「なにそれ、いつから?!」 「ええと、多分なんだけどね、つい最近かな。その、私の気のせいかもしれないけど・・・」 「ストーカーってそれヤバいわよ?誰かに相談とかしたの?」 「ううん、みんなが初めて・・・というかストーカーなの?これ?」 「いつも視線を感じるなんて、そんなのストーカーでしょ?!」 「部屋にいてもなんか視線感じるな―って思うとかそんな感じなんだけどね」 「100パーそれストーカーよ!女の敵!!」 「そうだよ、心配だよ、もしさんがそんな目に遭ってるんなら・・・ボクがやっつけるよ!!」 「ホァンちゃん・・・ありがとう」 「そ、そんなの私だってそうよ!が心配だし・・・」 「カリーナ・・・ありがとう・・・!」 いつものトレーニングをこなした後、ドリンクを飲みながらぽつりと言った言葉は彼女たちにとって聞き捨てならない 事柄であった。その為疲れて息をついていた顔を勢いよく上げて、その言葉を放った本人へと向き直った。 言った本人である私はその勢いに押されて、ためらいがちに頷く。 ホァンちゃんなんて、すでにビリビリと電光が辺りに散らばる様に放っている。 人に話したら、少しは心配ごとも軽くなるなんて、そんな言葉を実感する。現にこの2人はとても 心強い。 ちょっと涙ぐみながらも、笑顔を見せれば、カリーナとホァンちゃんも少し笑顔になったけれど、 その表情には心配の色が強い。 気のせいかもしれないから、と言ったけれど2人は引かない。 するとどこからか話を聞いていたのか、バーナビーさんとネイサンさんが近づいてきた。 腕を組んで、モデル立ちのバーナビーさんは少し呆れたように口を開く。うん、いつもの事ながらクールビューティーな眼差しである。 「誰が貴女の段ボールだらけの部屋を覗くんです?面白くもなんともないじゃないですか」 「ハンサム、乙女の心配をそんな風に言うもんじゃないわよ?1人暮らしだし、そりゃ心配よねぇ?」 「てゆうか、なんであんたがの部屋知ってる訳?」 「前、おじさんと3人で飲んだ時に送って行ったので」 「その節は大変お世話になりました・・・すみません」 「いつもお世話してますけどね」 「なぁに、その顔。まんざらでもないって顔しちゃってぇ!やぁだ、若いわねー!」 「なっ、ちが!違います、呆れていただけです!」 バァンと強く背中をネイサンさんに叩かれたバーナビーさんはむせて前へつんのめったけれど、そこはヒーロー、 踏みとどまってネイサンさんに振りかえって声を荒げている。 そんな2人を見ながら、カリーナはため息をつく。絶対零度のため息と視線ほど怖い物はない。凍りつきそうだ。 「呆れているだけなら、どっか他に行ってくれない?心配じゃないなら別にここにいなくてもいいじゃない」 「まぁまぁ、カリーナ?なかなか素直になれないハンサムの気持ちも考えてあげて」 「貴方は何を言っているんですか!そんなんじゃありません、」 「あれ、みんなで集まって、何してるんだい?」 「・・・・お疲れ様です」 「スカイハイ!折紙さん!」 「いや、今ね、この子がストーカーに遭ってるみたいで心配してたとこ」 「えっ!!ストーカー!?だ、大丈夫なんですか、さん!?」 「うーん、なんかいつも視線を感じててね。ちょっと気になって」 スカイハイさんの後ろにひょっこりといたイワンくんはストーカーの言葉を聞くと、びっくりしたように目を見開いた。 困った様に笑えば、イワンくんの眉が私以上に困った様に下がる。 心配ですね、なんて言って声まで暗くなってしまったイワンくんを、宥めるように私は言う。 「大丈夫、顔出ししている訳じゃないし、多分気のせいだと思うから」 「でも・・・!もし、さんがって考えると怖いです」 「もう折紙さんてば、さんが一番怖がってるんだよ。男なら捕まえてやる!くらいの勢いでいないと!」 「あっ、そ、そうだよね・・・はぁ、僕ってほんと・・・すみません、さん」 「ううん、いいのいいの!こっちこそごめんね」 「そんな、さんが悪い訳じゃないですよ!僕が・・・」 「あーーーーっ、もう!!キリがないでしょ、やめやめ!これ以上うじうじするなら凍らせるわよ、折紙!」 「はっ、はい!!すみません!」 カリーナが叫んでそのやりとりを終了させる。 自分のストーカーがどうのこうので心配を掛けさせてしまったのが心苦しいけれど、そのやりとりに少しほっとする。 その事に少し安堵していると、後ろから身体をがばっと持ち上げられた。 突然の事で慌てふためけば、耳元で溌剌とした声が聞こえた。 「では私がくんを送っていこう!送っていく!」 「へ?は、・・・・え?スカイハイさん?!」 「空からなら安全だろう?ストーカーに遭う事もない!安全だ!」 「ちょっと待ってください、さんは高い所が苦手なんですから、」 「・・・・!」 「・・・なんなんです?」 「いつもそんなの関係ないとばかりに振りまわすのに・・考えてくれてたんだなって」 「ヒーロー活動に影響がありますし・・・。それくらいは僕だって考えてますよ」 ぱぁあっと自分の顔が笑顔になるのが分かる。 いつだって足を引っ張ってしまう私を、フォローしつつ、そう思ってくれていたなんて思いもしなかった。 良かったね、すごく!と言いながら頭を撫でてくれるスカイハイさんにはい!と返事をする。 するとスカイハイさんは、頭を撫でるのは止めずに、少し困った顔をした。 「私の事は名前では呼んでくれないのかい?・・・この前は呼んでくれたのに」 「え!あ、は、はい!すみません、ついついスカイハイさんっていうのが癖になっちゃってて」 「是非、私の事も名前で呼んでほしいな、構わないかい?」 「はい、キースさん」 「あら。なんだかいい雰囲気。アニエスがこだわるのも無理ないわねぇ」 「なっ・・・・!ぼ、僕も・・・」 「折紙さん頑張れ頑張れー」 「パオリン、そのやる気のない応援・・・応援してくれるんじゃなかった?」 「応援と言うか、なんというかボクはそういうのより本人のやる気を引き出す方がいいかなって思ってさ」 「というか空にこだわる必要はないわ。私が家まで行くから。近づく奴はみんな凍らせばいいんだもの」 「過激すぎます。一般市民を危険にさらすヒーローがどこにいるんですか」 カリーナの放った言葉に真っ向から対抗するのはもはや癖なんだろうか、なんて思ってしまうくらいに、 この2人は対立する事が多い。 もうすでに、ストーカーうんぬんよりもどちらが家まで送るか、みたいな問題になっていっているような気がするのは 気のせいじゃない気がする。 この2人気が合うのか、そうじゃないのか良く分からない。似たもの同士だからかもしれないけどね。 そろそろお腹もすいてきたし、バイトの時間も近づいている。ここを出ないと間に合わなくなってしまう。 キースさんの腕から降ろしてもらって、睨みあっている2人を見て微笑む。仲良さそうで楽しそうだなぁ。 じゃあ、そろそろバイト行きます、なんて言ってジムのドアに手を掛ける。 「じゃあ、お先失礼しますねー!また明日よろしくお願いします」 「なっ、ちょ、!」 「さんっ!?」 「お、今帰りか?送ってくぞ〜」 「今日も頑張ったみたいだな、今度メシでも奢ってやる」 「わぁ、本当ですか、ありがとうございます・・・!」 ドアを開けた先に、ちょうどシャワーを浴びて外に出ようとしていた虎徹さんとアントニオさんに出くわす。 何気ない気遣いがとても嬉しいと感じる。それにアントニオさんは色々ご飯とかにも連れて行ってくれるから、 さらに嬉しい。笑顔が止まらないよ・・・!ふふふ、明日からも頑張ろうと素直に思える。 決して肉につられた訳じゃないんだよ、と誰にともなく言い訳をして、私は虎徹さんとアントニオさんの間という、 最高に守られた鉄壁に囲まれつつ、バイトへ向かうのだった。 クローズアップアップ! 「最近視線を感じる?・・・ああ!」 「ああ!ってなんですかその笑顔。まさかなんかマネージャーがやったんじゃ・・・」 「ううん、そういえばHEROTVからヒーロー24時間密着でアリスキャットを特集って言ってたなぁって」 「ま、まさかそれのせいですか!四六時中視線を感じてたのは・・・!なんで言ってくれなかったんですか!」 「自然体のアリスを取りたいってアニエスさんに言われちゃってね。もちろん顔出しはNGにしてもらったから」 「そ、そういう問題じゃないんですよ!もう!!すごい心配しちゃったじゃないですかー!!人騒がせ!!」 「はいはい、今度の特番で流れるから、楽しみにしてなねー!」 「もう!そうやってすぐに流そうとして!!マネージャー!!」 (120119) |