※このお話はクロスオーバーです!!! ViaminXでB6たちを卒業させた後になんでか烏野高校に赴任した先生のお話です。 (B6とは??全員美形だが超問題児にして超バカ揃いの6人組の事を指す) 大丈夫な方はどうぞ!!





「・・・・・・!」


キラキラとした目でこれからお世話になる校舎を見上げる。
これが、ここが、今日からお世話になる烏野高校だ。前の学校とは違う、こう庶民的な(馬鹿にしているわけではなく、本当に心から良い意味で)雰囲気が安心を醸し出している気がする。 そもそも私はこちらよりの人間であるからして、それはもっともな事なんだと言える。
前の学校が色々規格外だっただけだ、と遠い目をしてしまうがそれも仕方がないことだ。 前の衝撃をまだまだ引きずっているらしい。私もまだまだだなぁ・・・。

「よっしゃ!頑張る!」



ファイトオーッ!と小さく言いながら校門をくぐる。 今日は赴任して初めての登校である。シンプルなオフィスカジュアルな服をチョイスしてきたけど、 学校にこんな格好でくるのってなんだか新鮮である。久々に穿いたスカートの裾が、ゆらゆらと揺れパンプスが 心地よくコツコツと鳴る。

生徒たちは女子はブレザーで男子は学ランというスタイルにも親しみが持てる! 学ランいいよね!女子はブレザーでめっちゃかわいいよね!なんて制服チェックをしつつ、 登校前の生徒を見ながら職員室まで歩いていく。 正統派に着こなす生徒たちが珍しく思ってついついそちらに目がいってしまうのは仕方がないとも言える。
前に受け持っていた生徒たちも一応は学ランのくくりであったはずだけど、アレは結構な改造制服だったよーな。 前とかズバーンって開いてたり、パーカー着たり、ダメージジーンズ穿いてみたり・・・・いやいや、 あれも良い経験だった。うんうん。
ガラリ、とドアを開けて職員室へ入れば、先生方が、ああ今日からの!といった顔をする。 1人の先生が奥へどうぞ〜と言ってくれて、そのまま校長室まで案内してもらう。 今日からお世話になります、という事を校長先生と教頭先生に挨拶をしたけれど、 そこでまたしても衝撃の事実を突き付けられる。



「お噂はかねがね!あのブルジョワ校からまさか我が校に来てくださるとは!!」
「いきなりで悪いんですけどね〜、先生には副担任をやってほしいと思っているんですよ」
「え?」
「クラスを担当されるのも初めてではないですよね」
「なんでも超超優秀なあの進学校で教鞭を取ってたとか。期待してますよ」
「あ、アハハ・・・ハハハ・・・・はい、ありがとうございます」




どうしよう、すごく期待されている・・・・・・・・・。
これに関しては誤解されやすいのだけれど、私の受け持っていたクラスは進学校でもなんというか ・・・ちょっと特殊なクラスの個性的な子たちが多かったので、そこまでバリッバリな感じではないんだけどなぁ。
というかむしろ、ちぎっては投げちぎっては投げの・・・体育会系なんですけど・・・むしろあそこでは ツッコミとスル―の技術がかなり上がりましたよ・・・って事くらいしか自慢出来ないのですが、

なんてことは口に出せるはずもなく、校長と教頭のすごい誉めてくれる攻撃を右へ左へと受け流していく。 どうやらこの後の朝礼で、私の紹介があるらしい。 中途半端な今の時期に先生が来るのも珍しい事みたいで、職員室の先生たちも心なしか そわそわとしているように思える。
朝礼の時に紹介してくれるという事で、それまでは自分の机を整理して、時間を潰しておこう。 簡単な書類の整理をしてから私は職員室を出ることにした。
朝礼までに校内の様子でも把握しておくか〜 という気持ちである。前校よりはすぐに覚えられそうだけどな、あそこは本当に迷宮だからなぁ〜。

「あ!わ、ちょっ、」


てくてくと校舎に沿って歩いていくと、唐突に風が強くなった。油断していた為に校内図がひらりと手から離れていく。
目で追ってその校内図に追いつこうと駆け足で駆け寄ろうとする。足にはわりと自信があるが、 今日はパンプスを履いてきてしまった為に追いつきにくい。スカートなのもある。 風が心地よくはあるのだけれど、いかんせん少し風が強い。 捕まえられるかな、なんて思いながら駆け足で 紙を追いかける。長期戦になりそうか・・・?
しかし、フワッとした風に誘われていく軽やかな校内図の紙は、いきなり飛び出してきた手に捕まえられた。

「ハイッ、あっ、これ」
「わぁ、ありがとう!」


普通に受け取ってしまったんだけど、今風に煽られていた紙は私の身長以上の高さで上にあったはずなのに 、この子は驚異的なジャンプ力でその紙を捕まえてくれた。
すごーい、清春くんみたい、なんて思ってしまった。類稀なる運動神経は彼を彷彿とさせる。・・・別に構えてはいない。いや、あんな子滅多にいないから、大丈夫だ。 烏野高校にいるはずなんてないんだから。

「アッ、もしかしてセンセーですか!?すみません、俺っ」
「いいよいいよ〜今日からお世話になるの!よろしくね〜」
「そうなんですか!何の先生なんですか?あ、クラス決まってたりしますか?あとは部活の顧問とか!」
「国語だよ、クラスはまだ未定。部活も未定、でも副担はやるみたい」
「国語・・・・」


矢継ぎ早に前のめりになって質問してくれる生徒にざっくりと返事を返す。エナメルの大きなカバンが その子とは多少不釣り合いに見える。意志の強そうな目に、綺麗なオレンジ色の髪が風に揺れている。
教科名を言えば、眉をしかめて難しい顔をして下を向いてしまう生徒に、 少しだけ安心をおぼえる。そういう子にこそ私は勉強の楽しさを知ってほしいと思うのだから。
私は努めてにこやかにその子に話しかける。

「大丈夫!出来るようになるよ。一緒に頑張ろう」
「っ、はい!よろしくお願いしますっ」
「(礼儀正しすぎて違和感〜良い子すぎる〜)」


背筋を伸ばして、気をつけの姿勢をしたこの子に温かい目線を向けてしまう。 こんな良い返事初期の段階で聞いたことなかったよ〜〜すでに心の中は泣きそうである。
なんて素直でいい子なんだろう!こんなにいい子いなかったよ。二学期中頃でもまだ補習から逃げ回っていた あの生徒たちの事は忘れたくても忘れられそうにない。
卒業前は良い子になってたし元々あの子たちも良い子たちだったけど! しかしここの高校はとりわけ良い子ばっかりな気がする。 私があの空間に慣れ過ぎてしまったのもあるけど、こうに変にスレてないっていうか 奇抜な子がいないんだよね。ほのぼのしてるというか。 初っ端があの高校生たちだったから落差が激しいんだろう、うん、ほんと、すごい影響力だよねB6ってね。 とかつての教え子たちに思いを馳せてみる。ファーストインパクト半端じゃなかったからね。


「あの?先生」
「はっ、あ、ごめん、良い返事だね〜良い子だね〜」


にこにことしながらつい頭を撫でてしまう。悟郎くんより少し低いくらいでほぼ身長は同じだ。 なのにあのジャンプ力ってすごいなぁ〜。なんかの部活をやっているんだろうか。 バスケとかなら 清春くん喜びそうだなぁ。
へへへ、と笑いながらも、「〜〜っ!もう俺、高校生です。子供じゃないです先生!」と言われてそうだったそうだったと思いなおす。 ちょっと嬉しそうにしているところがもう懐いてきた犬みたいですごくかわいいんだけどね。


「えっと君は何組なの?1年生?」
「はいっ、1年1組、日向翔陽です!」
「そうなんだ、もし同じクラスならよろしくね」
「オイ、日向、朝礼遅れんぞ!」
「え、こんなもう時間!?やべーっ!荷物置いてこなきゃ」
「げっ、本当だ。怒られるね、引きとめてごめん!じゃあ本当にコレありがとう〜!」
「はーい!先生も気をつけて〜」
「!!、あ、ありがとうっ、日向くん!」



ちょうど横切ってきたもう1人の生徒に日向くんは話しかけられて、途端にあたふたしはじめる。 時計を見れば、私もそろそろ戻らないと校長と教頭に怒られてしまう時間になっていた。
やばいやばい!と焦って駆け出した日向くんに手を大きく振りながらお礼を言えば、振り返りながら こちらに手を振り返してくれる。しかもこちらを気遣ってくれるその対応に少しだけ涙が出そうだ。 出ないけど。この反応だよね!!うんうん!打てば響くっていうかね!
ついついこちらも満面の笑みで見送ってしまう。角をすごいスピードで曲がって校舎へと入る日向くんを 見守ってから私も職員室への道へと急いで掛け戻るのだった。




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「では、今月からお世話になる先生を紹介します、先生お願いします」
「はい!今月からお世話になります、です。担当は現国です」
先生はとても優秀な先生です。皆さん、分からないことがあれば積極的に聞いてくださいね」
「身体を動かすのも好きです。皆さんの事色々知れたらいいなと思います。よろしくお願いします」



パチパチパチと拍手がまばらになるのを聞きつつ一礼をする。
身体を動かすっつってもスポーツとかはそんなにやったことがない。あの頃は放課後の補習にほとんどの時間を 費やしていた為に、部活の顧問にはならなかった為だ。 広大な敷地の中の部活動専用のグラウンドにはあまり足を向ける事もなかったし、クラブ棟のような場所も たまに出向くぐらいのものだった。
それでも身体は毎日動かしていた。主に追いかけっことか。主に清春くんを追いかけまわしたりとか。 あとは反射神経も鍛えられたなぁ。
最初のあの翼くんとか瞬くんの車だったりバイクだったりで轢かれかけた事もあったっけ。 今では良い(・・・良くはないな)思い出だ。 瑞希くんとお昼寝したり悟郎くんに髪をいじられたりとかなり多忙な毎日だったなぁ。


一礼した後に、 顔を上げると1年生の列ですぐにあのオレンジ髪の日向くんを見つけることが出来た。 目立つなぁ、背はそんなに大きく ないのだけれど、なんというか存在感がある。うん、吸い込まれるように目がいってしまうのだ。オーラかな。
ぱちくり、と目を瞬かせる日向くんに、にっこりすると向こうも気が付いたのであろうにっこりが返ってきた。 かわいいなぁ。1年生のクラスに配属されたいなぁ。3年生はもう去年担当したし。校長の采配に全ては掛かって いるけど。





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「と言う事で今日からうちのクラスの副担になる、先生だ」
です。よろしくお願いします」



結果から言うと1年生のクラスではあった。
でも1組じゃなかった・・・ほんの少しだけ残念という気持ちもあったけれど、でも普通に校舎内を歩いていれば 会えるだろうし、と気を取り直してもう一度だけ深く礼をする。顔を上げればまだまだ高校生になりたて、と いった感じで、初々しさがにじみ出ている。
あ〜〜〜この感じいいなぁ。聖帝では3年生を担当していたからこんな初々しさはなかったんだよね。どちらかと 言えばふてぶてしさの方が勝っていた。
よろしくと言えば素直によろしくお願いしま〜すと返してきてくれたクラスの子たちを見ながらそう思った。 だめだ、いかん、B6と比べてはいけないのだろうけどおおよそ良い子ばかりだこの学校・・・。
まず教室の扉を開けた時に「何か落ちてくるのでは!?」と構えてしまう私がいて、大分毒されていたんだなぁって思う。先生や生徒に変な顔されてない、 気が付いてない事を祈ろう。・・・・・・いや、そこまでこの新しい副担の事を気にする奴は いないな。教室の中で思いっきり寝ている奴を発見してそう思う。
初々しい中にもふてぶてしい奴というか遠慮がない奴ってどこにでもいるもんだな、と思って私はにっこりと 笑った。・・・・・・その方が教えがいがあるというか腕が鳴るというものである。




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「はーい、これで今日の授業は終わりです、おつかれさま〜」


キーンコーンカーンコーンと鳴るチャイムを聞きながら授業終了の声を掛ける。
1年生と3年までのクラスを半分づつ見ることになり、なんとなくこの学校にも慣れてきた。 校内で迷う事はなくなったしね。
3年生は進路で迷う事もあるだろうから、そういう事のサポートも出来ていた先生にお任せしたい、とか 言われてしまい断れなくなったというのもある。 私に出来ることがどれだけあるのかは分からないけれど、悩みなら相談に乗ってあげたいし、話だけでも 聞いてあげたい、そう思うのはやはり教師だからなんだろう。

ここでの授業はすんなりと進み過ぎてむしろなんだか物足りないくらいだ。もちろん教えることはとても楽しい けれど、わりとみんな平均に出来ちゃうからそこまで突っ込まなくてもよくなっているんだよね〜。
すごいね、全国の高校生は。基準が聖帝のクラスXだから仕方ないけど。聖帝だって、出来るクラスは超 出来てたけど、いろんなものは欠けてたしね。そういうものを補ってあげる先生にもなりたいものだ。

今回の授業では課題を出しておいたので、その確認のために生徒から集めたノートをよっこいしょと抱えて 自分の教材と共に抱えて教室を出る。 やれやれ、これだけスムーズに行く授業ってすごいなぁ、充実しているなぁと考える。すばらしいことだ。
右手に全ての持ち物をバランスよく持ち、教室のドアを後ろ手に閉めようとする。足を 使いたいところだが、いつも衣笠先生と二階堂先生に眉をしかめられていたことを思い出して左手を 意識的に伸ばした。
と、その時に伸ばした手がかち合う、ああ、生徒が教室から出ようとしてたんだな。 「あ、ごめんね」と言って両手でノートを持ち直して教室から去ろうとしていると、手伝いましょうか?と言われた。

・・・・・・・・え?!い、今なん・・・・て?


「いや、あの大変そうだなって」
「え?!!!あ、ありがとう!」



すごい勢いで振りかえってしまったので、生徒をびびらせてしまった。
しかし、考えても見てほしい。待って!?こんだけ大荷物!?オイオイ! って自分で思ってた時も、手助けはあまりしてくれなかった聖帝時代・・・。 こう書くとかなり聖帝って酷い学校では!?なんて思ってしまうかもしれないけれど、大体の重いもの とかも自分ですいすい運べてしまうのであまり声を掛けてくれなくなったんだよね。
自分の事は自分で、という精神が染み付いてしまっていたというものあるけど。清春くんとかに体力バァーカ!と 罵られたことを今でも覚えているぞ・・・!別に悪口とかじゃない、あのB6たちもちょっとアクが強いだけだった。
気にかけて来てくれるようになるとクラスXの子も積極的にお手伝いしてくれたけど、こんな赴任早々で そんな子はいなかった!!なんて温かみに溢れているんだろうか!ビバ!烏野高校!!


「優しいね〜、助かるよ」
「え?いえ、重そうでしたしこれくらい」
「これくらい、って言えるのがすごいことなんだよ」



半分じゃあお願い、と頼んだのだけれど、全部持ちます、と言われてしまったのでお言葉に甘える。 彼の周りは清涼な風が吹いているようである。涼やかな笑顔と合わせても爽やかくんである。 あまりお近づきになったことのないタイプだな。まぁまずB6にはいないタイプだ。新しい!
そんなこんなで、職員室までの道のりを明日の授業確認のためのプリントを確認しながら歩く。 もちろん運んでくれた生徒の事は忘れない。こんな出来た子の事を忘れるものか。
そう思っていたら、生徒の方から話しかけてくれた。積極性◎をつけておこう。心の中の帳簿にぐりぐりと 刻む。


「前の学校はどんな感じだったんですか?」
「ん?・・・ん〜そうだね〜、色々と規格外って感じかな」
「優秀な学校だったんですよね!部活とか強かったんですか?」
「そこそこにどの部活も強かったかな。でも私顧問とかじゃなかったから詳しくないんだよね〜」
「そうなんですか、体育会系の部活とかやってたのかと思ってました」
「それどころじゃなく忙しかったからね色々と!」
「へぇ〜、じゃあもし部活見に来る予定あったら見に来てください」
「あ!部活入ってるんだ!行く行く!」


そういうと嬉しそうに頷いて笑顔を浮かべる。 本当に部活が好きなんだなというのがダイレクトに伝わってきてこちらもついつい笑顔になってしまう。 なにかを頑張るということはエネルギーがいる分、とても大事なことだ。 なにか、を見つけられる高校時代は一生分の宝になることが多い。彼はもうそれをすでに見つけているのだなぁと 思うと安心した。

職員室前まできてくれた彼からノートを受け取り、礼を述べる。部活に精を出すというのは今まで担当 していなかったから新鮮だなぁ。この学校は部活動に真剣になる生徒が多いようでなによりである。 日向くんを思い出しながらそんな事を思う。

また落ち着いたら、彼らの部活を覗いてみよう。
今度は聖帝で出来なかった新しい事を初めて見るのも悪くはないのかもしれない。







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