今日も暑い。空を見上げて見れば真っ青な空がずっと遠くまで続いている。
シュテルンビルドは今日も平和だ。平和なのはとってもいい事だ、そんな事を考えた私の頭が一気に引き戻される。




「てか私の時はバイトとヒーロー兼業なんてってうるさく言ってたくせに!」
「なっ、しょうがないだろ・・こいつからバイトとったらきっと・・・死ぬぞ」


店内に2人の言い合いの声が響く。
窓の外には晴れやかな青空が広がっていると言うのに、2人はなんだか険悪なオーラを纏わせている、 そう思ってしまうほどのやり取りがレジ前で先ほどから繰り広げられている訳である。
カリーナは私が多忙過ぎるからと心配してくれているみたいで、 さっきから虎徹さんにつっかかっている。対する虎徹さんは私の貧乏っぷりを心配してくれているみたいだ。
まぁ働かなかったら私、食べるものなくて死んじゃうけどね。 うんそれは切実な事だと言える。
しかしまぁなんといってもここがどこなのかって言うことが問題である。再確認だよ、再確認。
こほん、とわざとらしい咳を一つ落として、私は努めて営業口調で切り出す。


「あのーお客様、お話はこちらへ逸れておやりくださいませ」
「ちょっと!の邪魔になっちゃったじゃない、おじさん!」
「おじさんって言うな!」


お客様、レジ前では口論はお辞めください、と再度笑顔は崩さずに言えば、ようやくカリーナと虎徹さんは黙って端に寄った。 うん、分かればそれでよろしいのだ、と私は2人に向かってにっこりとした。
そうして、今レジ打ちをしている人物に話しかける。そうなのだ、今現在このコンビニにいるのはカリーナと虎徹さんだけではない。 バーナビーさんも一緒にこのコンビニに来たのだ。この3人コンビって結構仲が良いのかも。


「しかしバーナビーさん、なんでこんな反対側のコンビニに?アポロン前にうちの系列のコンビニありますよね?」
「あそこは品揃えが悪いので、こちらまで買いに来てるんですよ」
「えっそうなんですか?それはすみません!品揃えの事は報告しておきますね」
「・・・ええ、お願いします」
「嘘は良くないよな、カリーナ」
「ええ、素直じゃないって苦労するわねー」
「・・・お2人とも、蹴り飛ばされたいんですか?」



ぎゅっとにぎった拳がふるふると震えているのを見て、やばい、このままでは店が崩壊するかも、と 冷や汗が背中を伝う。この3人はヒーローだし、こんなちっぽけな店なんて一撃で倒せるような破壊力を持っている。
危険、このままだとこのコンビニが危険だ。私は慌てて、話題を逸らす。



「それにしてもこんな暑い中わざわざ来てくださって嬉しいです!ありがとうございます」
「まぁ、そりゃーな。バイトもして、あっちの仕事もしてって大変だろ?様子見だ」
「まぁね。そうそう、このバイト終わったら何か予定ある?おいしいクレープ屋さん見つけたの!一緒に行かない?」
「わ、本当に?いいなぁ。行きたい行きたい!5時で終わるんだけど待っててくれる?」
「もちろん、その為に来たのよ、私」

「≪ボンジュールヒーロー!出動要請よ≫」


わぁああと盛り上がった所で手首のヒーローバンドがCALLの文字を表示する。
この場にいる全員がそれを確認し、ぐ、っと頷いて見せる。


「・・・・」
「残念な事にどうやらクレープはお預けみたいですね」
「なにその笑顔。むかつくんだけど!どんな事件だって私がちゃちゃっと解決して見せるわよ!」
「へぇ、僕に先輩らしいとこ見せてくださるんですか?」
「当たり前じゃない、ポイント取られて泣かない事ね」
「カリーナ、格好良いね・・・!さすが!」
、お前は、お前だけはあんな風になっちゃいけないぞー。おじさん泣いちゃうからな!」
「・・・・行きますよ、おじさん!のろのろしないでください!」
「はいはい。酷ぇーな、バニーちゃん」



飛び出したバーナビーさんを見送っていると、虎徹さんが ぽんぽんと頭に置かれた手のひらの温かみを残しながら、コンビニのドアを開けて外へと出ていく。 最後にカリーナが私を振り返って言うのだ。それに笑顔で応えて私はコンビニから飛び出していく。 私の街、シュテルンビルトを、そこに住む人々を守るために。






ゴーゴーヒーロー!

「ほんっとタイミング悪い時に事件なんて起こして!容赦しないわよ!!」
「あらぁ?今日は荒れてんのねぇ、ブルーローズ」
「べ つ に!?いつも通りよ」
「ハンサムも機嫌悪そうだけど、珍しい事もあるもんね」
「ふん!私本当にあの人受け付けない!」
「・・・・・・・奇遇ですね、僕もですよ」
「・・・!その澄まし顔止めてくんない?早く事件終わらせて、クレープ食べに行きたいの」
「それなら今すぐにでもキューティーエスケープして食べに行ったらどうです?後は僕に任せて」
「くっ・・・本当にむかつく!」
「なんとでもどうぞ」
「・・・をロクに誘えない癖に」
「今聞き捨てならない言葉が聞こえた様な。今、なんて言いました?」
「ふん!さぁね!知らない!」
「・・・・あんた達仲良いわねぇ」
「「良くない!!!」」