わりと俺の朝ははやい。 身支度整えたり、今日の服、ネイル、髪型で考える事が山ほどあるからだ。 ぐーすか寝てるあいつらより早く起きるのはいつもの事だ。だって、1番かっこいい姿 見せたいし。 すべての支度を整えて、皆が寝ているのを見つつ、ワックスで固めた髪をいじりながら1人座って待つ。 そうして1番最初に起きてくるのは、だ。ほわほわとした空気は朝だからか余計に出ている。 間延びした声で目をこすりながら起きてくる。 「おはよ」 「おーはよー」 「ね、!どう?どうどう?」 「どう?って・・・・なにが?ご飯食べいくよー。みんな起こしてー」 ・・・・・反応なし、気合いれて今日はがっつり髪型も服装も整えたのに、まるでスル―。 がっくしと肩を落としてしまいそうになる、けれど、にこり、とゆるく笑うの表情で、まぁいいや なんて考えてしまうのは所詮惚れた弱みってやつだろうか。 すごく頑張ったのに!気が付いてほしい!というのはやはり無理なお話なんだろうか。 しょうわるポケモン、なんて言われてるけど、しょうわるというか、あんまり素直になれないだけなんだけどな。 というかこの人のパーティーのメンバーが特殊な性格の奴がいすぎて霞んでるんだろうけど。つーかメンドクサイやつばっかだし。はぁーあ。 比較的そこまでわがまま言わない俺は、きっと影が薄いに違いない。 や、でも気が付いてもらえなければやっぱ、むかつくし、イライラするけど。でも気が付かないしばーか。 のばか。 「なぁに、チョロネコ拗ねてるの?」 「はぁ?べつに拗ねてない」 「拗ねてるよ。眉間にしわー」 しわをぐいぐいと指の伸ばされるのをうっとおしそうに振り払えれば、は少し眉を下げた。 ・・・・今のもかぁっと顔に血が登るのが分かって、慌てて顔を背けただけなんだよね。彼女が触れた部分が酷く熱い。 チルットのように、すき、ってだいすきって簡単に言えればすっごく楽なんだろうなぁって思うけど、 現実はそんなに甘くはない。 実際はそんなこと口が裂けても言えないし、伝えられそうにもない。せっかく言葉が通じるのだから、 言ってしまえばいいのに、そうできない自分はすごく情けない。 変に聡いところがあるせいで、中途半端に俺のいらだちは伝わってしまう。ふりはらった手はぶらんと して悲しそうだ。 そうゆうとこ見ちゃうと罪悪感が膨れ上がる。一番どうにもならなくって困っているのは俺のほうだというのに。 「じっと見て、どうしたの?」 「・・・・んー・・」 そっぽを向いたものの、ちらちらと見ていたのに気が付いたのだろう、はそう問いかけてくる。だから俺はがんばって目線を合わして見る。がんばってる俺。 いつもはかちりと視線がかみ合っただけでも反射的に首を振ってしまうのに、今日は5秒間頑張った。新記録だ。 じっと見つめてくるその瞳が、俺を貫いていく。 そうしてから、俺の瞳からその熱が伝わってしまいそうで、どうしても見つめ 続ける事が出来ない俺は我慢が足りないのか、なんて思ってしまう。 さっき冷ました熱がまたしても上ってきてしまって、じわりと目尻が熱くなるのを感じる。 「あんまり塗りたくんないほうがかわいいよ」 「っ、」 さっき振り払ったのにもめげずに手を伸ばしてくる。そのまっすぐな行為に俺はドギマギしながら拳を握る。 なんだ気付いてたのか、とかアイメイク濃かったかな、とか色々考えながら先程塗ったピンクの目尻を気にしてみる。 照れるとすこし赤くなる目尻もこれでごまかせるかと思ったのに。ホント上手くいかないもんだ。なにひとつ ままならない事ばかり。 伸ばされたその手の行く末である左目をきゅっと閉じれば、そっと拭われた。彼女の指にピンクが移る。 かわいいなんて目指してないんだっつーの、という言葉は口からは出なかった。ばぁか。 「・・・・・・・・・」 「・・・・・・・ん?なにやってんだ、ムウマージ」 「グラエナ。・・・・あれ」 「おっはよー!なに?こんな所で固まってんの?」 「フローゼル、お前朝からテンション高いな・・・」 「フローゼルがぼくたちと同じとこに、泊まるのめずらしいよねぇ」 「ばっ、チルット、それはどうでもいいでしょーが!」 「あーあ、うるさいの増えたよねぇ」 「・・・・!」 「ん、なんかいい雰囲気だぞ、こりゃやばいな」 「ぎゃーーー!ちゃんが!!!」 「ぼくのちゃんが!!!」 「・・・・!」 「あーこいつら色々こじらせてっから・・・・ムウマージお前も気をつけろよ」 「・・・・うん」 (120905) |