俺のツッコミは悲しくもリフィアには届かなかったようだ。分かってはいたが。 「そっからもなにもシリウス、あなたのこと好きだったの?」 「ぶっ!!はぁ?!なに言わせんだ!」 「そうだよ。この鈍感なシリウス少年はようやく自分の気持ちに気付いたってわけ」 「うんうん、しかもきちんと振った後でね」 「お前ら、傷口に塩塗るような発言は慎め・・・っ!」 「ふぅん、そう」 リフィアは極めて興味なさそうに俺を見やると、あごに手をやり「まさかねぇ・・・」と呟いている。 その間俺たちはどんなに情けない顔をさらしていたのだろう、と思う。 それからふいにリフィアは急に下を向き、俯いたままになった。 俺がを好きになったという事実がそこまで落ち込むことだったのか?!と焦ったが、今ここで 本当の気持ちを当ててしまったら、きっと恐ろしいことになると俺の悪戯仕掛け人としての勘が 告げている。 俺たち3人は・・・あのリーマスでさえリフィアの愁傷な態度にびっくりしているようだ。 そのため俺たちは黙ったまま、リフィアの行動を窺った。 しばらく考えるようなそぶりをした後、リフィアは顔を上げた。無表情でこちらを見るリフィアの 目と俺の目が合った瞬間、リフィアはにやり、と笑った。 「ふふっ・・・・まさかこんなに上手く行くとは思わなかったわ」 「な、なにがだよ?」 「リフィア、僕達にもわかるように説明してくれないかな?さっぱりだ」 「じゃ、ひとつ訂正。さっきののこと好きだったの?はカマかけただけ」 「は?」 「だから、シリウスがのことを好きになるのは分かってたってこと」 「なに?!な、んでそんなこと分かるんだよ?!」 「あら、シリウス。気付いてなかったの?あなたは明らかに逃げられると追いかけたくなるタイプじゃない」 「な?!」 「まぁ、確かに意外性をつけばそういうことになるね」 「そうそう。自分から振らない限り向こうから来てくれるしね」 「もちろん、それだけ、って訳じゃないけれどね」 驚いて後ろにいる2人を見やると、ジェームズは相変わらずの笑みを浮かべていてリーマスは リーマスで頷いている。俺・・・そこに嵌められたってわけか?!あいつ、そんなことは微塵にも 感じさせないように演技してたってことか?! 「あら、そんな顔しないで。残念だけどはシリウスのことなんとも思ってないわよ」 「なんっ・・・とも・・・・それはそれで落ち込む・・気が・・っ!」 「シリウス、元気だして。大丈夫だよ。多分。きっと」 「リーマス!多分とかきっとを語尾に付けるな!」 「うん?意外性をついたんじゃないのかい?」 「あなたたちの論理は途中までしかあってないのよ」 「さっきはタイプのことを言ったけど、1番の理由はだから、よ」 「だから・・・?はぁ?それはどういう・・・」 「しっかりその頭使って考えなさいよ。誰でもないあの子の魅力に惹かれたのはあなただけじゃない」 「だ、誰だって言うんだよ?」 「私よ、リフィア・シュルツ」 「・・・はぁ?」 私、と自分自身に指を指すリフィアを見て俺は思わず脱力した。 なにを今更言ってるんだ。そんなのと出会ってから嫌というほど思い知らされている。 日本の挨拶攻撃とか毒舌吐きまくったりとか。俺の悪戯なんて可愛いもんだ。 「そりゃね。私からみたらはすっごく可愛い子だし、守ってあげたい子だわ」 「お前・・それ自分で言ってて恥ずかしくないのか」 「何が?」 「シリウス、今までから言ってもそれは十分に分かってることじゃないか。今更だよ」 「そうだな。・・・もういい。続けてくれ」 「でもね、本人と本当の魅力を知らない人はそうは思ってないの。現に最初はシリウスも思ったでしょ」 「・・・・ただの東洋のチビかな、と」 「はね、日本人ってことであんまりいい印象持ってもらえない事も多かった。本人は気にしてないみたいだったけど。 知ってると思うけどあの子1回階段で転んだ時、誰も見向きもしなかったことがその例よ」 「・・・そんなこともあったな」 「けどね、あの時手を差し伸べてくれた人がいたの。初めて気に掛けてくれたんだっては 嬉しそうに言っていたわ。・・・あなたでしょ?シリウス」 「で、でも・・・俺はあの時・・あいつを囮に使うために・・・・」 「そうね、まぁそのことがあったから一気に好印象ってわけにはいかなかったみたいだけど?」 「おっしゃる通りです・・・・」 「そのことに関しては私も許してないから、今後じっくり話し合うってことで」 怪しげな笑みを浮かべたリフィアを見てぞっとする俺だったが、それよりも何の気もなしに手を 差し出したことがそんなにに影響を与えていただなんて知らなかった。 多分俺も、囮に使おうと思わなければ見向きもしなかっただろう。 その考えに俺はリフィアの笑みを見た時よりもぞっとする。 「でもそれはあくまでちょっといい人レベルの話で、好きってことじゃないわ。あの子の態度を見てれば すぐわかることだけどね」 「そのことだけど、シリウスさっきまですっごく落ち込んでて大変だったんだよ」 「ばっ・・!馬鹿!ばらすんじゃねぇ!」 「そう、少しでも、そういう人が現れてくれればいいなと思ったの」 リフィアはすごく穏やかな顔をしてこっちを見ていた。その笑みはクールビューティと名高い彼女じゃなく、 温かい微笑みを浮かべているのことを第一に考える親友の笑み。 「じゃ、それで告白を・・・?にさせたってこと?シリウスに関心を持たせるために」 「告白してくるように言ったのは私よ。罰ゲームでね」 「罰ゲーム?どういうことだよ?!」 「そのままの意味よ。テストでは私に勝負を挑んだの」 「ああ、それで負けたんだ、」 「はぁ・・・リーマスは聡いわね、その通りよ。だからまず人気の高いシリウスを選んだのよ。シリウスが少しでもの 魅力を分かってくれれば皆も少しずつ変わっていくんじゃないかって。こればっかりは私の力だけじゃどうしようもなかった から」 「な!俺は当て馬ってことかよ!」 「正確に言えば当て犬だねー・・・」 「余計なこと言うんじゃねぇ!」 「でも生半可な覚悟じゃ認めない。それに告白なんて1日に何回も受けてるシリウスが関心を持つのは確率的に 低いし、が断れって願ってるのはよく分かってたしね」 「じゃなんで俺なんだよ!ジェームズやリーマスでも良かったじゃねーか!」 「ジェームズやリーマスだとすぐに気付かれそうだったの。その点シリウスはモテるけど、単純だから」 「それは言えてるね!あはははははははっ!!!ひぃーっ、はっはは!あはっ!」 「ちょ、笑うんじゃねーよ!」 「確かにその通りだよね、だって現に僕達が指摘するまで気付かなかったんだし」 「でも私の判断は間違っていなかったって階段の件で思えたわけなんだけど。単純は単純なりに、いいことするじゃない?」 ジェームズの笑い声が部屋中に響く。こいつは1回スイッチが入ると止まらなくなることが多々ある。 そう言う場合はリーマスが手刀で後頭部を打撃して1回生命のスイッチを切るのだが。 だが、今回はリーマスの手刀は必要ではなかったみたいだ。ひぃひぃと呼吸がおかしくなっているが 笑っている場合じゃないと分かったのか、なんとか自力で止めたようだ。ジェームズの笑いが止まるのを 待ってからリフィアは話し出す。 「本当は最初から気付かれるかしら、と思ったのよね」 「は?どこにそんな気付かれる要素あったんだよ?」 「その様子を見ると気付いてないみたいね・・・・」 「もしかして、あの告白の言葉かい?ちょっとおかしいかなーっと思ったけど」 「そんなもんかなって思ってたんだよね」 「2人は見当が付いてるみたいよ」 「えっ?ちょ、嘘だろ?!俺全然気付かなかったぞ!!」 「ふふっ、やっぱりあなたにして良かった」 「笑ってる場合じゃねぇ!説明しろよ」 「・・・あの子、最後の悪あがきに頭を働かせたんでしょうね、思い出してみての言葉、」 「えー・・・・っと、シリアル・ブラック!付き合ってください。ついでに結婚してください!」 「・・・これのどこが問題なんだ?名前間違えられたくらいしかおかしいところは・・・」 「いい?はね、”好き”という言葉は言っていないのよ。付き合えとか結婚とか言って 誤魔化したみたいだけど」 「・・・・そういうことかよ・・・」 頭を抱えてうずくまりたい衝動に駆られた。じゃあが俺を好きだって言うのはまるっきり白紙に 戻ったということか。いや、それどころか俺いろいろ嫌なことしてちょっかいを掛けていたから、さっきリーマスが 言った通り、マイナスかもしれない。 「もし、を本当に好きになってくれたっていうなら。私が認めるような男になりなさい」 「・・・・認めるって・・・・」 「簡単よ、の口から”好き”という言葉が出たら、私も認めるわ」 「それ簡単じゃねーよ。俺嫌われてるんだぞ」 「あらぁ?諦めるのかしら?残念ねー」 「・・っ!諦めるわけっ、ねーだろ!!」 「そうね、是非是非頑張って欲しいわね、ほほほ」 「実は内心は私のだとか思ってんだろ!」 「よくわかったわねぇ。認めたいけど認めたくない、その通りよ。それに私はあなたがに仕掛けた悪戯の数々を忘れた訳ではないわ」 にっこりと笑うリフィアの顔は今まで見た中で1番おぞましい顔をしていた。 こうして俺は、親友兼保護者兼鉄壁の守護者の挑戦を自分の未来のために受けることにしたのだ。 そしてその未来にはの笑顔が俺の傍にあることを願って。 menu ----------------------------------------- |