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びし、ばしと容赦ない音が辺りに響く。 犯人はヒーローの必殺技を受けてよろよろと逃げた先が私とバーナビーさんの目の前であった訳で。 それはとても不幸な事だな、と他人事のように考えながらバーナビーさんの蹴りを目の前で拝む。 ずたぼろになった犯人を見て、それから振り返ったバーナビーさんを見て、はっ、とそこで気が付く。 私もヒーローじゃないか! 「わ、私も何か・・!ええと、この辺に・・・!」 「なにしてるんですかっ!?」 「あ、ああ。マネージャーが必殺のもの入れておいてくれるって・・・・!・・・わぁ」 ゆったりとしたドレープの裏をまくってみればそこには、見慣れたものが。 ただし形状がややいつもと違うという事だけが唯一の違和感だけれど。 しかしマネージャーが用意してくれたと言う事はこれを使えと、そういうことなんだろう。 そうなると、私に考えられるこの武器の使い方はただ一つ。 私はドレスの生地裏に縫い付けられているいくつものフォークを手にとって、思いっきり投げた。 そして若干のヘボサイコキネシス。投げる力と若干のコントロールを加えると、それはりっぱな武器になった。 カカカカッと小気味良い音が響いて、犯人の衣服と壁を縫い付ける。 「やった、出来た!!つかまえましたよ!!ね、バーナビーさん!!」 「ええ。はいはい、良かったですね。それにしてもあなたの技、新しいですね、・・・とてつもなく地味ですけど」 「うっ・・・そうですね・・・まぁ私は地味でいいんですよ・・・ええ、地味で・・・」 『アリスキャットこれは地味ですね・・・フォーク投げでしょうか!はい、地味ですが犯人捕獲!200ポイントです!』 「地味って連呼された・・・」 「事実ですから仕方がないでしょう。まぁポイント入って良かったじゃないですか」 「・・・・はい」 少し落ち込んだもののポイントは手に入り、結果として会社のアピールもきっと出来たに違いないとぐっと拳を握る。 するとやけに微笑ましそうな顔をして虎徹さんがこちらへ寄ってきてよしよし良くやった!と頭を撫でてくれる。 ちょっと恥ずかしいけれど、嬉しいものだ。 テレビ中継が終わり、ヒーローたちはスーツを脱ぎ、やれやれと報告書を書きに会社の方へと向かおうとする。 と、唐突に身体が宙に浮いた。ひぃ、と悲鳴を呑みこんで下を見る。 するとそこには私の腰をがっちりと掴んで、ちょうど高い高いの動作をしようとしているスカイハイさんがいた。 というかまぁこんな事をするのはスカイハイさんしかいないんですけどね。どうしてこんなに子ども扱いを されるかがまったくもって理解不能なんだけれど、とりあえず、言いたい事は、声が震えるけれど、こ、こわいの一言だけだ。 KOHであるスカイハイさんが私を落っことすと言う事は万が一にもないと信じたいけれど、とりあえず怖い。 助けを求めようと虎徹さんとバーナビーさんに目をやれば、無理無理といった顔で首を振る2人。おい!たすけて、ヒーロー! 仕方がないので飛びそうな意識を無理矢理繋ぎとめながら、これ以上ないだろうという笑顔を詰め込んだスカイハイさんに 抗議をする。 「ひぃっ、スカッイハイッさんっ!降ろして欲しいのですがっ!」 「何故だい?今回君はとても頑張った、そして頑張った!だから私はとても嬉しい、それ、高い高いスカーイハイ!!」 「うっ、・・・・・ぎゃああああああ・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・そしてキャッチ!どうかな?」 「・・・・・・・・・」 「あの、スカイハイ・・・・?ちょっとショック療法すぎねぇか・・・?」 「七さん、意識失ってませんか?大丈夫ですか、・・・・ああ、大丈夫じゃないようですね」 「バニーそんなしらっとした顔で・・・おい、七?大丈夫か?」 「うう、目が、回る・・・う、」 「大丈夫かい?つい嬉しくて・・・!」 「だぁ、お前の能力は七には弱点になんだから加減してやらねぇと」 「すまない・・そして申し訳ない・・・。アリスくん、大丈夫かい」 「ん、・・・・ええ、まぁ。大丈夫だと・・・そんな心配そうな顔、しないでください」 覗きこんだ顔がちょうど雲に隠されてしまった太陽の様に笑顔が陰り、不安そうな顔になってしまうから、 私はへらりと力を総動員させて笑った。 いつも笑顔な分、不安そうな顔はこちらまでどうにかなってしまいそうな気持ちにさせる。 き、きっとスカイハイさんは私のこの高所恐怖症を治そうとしてくれているに違いない。うん、きっとそう。 笑顔を取り戻してもらう為に、問題ないよとスカイハイさんの手を握れば、ぱあっとスカイハイさんは 笑顔に戻る。・・案外早い復活である。 しかしその後ろにいる2人の視線が痛いと言うのも感じていた。 ちらり、とスカイハイさんを見ても嬉しそうににこにこと笑うばかりで、握った手を離してくれそうにない。 さすがKOHだけある、力が強くて振りほどけそうにない。 もだもだとしていると、スカイハイさんはそのままの体勢で、口を開きこう言った。 「そうか安心した!次は優しくすることにしよう!」 「へ、っ・・・・!ぎゃっ!」 「なっ、ちょ・・!?」 「お、おいスカイハイさーん?おーい?」 思いっきり抱きつかれてそのまま空へと跳ね上がるキングオブヒーロー。 突然の事でなにがなんだか分からずなのは私だけじゃなくて、他の2人も同じ。地上を見下ろせばぽかん、と した様子の2人が見える、見え・・・・え、地上。わた、私空にいる?!また?!うっ、こわい、高い!高、高い高いっ!! 焦って身動きを取ろうとすればそれを遮る様にスカイハイさんは、ぎゅっと私を包み込み耳元で囁いた。 「君の為に飛びたいんだ!そして飛ぼう!」 空を掌握しましょうか? (110612) |