「えええええええ、なんで、なんで笠松先輩なんスか!?」
「こ、声が大きい!!!」
「ご、ごめんっス、つい、びっくりして・・・」
「友達に誘われて見に行った入学して初めての海常の試合でね・・・」
「それ俺もいたっスけど・・・・・」
「ああ、周りは黄瀬黄瀬コールがうるさかったから知ってるよ」
「うるっ・・・う、るさ・・・」
「輝いてるなぁ、って思ったの。キラキラしてるなーって」
「俺だって輝いているイケメンモデルっスよ!」
「いや、だから別に張り合わなくてもいいんだけど」
「あ!そ、そうっスよね・・・つい」





焦って前のめりになって反論してしまったのはなぜかは分からない。親友であった彼女がどっかへ行ってしまいそうだったから、それで焦ったのかもしれない。 キラキラ輝く現役モデルとしては、自分も出ている試合の中で輝いていない瞬間などないと思っていたからかもしれない。
それ以上に、彼女がキラキラしているように見えて、途端に自分がちっぽけな存在になったような気がした。
なんとなく、置いて行かれた様なそんな気がしてしまったのだ。





「あっ、でも前校門のとこで会ったとき、隣に笠松先輩いたっスよね?なんでこっちこなかったッスか?」
「な、なんでって・・・・・・・緊張するから・・・・!無理!!無理です、あんなキラキラの傍にいくの」
「えー、俺には全然キラキラにみえないっスけど」
「黄瀬くんから笠松先輩がキラキラに見えたらそれはそれで気持ち悪い」
「ひどっ!」




そういうと、彼女は笑っていたけれど、俺は内心複雑な気持ちだった。
うーん、分からない。キラキラ?笠松先輩がキラキラ・・・・、それで頭は埋め尽くされてしまって、
部活中にも笠松先輩をじろじろと見てしまう。いや、別に輝いてはいないけど。いつも通りの先輩だけれど。





「・・・・輝いてるっスか・・・・?」
「なんだお前いきなり・・・大丈夫か、頭」
「笠松先輩が輝いてキラキラ・・・・キラ、キラ・・・・?輝いて・・・?」
「はぁ?本当にお前大丈夫か、頭どっかにぶつけたか?」
「もー違うっスよ!俺だってたまには真面目に考える事もあるっスよ」





*





「〜・・・・、・・・・・〜〜〜」
「へー」

確かに流れでというか、勢いで自分が相談に乗るとは言ったけれど、なんかおもしろくない。
右から左へと聞き流してしまう。そもそも俺相談とか乗れない人だったな。なんてことまで考えだしてしまう。
だって、望むものは全て勝手に自分の手の中に納まってしまうし。
なにかを手に入れようとして努力したのは、 バスケくらいしかない。人間関係なんて特に努力した事がない。
薄っぺらな人間関係の中で生きてるなーなんてぼやっと考える。

ぶすっと手を頬に当ててあぐらをかけば、なんなんだこの人みたいな顔をされた。俺も分かっている。
このいらつきはどこからくるもんなのか。でもとにかく面白くない。
でも彼女が語る時のキラキラははじけて止まらなかった。笠松先輩の事を話す時は決まってキラキラとしていた。
少しはにかんだり、ちょっと頬を赤くして、たまにはぎゅっと目をつぶりながら話すその表情はクールなんてもんじゃなくて、ちゃんと女の子だった。
そうだ、女の子だったんだ。
彼女は笠松先輩の事をキラキラ輝いていると言ったけれど、俺から見たっちもキラキラ輝いている。
彼女が笠松先輩をキラキラしているっていう以上に俺はそのキラキラをっちから浴びている気がする。
友達が欲しかったはずだ。外見に惑わされず、それでいて強くあれる彼女が羨ましくて近づいてみたかった。
それがどうだ、今やこの有様だ。笑ってしまう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんでこうなった?





「・・・・・・・俺、っちの事すきっス」
「・・・・・・・・そう、私も好きだよ」



気が付けば、ぽろりと零れるように、口からその想いがこぼれてしまっていた。
押さえきれなくて洪水のように溢れる想いが止まらない。友達であると言う事を最初に言ったのは、 他でもない俺であるはずなのに、そして彼女が俺を好きになる事はないと言う事もそれもまた俺が言った事であるのに。
それを今、俺は覆そうとしている。



「でも、それって笠松先輩に対する好きとは違うっスよね」
「そうだね」
「多分、俺、笠松先輩が好きだっていうっちが好きなんだと思うっス」
「・・・・・・、」
「いつもはあんまり笑わないっちが1番綺麗に笑うのは笠松先輩の事話している時だから」
「そうだったかな?」
「そうッス!俺は1番近くで、1番恋するっちの事見てたから分かるっス!キラキラっス!」
「ありがとう、」





歪む口元を無理矢理上に上げて、にっと、そう笑って見せれば、ええと、と彼女はなにか考える素振りを見せた。
彼女の口癖である「ええと、」はかなり良く聞くけれどこれは考えをまとめている合図なので、俺はゆっくりとそれを待つ。

ゆっくりと余裕を持たせるように、笑みなんて浮かべて見せたけれど、でも、これが、この俺の気持ちが報われる事はなく、 そして、俺をキラキラと見る彼女が幻想だと言う事も分かっているのだ。
苦い気持ちでキラキラからは程遠い気持ちだけれど。絶対に俺を好きにならない彼女だから親友になったのに。
キラキラが彼女から、まとわりついて離れない。俺の目には眩しすぎて、くらりとめまいがした。














不意打ちキラリズム 終








(120517)