ジムで虎徹さんが腹筋やっていたなぁ、なんて考えながら、やはりくびれが必要かなぁ、なんて思って腹筋をする事にした。 いつもの指定席であるこの場所に虎徹さんはいなく、ジムを見わたしても見当たらない。
バーナビーさんもいない所をみると、多分会社で事務処理などをしているんだろう。
バーナビーさんに怒られながら書類仕事をやっている虎徹さんが目に浮かぶようだ・・・頑張ってください、はい。

ではその間に、とそう考えて私は腹筋を始めた。が、すでに 20回を超えた所で苦しくなってきた。
やはりいつも鍛えていないのがもろに身体に出てきている。 恐ろしくのろのろなペースで腹筋を行う、続ける事が大事なんだよ、こういうことは。うん。
自分をどうにかこうにか宥めて、納得させながら一回一回を数を重ねていく。



「にじゅうさん、にじゅううし、にじゅうご、にじゅうろ・・・、わっ!」
「あ、お、おおお驚かせてごめんなさい、あの!・・・その、これっ!」



かなり苦しいけれど26回目の腹筋で上まで上がって来た時に、唐突に横から手が出てきた。 それを見て書いてある字を見れば、出されたのはどうやら映画チケットらしい。
私の顔の前に出されたその二枚は握りしめられてしわができていた。 その差し出した主を見れば、俯いて、その映画の二枚だけを突き出している。 その人は普段はあまり関わりのないとても珍しい人だった。



「あれ・・・・・えーと、イワンくん?」
「は、ははははい!イワンです!あの、さん、これ、」
「映画?いいですねー!これ話題作じゃなかったかな?見に行くんですか?」
「そうなんです、スポンサーの方から頂いて・・・!それであのこれ、に、僕と・・・い、いっしょ、に」
「イワンくんと?・・・・もしかして私?」



こくこくと頷いて下を向いてしまったけれど、 それでも分かる耳まで赤くなったイワンくんを見て、私はそっと、笑う。
ほんと可愛いなぁ、可愛すぎる。人見知りだって聞いていたので、あまり驚かせない様に、徐々に慣れてほしいなぁ、 なんて思っていたけれど、まさか向こうからアクションがあるとは思わなかった。
あれ、なんか今の表現、野生動物っぽい?



「いいの?スポンサーさんにもらったやつ、私に使ってしまっても」
「は、はい!」
「じゃあ喜んで!楽しみだねぇ」
「!!!!??!!」



イワンくんは私の返事と同時に俯いていた顔を上げ、私と目を合わす。
瞬間的に沸騰したかのようにぼぼぼっと顔が真っ赤になる。 もともと色が白いから余計に分かってしまうのだけれど、それもとても可愛くて、ついつい 構ってしまいたくなる衝動を押さえながら、私は、笑顔でそれに答えた。










  あなたといっしょ
「折紙・・・ちゃんとやれたみたいだな・・・」
「やれやれ本当に世話が焼けますよ、先輩」
「でもほとんど喋ってねぇけど、デート・・・大丈夫か?」
「僕はそれよりもさんがこれをデートと思っているのかが心配ですけどね」
「た、確かに・・・」