※このお話はクロスオーバーです!!! ViaminXでB6たちを卒業させた後になんでか烏野高校に赴任した先生のお話です。 (B6とは??全員美形だが超問題児にして超バカ揃いの6人組の事を指す) 大丈夫な方はどうぞ!!





今日も良い天気だ。
数か月も経てば、もう慣れた校内を歩く。入学式の時とは違い、パンプスではなく動きやすいヒールの低い靴を履いている為、足取りは軽い。
パンプスのこつこつとした響きも好きだが、やはりこちらの方が合っている。しっくりとくるその感覚にほっとしながら、職員室へ向かう。
今日はスムーズに進んだから明日の授業でどこまで進めようか、どこを重点的にやろうかなと考える。ゆるやかな授業後のこの部活前の時間が好きだ。それぞれ部活へ飛び出していく生徒には微笑みを浮かべるしかない。青春だ〜!なんでも青春に弱い私である。

考え事をしていた為か私は背後から忍び寄る敵に気が付かなかった・・・・・!
どこぞの名探偵のようなあらすじだが、実際の出来事である。おそろしい。
ひとときも油断というものは許されなかったあの聖帝時代の事が思い出されて私は 激しい衝撃と共に固く引き締まった胸板を感じながら冷や汗を垂らした。



;;;;;;



「ヒャッハーーー!キシシッ、元気してたかよォ?ブーチャ!」
「・・・・・うん、元気元気・・・・・・・・・・」
「元気ねェじゃねーかヨ!やっぱり俺ッ様がいねェと元気でねェんだなッ、ケケケ」



背後から尋常じゃない勢いで飛びつかれて、くらっとしたが、ぐっと踏みとどまって耐える。 なんなんだこの懐かしさの中に疲れが混じる感じは。
しかしこの独特のイントネーションと喋り方には十分すぎるほどに覚えがありすぎて、違う意味でめまいがしそうである。ぎゅっと肩に回された腕はとても筋肉質である、背後から抱きつかれている状態で私は彼と会話を続ける。
しかし、はっ、と正気に戻る、いやいやいやなんで、ここに!?翼くんとかそういう問題じゃない、 一番来たらやっかいな人が来てしまったよ。
今日の授業内容とかスパーンっと吹っ飛んでいってしまったんだけど。流される前に腕を外して、 くるりと彼に向き直る。久々に会ったけれど、そんなに変わってない。まぁこの前卒業したばかりだし、そうそう変わることはないだろうが、悪戯っぽい瞳と人を惹きつけてやまないオーラは健在だ。



「いや、てゆうか、なんで?うん?!どうして来てるの!?ここ宮城!!」
「聞いたぜ、カベからァ〜なんかオマエが宮城の烏野ォ高校にィ〜いるって話ィ〜!」
「いや、ご、ごめんね?皆に報告してなかったか、」
「オマエこそ俺様に無断で何こんなトコ来てんだァ〜?たまたまバスケの遠征でコッチ来ててビックリしたぜ」
「・・・・清春くんの行動力には本当に恐れ入るよ」
「シシシッ、オマエを驚かせるのが俺ッ様〜の生・き・が・いっだからなァ」



脱力である。
ああ神様、なぜ彼をこの地方へと寄こしてしまったんでしょうか・・・、合宿なら他にもいっぱいあるで しょうが!と叫ぶと清春くんはシレッと強豪校がこっちにはあるからな〜と軽い調子で言う。
まったくもう、いきなり押しかけるなんて・・・ちょっと連絡してくれればいいのにとこぼせば思い 切り口の端が上がる、こ、これはすごく嬉しくて楽しくて仕方がない時の(厄介な)清春くんの笑み である。
こう悪戯のターゲットを見つけたというか、どうからかってやろうかと企んでいるときに浮かべる笑みだ。



「せーっかく遥々来たのにそんな対応かよ・・・!俺ッ様寂しくて泣いちゃいそォー」
「はいはい、わざわざ来てくれてありがと〜私も久々に会えてうれしいよ〜」
「ゆるっ!なんっなんだヨ、・・・・・・・〜ッ!」
「わっ、ちょっと、何!」



泣きまねでグスグスしだすが、これは演技である。何度も見てきた光景にはいはい、 と清春くんの肩を軽くたたく。
分かってますよ〜はいはい、と対応すればぐっと顔を寄せて、つまらなそうに表情を変える。 と、その瞬間にぐいっと手を引かれて彼の中に抱き込められる。
うわっ、このスキンシップは久々だ、びっくりしてじたばたする。清春くんの行動はいつだって突然で 人に合わせるということをまずしない。自分の為の自分だけの為の行動が多いのだ。したがって、周りの目なんて 気にすることもない。
しかし、ここ学校だからーー!誰かに見られたら超厄介だから・・・っ!
聖帝だと清春くんと私の組み合わせは「ああ・・・またか・・・」と皆にスル―されていたけど(大体B5の面々が助けてくれたし)烏野高校では違う。これ誤解されるから!



「〜〜〜〜っ、清春くん!ちょっ、」
「キシシッ、焦ってるゥ〜!カワイイカワイイ、俺様のちゃァ〜ん!」
「思ってないでしょ!ちょっと!」
「ア〜〜〜、カワイイな〜〜〜ちゃ〜ん」



おい、ちょっと棒読みなのがムカつくぞ。
馬鹿にしているように見えて、清春くんの腕の力は依然として強い。
ぐぬぬぬ、と声が引き締めた口から洩れる。あざ笑うかのように清春くんはとてもいい笑顔で抱きしめてくる。くそぉお、馬鹿にしてやがる〜!!
残念ながら互角とは到底言えない力関係なので、口以外だと勝てない事が多いんだよねぇ。
どうしたものかと考えた時、ぱっと腕の力が緩んだ。アレ、どうしたんだ清春くん。 顔を上げれば楽しそ〜〜〜な顔を崩さない清春くん、と誰かが隣に立った気配と足元。
・・・ありゃ、さっそく誤解されるような状況に陥ってますね。おそらく助けに来てくれたのであろう、 視線を上げていけば、仏頂面の生徒がそこには立っていた。



「あの、先生、嫌がってますけど」
「ハァ〜〜?お前ナニ?」
「あらっ、影山くん、部活は?」
「ここ体育館までの道なんで。ちょうど目に入ったっていうか・・・」
センセー、俺もっ!俺もいる!大丈夫ですかー!?」
「日向くんも、部活行く邪魔してごめんね、心配してくれてありがとう」
「・・・この人なんなんすか?」
「あー、前の学校の教え子、今日は合宿のついでに寄ってくれたの、ねっ」
「キシシッ!が寂しがってるッて思って〜!わざわざ寄ってあげたんだヨッ」
「はいはい、ありがとうね〜」
「・・・もしかして月島が言ってた、翼って人です、か?」
「あァ〜?カベ?」



影山くんが清春くんに恐れず言うが、そうではない。もしかしてこの前、翼くんと電話したのを 月島くんが聞いていたので、それが影山くんにも伝わったのかもしれないな〜。なんてゆるく聞いていた。 噂ってすごいな、同じ部活だからかもしれないけど、伝わるの早すぎ。というかバレー部1年生って仲が良いんだなぁ、そんなことまで話すなんて。
違うよ、って口を挟もうとする前に、日向くんが大声で叫ぶ。



「あーーーーーっ!そうか、翼さんって、センセーのカレシ!」
「ハァ?????!!チョ、オマエいつの間にカベと!?聞いてねェぞ!」



日向くんがそういうや否や、二人の生徒に向いていた清春くんの目線が高速でこちらへ向く。怖い怖い怖い、目がマジになってますよ、清春くん。ハンターかよ。
グイッと手を引かれて2人を後ろにして、顔を近づけられて、いつからだヨ?あァ??とドスの聞いた声で問われるが、 まさかあの冗談を月島くんが、本気にしているとは思わなかったので、私としても想定外の出来事だった。 すぐに手のひらを顔の前でひらひらと漂わせて否定する。へらりと笑みをつけ足すのも忘れない。


「や、勘違いだよ、この前めんどくさいから流したらそういう流れになったっていうか・・・」
「本当だろーなァ・・・・」
「清春くんて意外に疑り深いよねぇ。本当本当」
「・・・・・」



じとーっとした視線を私に当ててから、私の言葉にウソはないと嗅ぎとったのか、「まぁイイか・・・、」納得したような表情になる。は、と一息ついて清春くんは笑顔になる。
うわ、まただ、この微笑み。と私が警戒したのもつかの間、一瞬の隙を狙って、 腰に手を回され引き寄せられ、日向くんと影山くんの方へと向く。その仕草は王子様っぽい仰々しいお辞儀の 仕方ではあったけれど、もともとの甘いマスクのおかげで似合うと言えば似合う。内面を見なければの話だが。



「ドォーモ!はじめまして!がお世話になってますゥ〜!カレシのォ仙道清春でェ〜す!」
「「ハァ?????!!!!」」
「えーーーーーー!仙道さんがカレシ?!」
「ち、ちが・・・」
ちゃんも恥ずかしくって言えなかったんだよナァ〜、コイツ可愛い所あるからァ!」
「いや、清春くん、」
「ってェーなワケで!ヨロシクな〜!ガキ共ッ」



思わず影山くんとハモってしまった。あまりに奇天烈な事を言い出すから! なんじゃそりゃーー!からかうにしても悪質!この子たちまだ高1だから! 素直だから信じちゃうんだよ〜〜〜!喋ろうとすると清春くんの大きい手が、私の口をふさぐ。
いやいや、ちょっとぉ!もがもがという音を出すだけの私である。
上を見上げれば清々しいほどの完璧なスマイルで2人を見ている。 ああ、黙っていればこの顔にどれほどの女の子がむらがるのだろうか、などと遠い目をしながら見てしまった。 視線を感じればこれまた、演技がかった仕草でパチンとウインクひとつオマケに頂いてしまった。
しかし私はあの学生時代の清春くんを知っている。今も内面は変わっていないし、頭の回転も 無駄によろしいので余計に性質が悪い。 本当に清春くんにかかると時間がどれだけあってもキリがない。
そろそろ切り上げて清春くんから解放してあげないと、この2人が部活に行けない。 ここらが潮時だな、というところで、 ぐいっと清春くんの手をどかして2人を急かす。 2人の表情がびっくりというか固まったまま動かないので不安になる。



「まぁまぁ清春くんの事は良いから部活行きなさい〜、あと清春くんは彼氏じゃないから」
「えっ、そうなんですか!」
「うん。冗談だよ。清春くんは悪戯好きだからね、2人とも騙されたり悪戯されないように気をつけてね」
「そう・・・・なんすね、よし、日向ボケェッ!!部活行くぞ!」
「おう!わ、分かってるよ!」
「ハァ〜バレたら仕方ねェな〜。まァ〜それも時間の問題だけどナ!」
「はっ?それってどういう意味・・・!」
「そのままの意味ィ〜キシシッ!じゃーなチビ共〜」
「清春くん、影山くんは清春くんより大きいよ」
「ウルセー、ほら散った散ったァ!学生は早く部活行け〜」



しっしっと手を払うように二人を部活へ行かせるように急かす。
何か言いたげな二人だったけれど部活の方が何百倍も大事だ。しぶしぶと言った様子で背を向ける。いってらっしゃ〜い、がんばれ〜!と声を掛ければ、体育会系らしく、気合いの掛け声を入れて体育館の方へ走っていく。
それを見送っていれば、黙っていた隣の清春くんが口を開く。



「あいつらの部活って・・・」
「気になる?でも残念ながらバスケじゃないの」
「別にィ〜、気になってないケド」
「あの2人はバレー部なんだって、楽しそうでしょ」
「フゥ〜ン、」



;;;;;;;;



「影山〜!少し残ってやろーぜ〜!」
「ああ・・・」
「日向、影山、ほどほどにしなさいね」
「暗くなる前には帰るんだぞ〜」



体育館は閉めなくちゃいけないから、中庭で少しだけ練習しようという事になって、部活では補えきれなかったパスの練習をする。
地味だけど、大事な練習だ。弧を描くボールを受け止めるように手を伸ばす。
すると確かにこちらへ向かってきていたバレーボールが忽然と消えた。



「ってあれ・・・」
「ボォール取りィ〜!ケケケッ」
「あッっ!さっきの!!」
「今、スゲェジャンプした・・・ッ」
「キシシッ、オマエらバレー部なんだってなァ〜に聞いたぜェ」

空中を飛ぶボールをとてつもないジャンプ力で奪ったのは、部活前に突然現れた仙道さんだった。 ボールを片手でくるくる〜とバスケットボールみたいに回して見せる。しかし今のボールの高さからして、 自分と同じか上回るくらい飛んだように思えたが、この人本当はすっごいバレーの選手とかだったりして!?
小さな巨人みたいな!!!!



「すっごい!!!今すごいジャンプ力でした!」
「アァ?チビ〜俺ッ様に惚れんなよ〜〜ホレッ」
「な、なんかスポーツとかやってるんすか!?」
「バスケ」
「バスケ!なんだバレーじゃないのかぁ」
「あのバネに跳躍力、反射神経、半端ない・・・!」
「ま〜なァ!・・・あ!オマエちょっとこっち来てみ?」
「ん?俺ですか、何・・・ギャアアア〜〜!」
「キシシシッ!!引っ〜かかったァ!ひっさびさにやると血が躍るぜェ・・・!」
「なっ、ちょ日向!ボケェなにやって、うおおおっ!」
「俺様よりデカい奴は嫌いだぜェ・・・!シシシッ」



ちょいちょいと手招きされてのこのこと仙道さんの方へと向かうと急に草むらから飛び出してきた縄に足を取られてそのまま逆さづりにされる。
それに動揺して駆け出した影山も動揺に2人とも仲良く逆さづりだ。
なんじゃこりゃあああっと影山が叫んでいるが、俺もそんな気持ちでいっぱいだ。
関わってはいけない危険人物と出会ってしまったようなそんな後悔で今溢れている。悪戯が大好きだと、センセーには聞いていたがかなり悪戯の枠を超えている。

投げ出されたボールを手にとってひょいひょいと遊ぶ仙道さんはまるで罪悪感もなくカラカラと 笑うばかりである。これはっ・・・大王さまよりもっともっと恐ろしい何かを秘めている奴だということは理解した。
逆さづりのままで風に揺れる俺たちはシュールすぎて、なんとも言い難い。



「・・・え、なにやってんの、キミたち。馬鹿なの?」
「日向に影山?なんで吊られて・・楽しいの?」
「んなわけねーダロ!!やられたんだよッ、ここにいる奴にッ!」
「キシシッ、俺様のオモチャ、よォーこそッ、いらッしゃいませェ〜!」
「うわっ、ちょ」
「ぎゃーーー!ツッキー!!!って俺も!?」
「俺様自分よりデカい奴は嫌いッつッたろォ〜、お〜お〜イイ眺めェ!」
「月島ー!山口っ!」



そこに帰りがけ、偶然居合わせてしまった月島と山口を見て、仙道さんの口はにやりと笑いを乗せた。 そしてそのまま大げさな振りでお辞儀を1回すると、草の中にまだ隠してあったのだろう、縄が 見事に月島と山口の足に引っ掛かった。同じ手口だが、見れば見るほどに鮮やかなお手並みである。
見事に1年生が綺麗に逆さに宙づりになった姿を見て仙道さんは高笑いをかましている。 なにがなんだかまったく分からない後からきた2人は困惑を隠し切れていない。
しかしメガネを落とさないように抑えている月島は笑えた。山口は山口でいきなりこんなふうに吊られたから、 じたばたしてブランコみたいになっている。



「なんなの日向!?これ、めっちゃ頭に血が上る〜!」
「や、俺たちにも何がなんだか分からない!」
「それ威張って言う事じゃないでしょ」
「なに落ち着いてんだ月島ボケ!」
「ハァ?ボケはどっちなの」
「なんでこんな状況でも喧嘩になるんだよ!」
「うわぁああツッキィイイ、これどうなってんの!?」
「あァ、お前が月島か、とどーゆー、」

「清春くんーーーーーーーーーーー!!!!!」
「ゲッ!!もう来た!!いつもいつも早ェんだよ!!」


下校後の静かな中、助けがやってくるのは絶望的かと思いきや、そこに一筋の光が見えた。
端的に言えば、手を振りかざしてセンセーがこちらへ寄ってくるのが見えた。じたばたしていれば俺たちが目に入ったのだろう、 仙道さんに向かってすごい勢いで辞書を投げつけた。かなり先センセーもバイオレンス寄りである。 風切りながら飛んできた辞書をひょぃっとキャッチすると、ことさら仙道さんは溌剌と嬉しそうに笑った。



その後、バシンと背中を一発センセーに叩かれて、仕方がなさそーに俺たちの縄を外していく仙道さんの姿は少し面白かった! 俺以外の3人は面白がってる場合か!と怒っていたけれど、仙道さんは不思議な魅力で惹きつけられる 何かがあるなぁと思う。
センセーにガミガミと怒られて、地面の上で胡坐をかきながら、「へーへー。うるせェ〜」とか 聞き流している仙道さんはやはり大物だ。バレーボールをいじりながら、くるくるーと回したり、頭の 上でほいほいっとバランスを取ったりして遊んでいる。しまいにはボールの上で逆立ちをしだした。


「すっげー!今のどうやるんですか!?俺にも出来ますか!?」
「オマエは結構面白さが分かる奴だなァ!悪戯も出来るようになれば、アイツらをもっと罠に掛けたり出来るぜェ!」
「ヅッキィイイイイイ!狙われてる!俺たち、超狙われてるよぉ〜〜!」
「うるさい山口、そんなん先生がなんとかするでしょ」
「お前、仙道さんになにか恨みでも買ったのか?」
「そんな事するわけないでしょ、身に覚えがないね」
「そーだそーだ!ツッキーがそんな事するわけないだろ!」

「キシシッ、もう一回吊るしてやろォ〜かッ」
「こらっ!清春くん!!」







レポート02:

   小悪魔襲来の記録

  

「ホント、なんなの、あの人・・・」
「仙道さん!先生の教え子だったんだってさ」
「へー・・・」
「か、かなり強烈な人だよね・・・怖いんだけど・・・」
「でも、スッゲー高いジャンプするんだぜ!本当にすっごい!」
「確かにあのバネといい、身体能力はかなり高い、良い選手だと思う、性格は別として」
「あはは、王様がそれ言うんだ〜?笑える〜」
「あァ?!」