※このお話はクロスオーバーです!!!
ViaminXでB6たちを卒業させた後になんでか烏野高校に赴任した先生のお話です。
今回は特に真壁の出番が多いです。(B6とは??全員美形だが超問題児にして超バカ揃いの6人組の事を指す)
大丈夫な方はどうぞ!!







一人もいなくなった教室に居残りしながら、プリントをリズミカルにホチキスで留めていくという流れ 作業を一人でしていた時のことだ。 外からは部活動が始まったのだろうか、声掛けが頻繁に聞こえてきてどこからか楽器の音色が風に乗ってこの教室まで聞こえてくる。
あ〜〜青春だなぁ、と思いながら外を眺めていた。・・・ああ、もちろん手は動かしてますよ。

今日も晴々とした陽気に風が気持ちいい、これは絶好の部活日和であることは間違いない。 こんな中で運動したらきっと爽やかな気持ちになれるだろう。
(とはいっても私が前校でやっていたのは運動というものでもないけれど) (大まかに言えば障害物競走と鬼ごっこを足したような感じだろう)(元気かな)
そう思いを馳せていると教室の扉がガラリ、と開いた。誰か教室に戻ってきたのか、 と思い目をやれば長身の男子生徒が立っていた。すごく目立つから教室でも一発で覚えた月島蛍くんだ。 蛍ってかわいい名前だなぁ、と思ったのを覚えている。
背は、翼くんとどっこいどっこいなくらい高い生徒である。性格は・・・まるで違うけど。 あはは、とため息交じりの笑いをこぼしながら彼を見る。



「どうしたの?忘れ物?」
「まぁ・・・」
「月島くんも部活やってるんだったよね、なんだったっけ?」
「バレー部です」
「へぇ、そうなんだ!バレー部かぁ」
「はい」



ここしばらく彼と接してみて、どうやら社交的ではないらしいということが判明した。 喋らない訳ではないけど、別に話したくもない、といった感じだろうか。私が先生な事もあると思う。
でもそれくらいの事、かわいいものである。これくらいの人見知りには慣れているし。 いきなり寝ちゃったりしなければ全然コミュニケーションとしては成立するからね、 と頭の片隅で立ちながら寝てしまう生徒がいたことを思い出す。
そんな私を何故か月島くんは私の机の横に立ったまま見つめているが、なにか用なのか。 って、あ、そうだった。見上げれば彼の目とかち合った。やわらかな彼の髪の毛が風に揺れる。


「月島くん、そういえばプリント出してないって、提出明日だからね」


そういえば学年主任の先生から頼まれていた進路の紙を彼はまだ出してはいなかったのではないか。 まだ1年生ということもあり、簡単な進学なのか就職なのかといったゆるーい進路の紙だった気がする。
それまだ出してないよな、この子、ということを思い出したのだ。1年生でまだその進路を決めることは 難しいのかもしれないけれど、おおよその望みは知っておきたいという事なんだろう。どこの学校も それは同じである。
そう言うと月島くんは、ああ、と言って自分の机まで行き、ごぞごそと机の中を漁って一枚の 紙を引きだした。

その間、私はというと引き続き、パチン、パチン、とホチキスでプリントを止めていたのだけれど、 ポケットに入れていた携帯がけたたましく鳴り響いたのでその作業を中断させた。
静かな教室なので余計に響く。
月島くんが自分の机から私の机までこちらに向かって歩いてくる。
学校にいる間に、携帯のコールに出るかどうか迷うけど緊急だったらいけないので、 とりあえず電話を掛けてきた相手を見るためにポケットから取り出した。


「・・・げ、」
「・・・・?」


唐突になる電話にびっくりしながらその電話を掛けてきた相手の名前を見て私は ついつい口を滑らせてしまった。ちょっとさっき彼の事を思い出したからなのか 、すごいタイミングで掛けてきた彼に驚いてしまったのだ。

興味深々として覗きこもうとしてくる月島くんから携帯を守りながら、 私は、やれやれ、とため息をついた。
男の名前だとめざとく発見したのだろう、大いなる勘違いを彼はしている気がする。
違う違う、全然違う、と手を無言で振れば、信じてなさそうな表情で、 電話に出るように私を急かした。なんなんだ。
途端に楽しそうな顔をしやがって。良く分からない子だ。


「出ないんですか?先生」
「はぁ・・・出ます。ちょっとごめんね」


出ない、という選択肢は与えられないらしい。
月島くんに断ってから通話のボタンを押す。思った通りの低めの声が叫び声として 一気に電話口から飛び出してきた。ガランとしていた教室にそれはそれは響く。
・・・そういえばここに来てからというもの忙しくてB6の面々にはこちらに移ったこと を言ってなかったな。
でも各々活躍してて忙しそうだから、聖帝にいないって事もう少しだけ バレないと思ったんだけどなぁ。さては、早速母校に帰ったのか。


「はいはい、もしもし?」
「おい、副担!今どこにいる!!聖帝にはいないってどういう事だ!」


久しぶり、の挨拶もなく一方的にまくしたてる携帯を少し離して、 その嵐がおさまるのを待つ。いつも低音な彼の声が高音に上っていることを考えると 相当頭にきているらしい。わりとああいう性格でも気にし過ぎるところもあるし、 繊細な面も持ち合わせる翼くんは、私が考えるよりずっと心配症だ。
ぷらぷら〜とさせながら携帯を持ちつつ、私が口を挟む隙を狙う。

あまりの剣幕に、携帯から飛び出した声で多少なりとも悟ったのだろう、 月島くんがとっても面倒そうな顔でつったってるが、私だってこの状態の彼とは あまり話したくはなかったよ。
私が眉を下げて月島くんへとアイコンタクトすると、 彼は急につまらなそうな表情を浮かべて眉をしかめた。やかましいと思っているのだろう。 もっともである。

・・・私は、こういうふうになるんじゃないかって若干感づいていたしね。
気が付きたくなかったけどね。普段は普通に良い子なのよ、すこし突飛な所があるけどね、 なんて誰に言い訳するわけでもない事を心の中で言う。
・・・言い訳である。
一通り言いたい事を全て吐き出した彼の隙間に入るようにして私は電話を耳に持っていき話しかける。


「お前、俺の許可もなく!!伝言もなく!!!どこにいるんだ!?」
「どこって・・・」
「なんだ永田、〜〜〜〜、・・・・はぁ?宮城?おい宮城にいるのか?」
「翼くん・・・宮城がどこにあるのか分かるようになったんだね・・・!というか個人の携帯で居場所特定するの止めてくれない?」
「ふっ。それくらい今の俺には朝飯前・・・って違う!お前、いつのまにそんな所に・・・!」
「え〜だって聖帝が改革入っちゃって理事長についていけなくなってさ〜辞めたの」
「はぁああああ!??!!?いつだ!?いつからいなかったんだ!」


キーーンとする電話を自分の耳から離して叫び続ける翼くんにはほとほと困ったものだ。 翼くんはもう大丈夫でしょう、一人前だし、とか話していればまぁ・・そうだが・・・ いや、でも・・・みたいなまどろっこしい愚痴愚痴とした恨みつらみが電話口から漏れる。
直情型のわりにこういうところが弱いのが翼くんである。畳みかけるように私は話しかける。


「ごめんね、報告が遅れたから怒ってるんだよね?」
「お前の顔を見に行ったのに、あのクソ理事長が・・っ!もういないって言われた時の俺の気持ちが分かるか・・・!?」
「分かるでしょ、ああいうふうになったらもう止められない。だから一旦こっちに来たの。本当にごめんね」
「・・・お前には自由に仕事してほしいと思ってるから、それは構わない・・・」
「あれっ意外に素直、」
「・・・」
「ちょ、翼くん?来たら駄目だよ?仕事あるでしょ」
「・・・・・・・・・・何故分かった・・・・」
「翼くんのことならなんでも分かるの。永田さんにあまり我儘言わないようにね」

先生、ちょっと」
「わっ、ごめんね、・・・とにかく、私もまだ仕事だから戻るね、じゃーね!」
「あ!ちょ、お前、誰といるんだおい!」
「はーい、翼くん。またね、バ〜イバイ!」


プチリ、と通話を切った後も2、3回ぶるぶると震えていたけれど、 永田さんが良い感じに翼くんに言ってくれたんだろう。それ以降は電話はストップした。 仕事中だからということも合わせて配慮してくれたらしい。
やっと社会人としてのマナーが身についてきたようでなによりである。ふぅ、 と一息ついて携帯をポケットにしまいなおす。


「月島くん、ありがとう。ついつい切るタイミング見失っちゃって」
「随分と・・・束縛激しい彼氏なんですね、”翼くん”って」


からかえるネタが出来たと言わんばかりの表情に、うん、とだけ頷いておく。
つまらなそうにしていたと思えば次はそうでもない感情を彼から感じるのはなぜだろうか。
なんだか否定するのも面倒になってきたという事もある。
事実、翼くんが私の彼氏であろうとなかろうと、こうして釘をさしておいたわけだから 宮城まではやってこないだろう。
真実は闇に葬られたままになるはず。
うん・・・た、たぶん・・・・。ヘリ・・飛ばしたりとかしないよね!? 薔薇まき散らしにきたりはしないよね!一応社会人だしね、社会人同士冷静な大人の対応 というやつが出来ると私は思ってますよ、うんうん。

焦って否定すれば、きっと月島くんの思うつぼというやつなので、さらーりと流す。
生徒にからかわれるのはもっとひどいレベルで慣れている。こういうのは流すのが一番だ。 にっこりと笑顔をオマケするのも忘れない。こうすればあまりつっこんでこないなー というのが今までの経験上分かっているからだ。ふふん、私も大人になったものよのぉ・・・・。
そんな事よりも今はこの目の前の事を片付けるのが先だ。
委員会のプリントのホチキス止めが終わるまで私も帰れないし。


「あっ、部活頑張ってね、月島くん」
「・・・・」


黙って教室を後にする月島くんの高い背中に声をかけつつ、手は止めない。
これぞ副担任の鏡である。しかしながら卒業間際までB6に何度も言われた 「お前は生徒の事をちっっとも分かってやしない」という言葉が悔しいところである。
どこがだ、どこが、完璧な対応ではないか!と頬を膨らませてみれば、そういうところが だと言い返されたのもまだまだ新しい記憶で。
まだまだ私は教師として一人前とは言えないのかもしれない、 もっともっと生徒の事をよく知らなければいけないのだと、今一度気を引き締めるのだった。







レポート1:

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