受け入れてはいない。
受け入れたくはない。
受け入れられてはいない。



その言葉はとても重くて頭からガン、と鉄骨が落ちてきて、それを上から押さえつけている様な そんな圧迫感がある。
強くはないし、強くなれそうにもない。馴染もうとも思わなかったし、馴染めないと思った。 自分がいたあの場所は少なくとも、・・・・かつての私の周りはとても穏やかで平和な世界であったのだから。
受け入れたくないのに、放っておいてほしいのに、周囲は私に迫る。何故、戦わないの?何故、言葉が通じないの? 何故、ここに来たの?何故、帰らないの?
そんなの私だって知らないわよ。そんなの、私が一番知りたいんだってば。
ばか、皆ばか、知らないよそんなの。私の日常を、あの平和な世界を返してくれ。




『おーーーい、Are you ok?』
「・・・・・・・」



その声を耳が拾ってしまった時、叫びそうになったけれど、私死んでもいーやくらいのレベルで戦おうとしていたせいか、 酷く目を開けるのがめんどくさい。 もう周りがどうなったのか、なんて血なまぐさいこの空気の中じゃそんな事を聞くのもめんどくさいくらいに すごい匂いだった。
そんな中で1番死にたがっていた、私は、まだ、生きて・・・・・・・・生きてる。
橙色が目に飛び込んで来た時、それがまぶしすぎて、また私が元いた世界では絶対にありえない色を見て、・・・・・・・まだこの世界にいるんだなと 感じてしまって、本当にやってられない気分になった。また地面にうっつぷして死んでしまいたい。 神様なんて本当に信じられない。死にたかったのだから、あの瞬間を心待ちにしていたのに。なんで、なんで? なんでなんでなんでなんでなんでなんで?



「――――なんで。殺して、くれなかったの、」
『ハイ?オジョーサン?大丈夫?見えてるオレ?おーい』
「・・・・・」
『アンタ、わりとすごいなー。アクマ全部倒しちゃってるし。ま、味方の被害も甚大だけど』
「・・・・・」



からりと落ちる刀に気を取られる事もなく、俯いてぎゅっと地面で拳を握れば、なにかを勘違いしたのだろうか、 その橙色のエクソシストではない、探索班の人がぽん、と肩をたたく。
多分周りには、”皆を守れなかった弱いエクソシストが悔しくて泣いている”とでも思っているのだろうか。 大きな勘違いだ。私の涙は私のものだ。私だけの為に流す。
馬鹿じゃないの、一言目に出た言葉も、今ぽつりと零した言葉も彼らには聞こえない。 私も彼らの言っている事はほんの少ししか分からない。
理解できるのは、エクソシストが言った、大丈夫か?の中学生英語までだ。大丈夫ではない、吐きそうだ。



『オッケーオッケー、まぁこっちがアタリだったのは不幸な事だったけど仕方がないさ』
「・・・・・・」
『アクマもやったみたいだし、本部に報告ー!』
「戻る・・・・・」
『ん?通じてるか?もーどーる!本部に戻るさー』



「・・・」


ぐいっと腕を引かれて持ちあげられて引き摺られるように歩く。
随分と軽い男である。周りには探索班だった奴らの残骸が残っているのに、そんなことは目に入らないのか。 それともそんな光景が、彼にとっては普通になってしまっているのだろうか。恐ろしい事だ。
鉛の様に重い足は思う様には動かず、落した刀は探索班の誰かが拾って私に手渡してくる。 またこの刀を手にする事になるとはね、なんて初めて笑ってしまった。吐き捨てる様な笑みだったことは自分でも 自覚しているけれど、止められなかった。
ため息交じりの乾いた笑いは誰の耳にも届く事はない。またあの暗い”ホーム”と呼ぶ監獄に繋がれるだけなのだから。 前を行く橙色が滲むようにふわりと輪郭をなくす。別に泣いてなんかいない。ただ、実感してしまったのだ。
ここからは逃れられないと。強いられる事が普通になってしまった私の感情は黒く暗く沈んでいく。





「なにが”ホーム”だ。くそくらえ」






全部濁った色になる