「はよ」
「おはよー」



別に態度が急変する訳でもなく、俺たちは普通に毎日を過ごしていた。
そうだな、変わったといえば、毎日と会うということだろうか。無邪気なの笑顔を見ていると、 それだけで温かな気持ちになれるので、この殺伐とした毎日の潤いになる。



「さ、行くわよ、
「あ、うん。じゃあねーシリウス」
「あ・・ああ・・・・」



手を自然に振って見送りそうになってしまったが、や、ちょっと待て? 待て待て待て?俺と、って付き合ってめでたしじゃなかったのか?まぁ、そんな幸せな結末で終わる 訳ではなくて、当然大きな壁は付き合ってからだって変わらずにそびえ立っているものだ。 さっき言った殺伐の原因の大半はこいつにあるのだけれど。



「待てよ、おい、リフィア!」
「・・・あら?なにかしら」



相変わらず優雅なリフィアはくるりと長い金髪をなびかせるように振り返った。
こいつは相変わらず自分の魅せ方というものを分かっている。 1番綺麗に、自信ありげに、凛とするように自分の立ち振る舞いをしてくる。それは俺にも分かる事なのだが、 問題は、そいつが、俺のの親友であるということが問題なのだ。
現に俺だって滅多に、いや最近はまだ増えたけれど、リフィアがの手を強く握っていることは本当に心から頂けない事実である。
きっと、吊り上げた眉の角度がリフィアの意思の強さを表している横で、へにゃりと多分何が起こってるかも 良く分かっていないのだろうが笑う。



「だから、リフィア、朝くらいはゆずれ。お前は授業もずっと一緒だろうが」
「だからなに?なんでゆずらなきゃならないのか分からないわ」
「リフィアリフィア、たまにはいいと思うよ?」
・・!ほらな、だから、」
「みんなで食べよ!」
「・・・・・・・・・・・・」
「や、だってリフィアと一緒じゃないとね、シリウスが・・・」
「俺が?」
「・・・・」



ぐいっと近づいて彼女の顔を覗きこもうとすれば、ふいと避けられて黙られてしまう。
なん・・なんだ、この反応はー、避けられた?なんて思って少しショックを受けていれば、 リフィアの方とは逆方向に少しだけ歩いて立ち止まる。
疑問で心をいっぱいにして付いて行き、俺も同じ場所で立ち止まれば彼女の方がつま先立ちで俺の耳元へと顔を寄せる。
平常心を装っているけれど、の方から俺に近づく事はあまりないので、(恥ずかしいそうだ)内心は 嵐のように心臓が暴れている。フィーバーである。



「・・・リフィアないがしろにしたら後からシリウス、大変な事になるよ」
「・・・・・!!!」



内容はまったく可愛らしいものではなかったけれど、とても本当にためになる言葉を吐いてくださったは、 大広間の方へ歩いて行くリフィアを気にしたように目線をそちらにやりながら言う。
まぁ、甘い言葉を言うなんてことはまったくもって期待していなかったので別にいいんだけどさ。
でも少しくらいは俺になにかあってもいいんじゃないか?なんて彼女限定の加虐心がむくむくとわき上がる。
ため息を吐きつつ、きゅっと彼女の手を握れば、表情は困った様になり、少しだけ握り返された後に 名前を呼ばれる。だから俺はその手を離さずに彼女を壁側に押しやる。
これで逃げられまい、なんて久々のこの感覚に高揚感でいっぱいになる。
彼女の前でするこの笑顔は久々だ。いつもいつも彼女に振りまわされてばかりだったのだから、少しは振りまわしてやりたい。 そんな事を考えての行動であったけれど、は微動だにしない。



「シリウス、」
「・・・ん?なに?」
「どいて」
「どーしよっかなー」
「はいはい、行くよー、はい、シリウス」



壁に付いた手をよいしょ、とめんどくさそうな動作でどかしながらすたすたと歩いて行くはやはり 出会った当初よりも手ごわくなってきている気がした。
・・・はぁあ、なんて本日二度目のため息を軽く吐いて、 俺はの後を追った。
















「格好良いよ、な・・・?ジェームズ」


朝食を終えて帰って来たシリウスは心なしか、というか頭上に暗雲を立ち込めさせたどんよりとしたオーラを背負って 談話室へ帰ってきていた。
しまった、今は僕しかいないじゃないか!!リリーに挨拶に行ってこようかな、なんてソファーから飛び跳ねるように 立ち上がって回避しようとしたのだけれど、がっつり肩を掴まれてしまった。
その重い空気の中、何を聞くのかと思ったら、シリウスの口から出てきたのはそんな言葉だった。



「かっこいい?えーとそれは、つまり・・・・・君が?」
「そうだ・・・・」
「や、そんなの言わなくても分かってるでしょ、自分が」
「俺って格好良いよ、な?それは揺るぎない事実だよな?!」
「君はかっこいいし、成績は優秀、女の子に大人気、ええと抱かれたい男ナンバーワン・・・だんだん腹が立ってきたんだけど」
「そうか!そうだよな!!ありがとな、ジェームズ!」
「なに?これなんの確認?いるの?」
「自分が格好良いのか分からなくなっててな・・・自信喪失中だ」
「かっこいいとは思うけど、それがシリウスの本命には効いていないだけの話じゃないの?」



軽く話したはずが、シリウスは先ほどのイケメンスマイルを一気に強張らせて、絶句してしまった。 あ、これ、禁句だった?あはは、ごめんごめんなんて背中をばしばしと叩けば、嫌そうな顔をする。



「・・・・・・・それが問題なんだよ・・・」
「本人に聞いてみればいいんじゃないの?」
「言えるか!!!」



落ち込んで消え入りそうな声で話したかと思えば、くわっと噛みつきそうな勢いで言葉を投げつけてくる。
その元気があれば、じゃんじゃんいけるんじゃないかと思うのだけれどな、なんて頭の片隅で考える。 いっそ僕が聞いてあげようか?なんて少し優しさをだしたりもしたのだけれど、シリウスの態度は 変わらずで、ちょっとめんどくさくなってきた。



「そんな上手くいったらな、苦労しないんだよ・・・」
「上手く行ったって、君たちカップルが誕生した事が奇跡じゃないか!」
「・・・・」
「がんばれ、付き合ったならそこからはもうどうにでもなるはずさ!」



本当にあの告白が上手くいくなんて思ってもみなかったから(僕たち悪戯仕掛け人メンバー内で) それこそ奇跡と呼べるものだと思うけど?なんて言ってみれば、少しだけ浮上して、 自信が戻ってきたみたいだった。
良かった良かった。あはは、さぁリリーの元へ急ごう!

と、話をまとめて立ち上がりかけたその時、談話室の入口が開いて誰かが入ってきた、と同時にこちらを見て「おい、シリウス呼ばれてるぞー」 と声を掛けてきた。ん?と思ってちらりと入り口の方へと目を向けてみれば、見覚えのある姿。
シリウスなんかその姿が目に入った途端、さっきまで丸めていた背中をぴしっと伸ばして、 余裕のオーラを漂わせ始めている。実際余裕なんてないくせに、変な所器用な男である。 よし、こうなれば聞いてみるか、直接。
優しい親友!この、ジェームズ・ポッターが一肌脱ごうじゃないか!



「あ、ーっ!」
「おい、ジェームズなんでお前が行くんだよ!」
「ジェームズもいたんだ、おはよー」
「ねぇ、!朝の挨拶ついでに聞きたいんだけど」
「なーに?」



間延びした声で彼女が聞き返す。隣で、おい、まさかここで聞くなよ、聞くんじゃねぇぞ、なんて 目で訴えているシリウスを華麗に無視して、僕は口を開く。



「シリウスのこと格好良いと思うかい?」
「かっこ・・・?」
「だぁああ、ジェームズお前・・・っ!」



ぽかん、と呆けた顔を晒す彼女と慌てたようにぐいっと僕の肩を掴むシリウスとが両極端過ぎて、 笑いがこみ上げる。どんな言葉が返ってくるんだろうと楽しくなってしまう様な反応だ。 でもその直後のの言葉に、僕たちはぴたりと動きを止めた。



「うん、かっこいいよね、シリウス。毎日思ってるよ」
「・・・・・!!!!!」
「シリウス・・・・・!!」



こんなにきっぱりはっきり言ってくれるなんて予想外すぎて、今度は僕とシリウスが呆気にとられる番だった。
真正面からのろけを聞かされた僕の立場とは、なんて考えだしてしまったくらいだ。
なんなんだこいつら?さっきのもただののろけか?なんて僕の考えは斜めに傾きだしてしまったのだけど。




「えっ。だってお前そんな様子全然見せなかったのに」
「えっ、そんなかっこいい事はシリウス本人だってずっと自分で言ってたじゃん」
「まー・・・そうだけど・・・だって、」
「ずーっとかっこいいとは思ってたよ」
「・・・・!」
「はぁあ、なーんだなんだ、僕に対する当てつけかぁ、良かったね、シリウス。君は格好良いってさ」





ぽんぽんと優しく叩いて、その場を後にする。ふぅう、僕もリリーの元に行ってラブラブ(本人のみの感覚)してこようかなぁ。
なんだかシリウスが恥ずかしがっているけれど、いや、君たち本当に反対だよね、シリウスはわりと女々しくて、はわりと男前で、なんなんだよこのカップル、と思わずにはいられないけれど、調子にのるシリウスを 諫められるのは彼女だけであるのだから、まぁいいカップルと言わざるを得ないだろう。
まぁ、よかったね、うん。
僕の心には寒風が吹き荒れていた訳なんだけど、まぁそんな事はどうでもいいよね。







「そうかそうか、お前も俺の事、格好良いと思ってくれてたんだな!まるで反応ないから自信失くしてたぜ」
「うん、顔は」
「・・・・・・・うん?顔は・・・・・?」
「うん」










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(121208)