居残り?なにそれ、おいしいものですか?私全然わかーんない。 何故私・・・?何故私がこんな目に遭わなければならないのか。 今日も別に普通に過ごしただけだったのに、高校生になったんだしちょっと委員会なんて入ってみようかな、とか思って しかも調子に乗って本当に入っちゃった4月の自分が心底憎い。ああああ、時を遡れるのなら4月の私を殴って やりたい。誰も私を責めるやつはいないだろう、ああいないだろうとも!
あぎゃー!もうこのプリントの束。「これ全部折れよ」と言って今さっきそこの扉から出て行ったうちの部活の顧問の背中に とび蹴りしたい。ちょーっと先生、仲良くなったからって「はやれば出来る子だもんな」 という台詞は卑怯だ!しかもそれと一緒に頭をぽんぽんと叩かれてしまえば先生の罠にはまったも同然だよ。ああ時を遡れたら、そして憎しみだけで すべてが上手くいくようになれたら・・・!机が動くくらいに拳を叩きつけてみる。




「お前、なにしてんだ?」
「・・・!」


勢いあまって立ち上がり、椅子ががたんと音を立てた。 誰もいないはずの教室から声がした。 はっとして視線を移せば今しがた先生が出て行った扉から誰かが入ってきていて、それはユニフォーム姿の阿部だった。 今日は日差しが強かったからか、若干顔が赤くみえる。


それにしたって、何してんだってこっちの台詞だよ。部活はどうした、部活は! ちょっと前に出て行った先生の顔を思い出して、不機嫌そうな声になるのは仕方がないだろう。


「プリント折れって言われてさ、今折ってるとこ」
「ふーん」



興味なさそー(棒読み)まぁね、別に興味もなにもわかないとは思うけど!けどさ!もうちょっとなんかあんじゃん? 普通は!・・・阿部に普通を求めても無駄か。そう思って私は会話を終了させてスカートのしわをぱんぱん、として椅子に座る。 プリントの束からいくと、1時間くらいですべて折りきるだろう。 私は1枚目に手を出した。と同時に目の前の椅子が引かれて阿部がどっかりと座り込んだ。




「は?阿部、部活は?」
「別に」
「別にって何?会話がつながってないんですけどー」
「ああ、もう!いいだろ、プリント折るの手伝う」
「へ?ああ、うん。ありがと」




唐突と言えばもちろん唐突だったが、手伝ってくれるというのだから断れない。いやむしろ歓迎! むしろ阿部の好感度が増した。そうかそうか、意外に優しいところもあるんじゃん。




「ってお前早っ!」
「え?ああうん。バイトでチラシ折りとかやってるからさ、私言っておくけど超プロいよ?」
って不器用そうなのにな」
「一言余計です!てゆうか早く帰りたいから折るんだったら全速力で折って!」




そこから阿部は無言になり、猛烈な勢いでプリントを折り始めた。 いや、別にこれは私が言われたことだからそんな真剣にならなくても、と言いかけたが、阿部のこの行動は そもそもは私が数秒前に発言した内容に沿ったものだ。 というわけで、口出しできない。まぁ本当に早く終わらせたいのは確かだからいいんだけどさ。


その後もくもくとプリントを折り続けたのだが、それでも折り終わったのはもう日も傾いてきて若干 暗くなってきた時だった。先生・・・これ本当に1人でやることになってたら私学校に泊まりこみをしなければいけないところ でしたよ!阿部、感謝!




「さて、プリントも終わったことだし帰るかー。あ、ありがとね阿部」
「おう」
「今度ジュースでもおごる、んじゃねー」
「ちょっと待て!」
「な、何、急に大声出して」
「送るから、待ってろ」
「へ?」




何を言い出すんだいきなり。プリント手伝ってもらっておいてなんだけど、私阿部と話した記憶とかがあまり ないんだけど、何このいきなりのコミュニケーションは!




「お前が早く折れって言ったから、やったんだろ?」
「それと今の発言のどこに関連性があるんでしょうか?」
「だーかーらー、あー、」




阿部にしては珍しく歯切れの悪い言葉が口から出る。一体どうしたと言うのだ。 そういえばキャッチャーだっていうのをクラスの女子から聞いたことがある。キャッチャーって 頭の回転とかよくなきゃ駄目なんじゃないの?しっかりしろよ!




「一緒に帰りたかったから、手伝ったんだよ!」




叫ぶように言われたその言葉のおかげでいろいろ考えていた私の頭の中身はすべてふっとんでしまった!








青少年の思考回路
「お前・・本当にこの道帰ろうとしてたのかよ・・・」
「え?なんで、フツーじゃない?」
「だってこんな田舎だとは思わなかったんだよ!街頭もない道歩くな!」
「悪かったわねー!どーせ私自販機でジュース買ったこともない田舎者よ!」
「そういうんじゃなくて、心配になるだろ!」
「心配?なんで阿部に心配されなきゃいけないのよ・・・」
「(わかれよ!)」