「えっ!いや私そんなの使えないですもん」
「使えないっていってももう企画しちゃったしー、告知しちゃったしー」
「どうしてマネージャーはそう、事後報告ばっかりなんですか!出来る訳ないでしょう!」
「や、だっていつも何使ってるの、ご飯の時」
「箸ですよ、箸!ジャパニーズはみんな箸!ハンバーグもスパゲッティもみんな箸です!まぁ?家で食べた事はないですけど!」
「フォーク使えれば大丈夫でしょ、問題なし、っと」
「いやありありですよ、マネージャー!!」
「なんなの君、意外に心配症なんだなぁ、じゃあアポとっとくから習いに行って、はい決定」
「いつも通り唐突ですね、マネージャー」



・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・



「と言う訳なんです」
「と言う訳なんですか」
「・・・はい・・・あの、すみません、マネージャーがアポとって習いに行ってって言われたんですけど、いや本当にまさか」
「・・・・・・」
「あのどっかの講習受けに行くのかなって思ったんですけど、ちょっと・・・なんか、あはは手違いなんですかね?」
「それで僕なんですか」
「えと・・・・・・はい。多分そうです、すみません。まさか、」
「はぁ」
「すみません!た、多分受講料みたいなやつは振り込まれる?かと思いますので、とりあえず今日は菓子折り持参です!」



ざざざっと、手に提げていた紙袋から菓子折りを出し、唐突に突き出すようにして差し出す。
呆気にとられたというよりは、むしろ呆れたというような表情でメガネをくいっと直すバーナビーさんの表情は 読めない。
怒ってるのかな、いや怒るよね、なんなんだよ。私だったら怒るよ、大切なオフの日に後輩のどうでもいい 指導をしなくちゃいけないなんて、考えただけでもどんよりとしてしまう。すみません、バーナビーさん・・・・。




「この僕直々にということですから、受講料は高いですよ」
「え、・・・・え?いいんですか!?」




差し出した菓子折りが受け取られる。
じっと菓子折りを見つめながらそう言われたので、私の貢物のチョイスが良かったのだろう。 ふふん、これは1日生産限定物の羊羹だからな!!ふふふ、なんて思ってしまって少し思考が飛んでしまったが、 どうやらそこらへんは誤魔化せたようだ。



「こんな突撃してきておいて、今更何を言っているんですか」
「ありがとうございます!すみません、お手数ばかりおかけしてしまって」
「まぁ、任されたということであれば仕方がありません。こうなったら徹底的にたたき込みますよ」
「バーナビーさんてスパルタなんですねぇ。よろしくお願いします!」















そんなこんなで了承されたテーブルマナー講座であったが、 バーナビーさんが最初に予約してくれようとしたレストランは 目玉が飛び出るくらいの格式の高いレストランであったので、私は必死にそれを止め、まだ入りやすいレストランを 指差した。
バーナビーさんは眉を少ししかめたけれど、私の生活レベルに合わせてくれようとしたのか軽いため息をついて、 そこに決めてくれた。

テーブルマナーの練習の食事する事になった私たちは、向かい合って座っていた。
お昼時である為、店内は程良いくらいに賑わっていて、少しアットホームとでもいうのだろうか、そんな 雰囲気に包まれた良いお店だった。


出てくる料理はとてもおいしくて、夢中になって食べている合間を縫うようにバーナビーさんのテーブルマナー 講座がさりげなく飛んでくる。
どうにも美味しい料理を目の前にすると少しだけ我を忘れてしまう。 指摘を受け返事を返すたびにバーナビーさんは何とも言えない表情で私を少しだけ見て、自分の食事に取り掛かる。
まぁ、お前大丈夫なのかよ、みたいな目線である事は間違いない。
そんな事を考えながら、私たちも周りの人と同じように和やかな食事を取っていた時だった。
さん本当にって美味しそうに食べるんですね、とバーナビーさんがナイフとフォークを 置きながらそんな事を言うものだから、私はフォークとナイフをぎゅっと握ったままぽかんとさせた。
一呼吸置いてから私は口を開く。おいしい、もちろんおいしい、口のなかで溶けていくお肉のうまみが いっぱいに広がる。でもそれはやっぱり1人ではないからだ。



「バーナビーさんとだからですよ」
「あ、ええ。そうですか」


柔らかな笑みをたたえていたバーナビーさんを見つめ返して、私はそう言いながらフォークとナイフをもう一度握り直す。
バーナビーさんは私の発言を軽めに流して、ワインに手を付けている。
確かに私は食べる事が好きで、なんでも美味しいと言って食べる事が長所でもある。
でも誰かと食べる食事はそれ以上に美味しいのだ。だから、私がそう言ってもあまり興味のなさそうなバーナビーさんに 分かってもらいたくて、私はもう一度繰り返す。



「はい!バーナビーさんと食べるご飯だからおいしいんです」
「・・・・・それは、どうも」



・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・



こんな面倒な事に、とかどうして僕が、なんて色々と心の中では思いつつも、結局どうしたって彼女に関わっていたいと思ってしまうのは、 やはりそういうことなのかもしれない。そうでなかったらせっかくの休日、こんな事をしているものか。
最後の最後に満面の笑みで微笑まれてしまえば、もう返す言葉などない。
あまりに彼女が純粋な笑顔でそういうものだから、あまりうまい返しが出来ずに、少し固まってしまい、それからぎこちなく 口を開く。
なんなんだろうか、この人。そう言う所も計算なのか?と疑ってしまうほどに、僕の心にまっすぐに飛び込んでくる。
いつもいつも想像の斜め上どころか、どこかぶっとんでるこの人の言動を図ることなどまったくもって出来ない。








予測不可能ダイレクト
「バーナビーさんー!!あの企画好評で終わりましたー!!バーナビーさんのおかげです!」
「あ、ああ、それはよかったですね」
「はい!あ、でも私、頭が着ぐるみなのでご飯食べられないって気が付いて・・・・タイプ2でやったんですよ」
「タイプ2って・・・あのマスクのみのやつですか!」
「ちょっとそれどういうことよ?私聞いてない!」
「カリーナ!おはよー」
「おはよ、ってそうじゃなくて!どういうことよ」
「バーナビーさんが教えてくださったおかげで失敗しなくてすんだっていう話」
「と言う事です、」
「と言う事です、じゃないわよ!!、私とも食事行きましょ、女子会よ女子会!!」
「ふっ、貴女ではなく僕が選ばれたと言う事ですよ」
「うるさい!」
「えっ、いいの・・・!カリーナ・・・!うん、行きたい・・・!」
「っ・・・・!そうときまったら行くわよ!こんな奴に構ってないで!」






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