※※本編18話のその後のお話です







「だぁあああああああああああああ、アリス!?こ、これはどういうことかしらっ」
「カリーナ、おはよ〜。どうしたの?雑誌凍ってますけど」
「凍らせるわよ!!こんな写真見せられちゃったらね!!」
「あ、今日発売だもんね、カリーナってば買ってくれたの?嬉しい!!」
「そ、そりゃそうよ、もちろん発売日には手に入れる主義だし?アリスキャットの写真集だし」




がっちり凍ってカチカチになっている私の写真集を見やれば、カリーナは氷の形相で 私に詰め寄ってきた。正直カツカツとなるヒールの音が怖い。
そしてちょっと床が凍っているのも怖い。遠慮なく冷却しているが、一体どうしたのか。首を傾げて聞いてみる。



「こ・れ・よ!!これ!どうして」
「あ〜限定版の方の買ってくれたんだ!限定版専用フォトブックだって〜」
「そんなことは知ってるのよ、問題は」
「問題は?」
「なんで、アイツと一緒なのかってこと!しかも近い」
「あいつ?・・・ああ!バーナビーさん?一緒に撮ってくれたんだよ」
「〜〜〜〜〜っ!!ああ!っ、もう!」




何故かあの時の写真は限定版のフォトブックの方に収録されたみたいだ。
バーナビーさんの人気はもはやウナギ登りであるのだし、私というオマケがついているにしろ、 バーナビーさんファンの方はきっとその一枚の写真だけで購入するに違いないと、 ヒーロー事業部でえげつない大人の営業の話をしていたので、たぶんそういう事になったのだろう。
うちの会社ではもちろん私だけの力では写真集が売れたとしても高が知れているという酷い結論が出ているということなんだろうなぁ。 だからバーナビーさんで釣るという・・・ まぁ自分の力が弱いせいでこのような非常に情けない手段に走らなければいけないのだけれど、 本当になんという会社だろうか。良く言えばなんでも利用する柔軟性があると言えるのだけど。
そんな事を考える間にも、カリーナのバシバシバシッと雑誌を叩く手は容赦なく続けられている。
痛くないのかな〜これではせっかくのカリーナの白い手が赤くなってしまう。 私はカリーナの手を取って、落ち着かせてみる。それにしたって美人が怒ると怖いのは本当の事である。私が一番怖いのは怒った時のアニエスさんなのだが。麗しくも恐ろしい美女とはあの方の事をいうのだろう。



「カリーナ、手が痛くなるよ!おちついて」
「・・・・・・・ごめん、つい。だって私、と写真撮ったことないし」
「・・・そうだったっけ?」
「そうよ」



大真面目に頷くカリーナが可愛くて少し吹き出してしまった。
私に対する事でバーナビーさんに張り合うカリーナはかわいすぎる。やっぱりいつもしっかりとして私を引っ張ってくれるカリーナが年相応に見える。 私はじゃあ、と勇気を持って切り出す。



「写真撮ろう?カリーナ!」
「・・・・いいの?」
「えっ、むしろ私の方がいいのかなぁって思ってたよ。だってカリーナアイドルだし」
「ばか!そんなの気にしなくていいんだからっ!と居る時は私だってただのカリーナだもん」




ぽかん、とした顔のカリーナに私が驚いてそう返す。 カリーナは腕を組みながら当たり前よ、と少し拗ねたように、恥ずかしがるようにぷっくりと頬を膨らませた。 顔を背けてしまったカリーナをこちらに向かせるように 私は笑い返して手をぎゅっと握りなおす。
そうするとカリーナはじゃあ一緒にショッピングもしたいし、あと最近できたクレープ屋さんも行きたいし、 あっ、をまたコーディネートするのも楽しいわね! じゃあ決まりね!絶対なんだから、と完璧なウインクを寄こすものだから、私は笑いながら頷いた。
ヒーローであるカリーナももちろん素敵だが、年相応の笑顔を見せるカリーナも変わらず大好きだなぁなんて 思いながら。













笑みはきらりと滲む








(140517)