ホグズミードはなかなかに良い場所だ。いや知っていたけど、今はそう言う事を言いたいんじゃない。
結局何が良くて、どこが良くて、なんて情報を集める事が出来ずにとりあえず自分が良く行く店を適当にピックアップして 回っていくのだけれど、やっぱりどこもはずれがない。 どこも楽しいし、も喜んでくれているようだ、と俺は雑貨を手にとって楽しそうに目を細めるを見下ろして そんな事を思った。




そう、いつの間にか自分の中でとても大切な女の子になってしまっていた。
構ってほしくて、視線を向けてほしくて、今までのシリウスからしたら人にどんなに笑われようとも、最大の努力を してきたつもりだった。 怒ったりいじけたりしないは可愛い。いや、怒った顔もいじけた顔も堪らなく可愛い。 傍から見たら普通の女の子かもしれないけれど、自分から見たら世界一だ、なんて 心の中でのろけていたりした。
最近は一緒にいる事も少なくなってきていたから、余計にそう感じたのかもしれない。


雑貨店を出て、人がまばらになる時間、あまり人が来ない、告白スポットと陰で言われている場所に来た。
良い雰囲気に包まれているそこは告白スポットでもあるが、癒しのスポットとしても名が高い。
ちなみに自分は呼ばれた事は多々あるものの、自分が誘い、連れてきた事は初めてだ。 なんだか心境が違うだけで、こうもここから見える景色は違うのか、とびっくりもした。
沈む夕焼けに染まる景色がやけに優しくて暖かくて、だから、シリウスはこの時は全然ドキドキなんてしなかった。
心が思うがままに、その言葉を口にしていた。先に歩いていた彼女が振りかえるのと同時に。





「・・・・・・・・・好きだ」
「シリウス?」
「・・・わ!?だっ、ちょ、待て今のなし!なしだ!」
「はぁ?・・・大丈夫?調子悪い?それともやっぱ偽物なんじゃ・・・?」



仲良くなる過程をすっとばして、口から零れ落ちた言葉は好き、という感情を暴露してしまった。 雰囲気と告白スポットは恐ろしい、だって、本来の目的は距離を縮めることで、告白という最終ステージに行くこと ではなかったのだから。しかし 焦って否定すると、ますます訝しげな表情になっていくを見て、あー!もう!と頭に手をやって髪をくしゃっとかきむしる。
もう、無理、もう駄目、零れ落ちた言葉はもう戻せやしない。そしてこの想いを止める事も、もちろんもう無理だ。
第一歩を踏み出す所か、百歩くらい進んでしまった気もするが、もうそんなことはどうでもいい。



「違う!俺が本物だ、本物のシリウス・ブラックでっ・・・!さっきのは本当の気持ちだ!」
「・・・・シリウス・・・・大丈夫?本物ってのは百万歩譲って認めるとしても・・・、シリウスって私の事嫌いだよね」
「はぁあ?」
「ほ、ほら、そういうとことか!」





暖かだった、なにやら良さげな空気は一気に霧散してしまったけれど、こんなことではもう負けない、と 思った。そんな俺の心を読んでか、 指を俺の顔目掛けてビシィっと指し示し、む、と怒った様な顔をしながら、はそう言う。
嫌いな訳があるものか、この時のこの瞬間を迎えるにあたって、俺が生きてきた中で最大の努力をしたっていうのに。 指し示された指をぎゅっと握ってやれば、びくっと面白いくらいに肩が上がる。
ここで押さなくては男ではない!そんな言葉が脳内を駆け巡る。ぎゅっと腕の中に閉じ込めるとが息を 飲むのが分かった。
そして話す、一字一句はっきりと。目をそらさずに。




「俺は、お前が・・・、が好きなんだよ・・・っ!!」
「・・・・!」




これでどうだ!と言いきった言葉に自分で照れて、顔がすごく熱いのを感じる。
さっきまでなんともなくてぽろりと零してしまった時は、最高に恥ずかしいと言うより優しい、暖かな気持ちだったのだけれど。
あー、今の俺は最高にカッコ悪い顔をしているに違いない。しかしその自覚があっても今放り投げた言葉を 撤回することは出来ないのだ。 じっと待つ事もそろそろ覚えないとね、なんて言って笑ったリーマスの顔が浮かぶ。 いやだがしかし、ひとつ言わせてもらえば、リーマス、俺は、犬じゃないから。
ぎゅっと抱きしめたままの状態なので、未だにがどんな状態になっているのかが分からない。 目を閉じて思いっきり叫んでしまったが、それにしたって目を開けるのが怖い。 はどんな表情をしているのか、反応に困る表情だったら本当にどうすればいいのか。もしそんなだったら、 俺は間違いなく今いるこの場所から全力ダッシュでホグワーツに帰る!!
そう強く思いながら俯いていた顔を上げて、抱きしめていた身体を離して目をそっと開ける。




「・・・・・、」
「・・・・・シリウス、っ、うっ、」




彼女は、泣いていた。
えっ、と頭が瞬間的に真っ白になって、今まで使っていた効果的な慰めの言葉や動作はすっぽりと抜け落ちてしまった。 だって、彼女が泣くなんて。怒ったりすねたり、文句言ったりが多いだけれど、泣く所はあまり見ない。 カエルが顔に張り付いたって、上から蛇をたらした時だって、泣く事はなかった。
彼女が、その彼女が泣くというのは相当な事がある時だけだと思ってたのに、まさか自分の告白で泣くとは思わなかった。 ぽかん、と一瞬呆けてしまってから慌てて、跳ね上がる様にしての肩から手を離して、俯いたの表情を伺う。
いつだって彼女の事になるとどうしたらいいか分からなくなる。 一番大切で優しく丁寧に扱ってあげたいのに、それが出来ない自分が酷くもどかしい。





「えっ、あの、?!大丈夫か、俺、いきなりすぎた?!泣くな!ほらっ」
「ひっ、くぅ、うう、うっ・・・・だって!」




すぅっ、息をようやく吸ったと思ったら、その後はひたすら号泣だった。
うわぁあああん!!と人目も気にせず、泣き叫ぶもんだから、人もまばらだった場所はずなのに、だんだんと人が増えている様な気もする。 は人目をはばかっていないが、俺は違う、はばかりたい。猛烈に、そしてもうなんか消えてしまいたい・・・!と も思ってしまう。 しかしここで消える訳にはいかないのだ、ここが正念場であり、ドラマだったら最高のクライマックスシーン に当たる所だからだ。

そして人が増えるにつれて、なんだか不穏な陰口を叩かれている気がする。 えーなになに痴話喧嘩ー?そうじゃなくて修羅場、ほらだって見てよ、シリウスよ。え、シリウス!?まぁ恒例の 様な気もするけど、彼女も可哀相ね、なんて言葉がちらちら飛び交ってきている気がする。気がする、ばかりだけれど、 おそらくたぶんきっと気のせいではなくて、注目は浴びているのだろう。

たじたじになって、様子を伺う俺と泣き叫ぶはまぁかなり注目を集めるにはもってこいなのは分かる。 あたふたと何も出来ずにいると、彼女はようやく号泣から、しゃくりあげるくらいの涙になってきた。 なんなんだ、あの爆発的な涙は、と思うくらいの涙の量だった。どっから出てくるんだろうか、あの涙は。 ぬぐってやりたいが、触れてもいいんだろうか、いやいや自分さっき思いっきり抱きしめただろ!?
・・・・って駄目だ、今はそんな事はどうでもよくて。




「大丈夫、か?びっくりさせ、」
「う。・・だって、だって」
「なに?」
「シリウスいつも私にいじわるばっかりだったでしょ、だからてっきり嫌われてると、でもたまに助けてくれたり するし、もう意味分かんない!!ってなってるところにこれだったから・・・!」
「悪い」
「まだまだ分からない所も多いけど、シリウスの優しい所を私、知ってる。だからシリウスが悪い人とは思わない、」
「・・・・・うん。それで、。返事は?聞かせてほしいんだけど」




こういうせっかちな所が俺だと思う。思いついたら即行動!も俺の取り柄であるからだ。
逆にせっついてしまう短気な部分が俺の悪い所でもあるのだけれど、とりあえず結論を急いでしまうのは いつもの俺だ。 告白モードから少し落ち着いてきて、自分を取り戻しつつあるらしい自分の行動にシリウスはほっと少し息を抜いた。
はと言えば、俺と目が合うと、視線を逸らして、あっちこっちへめぐらせている。
ああ、彼女にしてみればいきなりだったし、戸惑っているんだろうな、なんて様子が嫌と言うほど分かる。




「あの・・・やっぱ、だめか?俺、一応お前に好きになってもらえるように頑張って来たんだけど」
「え?!あの、シリウスが?!」
「あの、ってなんだよ、」
「唯我独尊!自己中心!俺様!!世界は俺の為に周っている!来るものは拒まず去る者は追わず!」
「え、ゆい、・・・?なんて言った?」
「多分分かんないほうが幸せだと思う・・・」
「くそ、俺も日本語勉強するか・・・!」
「あはは、シリウス、おもしろいね」
「俺を面白いなんて言うのはお前くらいだ。格好良い、最高にクール、それくらいしか言われた事ない」
「・・・・それってギャグ?」
「マジだ」
「マジならなおさらギャグだよ・・・ほんとうにもう、」
「・・・?」



の表情が朗らかなものから少し真面目な表情になる。
名前を呼ぶと、彼女は俺とはっきりと目を合わせてくれた。
そうしてゆっくりと俺の手をとる。の手は風に長い事当たっていたからか、少し冷たくなっている。



「・・・・そのままのシリウスでいてくれるなら、」
「うん・・・・ありがとう」



俺はめいいっぱいのありがとう、と愛しさとで、小さな力で握られたの手を包み込むように、壊れないように握り返した。
これが、彼女と俺との始めの第一歩だ。どうかこの暖かい想いが消える事がないように、と心から祈った。





















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(111003)