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「~~♪ふふ、~~~♪~」 「何を聞いているんですか?」 「・・・・・・・・!」 「バババババーナビーさん・・・・そのこれ・・・・・!」 「どもりすぎですよ、バーナビーです。・・・・なんですか?」 ぱっと目に入る所に彼女が座っていたので、今日もお疲れさまでしたなんて軽い会話でもしようかと寄って行ってみると、 彼女は微妙に鼻歌交じりでリズムを取っていた。 目の前に立てば気が付いた様で、片方のイヤホンを取り、笑顔を僕に向ける。 しかしその後の僕の言葉で、 目の前で赤くなられたのは初めてかもしれない。日本人ってそんなにスキンシップが激しいほうでもないし、 ころころ変わる表情はあまり僕の前では変わる事もないから。 だから一瞬それに驚いて、空間を開けてしまった。 いやでもそれだけに驚いたんじゃない。その驚きは、自分の前に差し出されたのは彼女が今外したイヤホンの片方にとって 変わってしまったからだ。 そのイヤホンをなんでもないかのように受け取って耳へと運ぶと、聞き覚えのある声が流れている。 いや聞き覚えっていうか、僕の声なんですけどね。 なんて冷静に言ってみても、この鼓動の早さは元に戻りそうにない。 彼女を見てみれば、その彼女は恥ずかしそうに口の前に人差し指を持っていき、こう言った。 「虎徹さんには・・・内緒ですよー」 その時僕の鼓動は止まりそうになった。さっきまで元に戻りそうにないなんて思ったのに、急降下である。 ・・・・・・・・なんだそういうこと、なんて、天を色んな意味で仰ぎたくなったものだ。 だってこれ、デュエットだから、そりゃそうですね、おじさんの歌を聞いていたとしても、それは間違いではない。 「これ聞くとすごい仕事頑張ろうって思うんですよね」 「ああ、どうも」 「バーナビーさん?」 「それにしてもCD買ったんですか?あなたが?」 「え、ああ、これロイズさんが是非にって。頂いたものなんです」 にっこりと笑いながら嬉しそうに言う彼女は可愛らしいのだけれど、微妙な気持ちになるのはなんだろうか。 ロイズさん・・・・いつのまに。 まぁ大方、僕たちが書類整理に明け暮れている時に、彼女が来たんだろう。というか書類整理っていうかおじさんの 始末書の処理が大方なのだけれど。 しかしそういうことなら僕のベストアルバム(そんな曲もないし、歌ってもいないが)を渡してくれれば いいのに、なんて心の片隅で考える。 というかこのCDだったら僕のソロも入っているので是非トラック6を聞いてほしいところだ。 「他にはなにが入ってるんですか?七さん、音楽とか聞くんですね」 「ええっと、このミュージックプレイヤー、見てください!!!!!」 「・・・・?なんです?」 青いフォルムの至ってなんでもない普通なミュージックプレイヤーだと思うけれど?なんて疑問が頭に浮かぶが、 彼女の目の輝きを見るに、なにか特別なミュージックプレイヤーなのだろうか。 思案してみるものの、よく分からない。聞いてみれば、彼女はさらに目を輝かせて弾んだ声で答えを教えてくれる。 「これ!!ブルーローズスポンサーのドリンクのシール集めると抽選で、当たるやつなんです!」 「・・・・・・・」 「私、まさか当たるなんて思わなくって、ほんと嬉しくて~ああ~!毎食もやしでしたけど報われました!!」 「・・・・本人に頼めば良かったのでは?あの人ならくれるでしょう」 「・・いや、やっぱりファンならば、自分の力で掴み取るものなんじゃないでしょうか・・・!」 「なるほど、そういうものなんですね、ファンの意地ってやつですか」 「はい。でも当たったものの、CDは持っていなくて、そこで丁度頂いたCDを聞いてるんです」 あとはそのミュージックプレイヤーのボタン部分がブルーローズモチーフだったり、イヤホンの所がバラになってたり、 キラキラしてたりするところが普通とは違うのだという熱が入った説明をそうなんですか、なんて聞きながら、 若干聞き流していたりした。まぁぶっちゃけてしまえば聞いてはいなかった。 というか毎食もやしとか言ったか、この人。こういう不摂生をするヒーローは駄目だと何度も言っているはずなのに彼女の 貧乏暮らしは変わらない。今度食事に誘う口実が出来て、たまにならいいかななんて思ってしまうのだけれど。 多分そう言う事を他のヒーローも考えているから、あまり厳しく言ったりはしないのだろう。あ、おじさんは別だが。 それにしてもほんとブルーローズが好きだな、なんて事は思う。 一応人気はあるはずの僕を放り投げるところは少し 気にくわない。少し、・・・いや大分。 タイガー&バーナビーは人気急上昇なはずなのだが。主に僕が人気なはずなのだが。 この人にはまったくもって当てはまらない所が酷く腹立たしくもあり、それが彼女でもあるのだ。 イライラとする表情をこの人の前では隠せないのも、またイラつく原因になるのだが、それを彼女は分かっていない。 あ!と両手を叩いて何かを思いついた様に、カバンをあさる彼女を見ながら、僕は突っ立ったままだ。 「あ、これよろしければどうぞー!」 「はぁ・・・・どうも」 「炭酸お嫌いでしたか?」 「いえ、別に好きでも嫌いでもないですが」 「良かった!もやしの後はこれでシメですよ!!」 「貴方の食生活が酷く不安になる発言ですね・・・」 そんな事を話していると、プレイヤーは次々とトラックを消化していき、トラック6が表示された。 ぱっと目に入ったそれに、なんともいえない気持ちになる。 聞いてくれとは思ったものの、いざ目の前にして聞かれると複雑だ。 じっとプレイヤーの画面を見つめていた彼女は勢いよく顔を上げて、僕へと話しかけてくる。 「あの、バーナビーさんの歌も素敵ですよね。実はプレイヤーでずっと聞いてるんです・・・」 「ああ・・・・・・・・え、・・・は?」 「あの、何かおかしい事言いました?パワー頂いてます、いやぁやっぱりヒーローって感じでさすがですよね!」 「・・・ありがとうございます」 「なんだか気恥ずかしくて言いにくかったんですけど、バーナビーさんには見つかっちゃったので、暴露してみました」 しかし、たった一言で知らず知らずに微笑んでしまうのも、全部、全部彼女のせいなのだ。悔しい事に。 音符を纏って空を飛ぶ 「今度マネージャーがやりたいって言いだすかもしれないので、勉強にもなりますし~」 「えっ、七さんが歌うんですか!」 「ま、まだ全然企画途中って言ってましたけどね~私としてはないほうがいいんですけど」 ・・・ ・・・・・ ・・・・・・・ 「ちょっとぉおお聞いた!?あの子CD出すかもって!これで四六時中声が聞こえるわ!」 「はっ。僕なんか彼女から直接聞いたんですからね、自分だけが先取りなんて考えないでくださいよ」 「あんた・・・本当に性格悪いわね。でもまぁ、こうと決まったならさっそく出すわよ、ハガキ!!」 「商品企画部って何時まで空いてましたっけ、メール・・・メール・・・・」 「おーい、お前ら・・・・あんまりあいつに迷惑掛けんじゃねぇぞー・・・・夢中で聞いてない、か・・・」 (120217) 今更ですが、デュエットCD聞いたので。 |