「あ、カリーナにホァンちゃ、」
「あ、!ちょっと来て!!」
「へ、あのちょ、カリーナさん?」
「いいから、ボクたちちょうどさんを探してたんだよ」
「探してた?なんで?」
「いいからこっち早く来る!」



トレーニングをしようと思って午後からの予定はジムへ向かいそこでの体力作りに集中しようと思ったのだけれど、 そのトレーニングルームまでの道のりでこちらへ向かって走ってくるカリーナとホァンちゃんに出くわした。
挨拶をしてひらひらと手を振ってみたのだが、私と認識した途端、こちらへ猛スピードで駆けてきて、そのまま その腕を取り引っ張られたまま連れ去られていく。
右をカリーナ、左をホァンちゃんに掴まれ、そのまま走らされるも体力がない私はビルの自動ドアをくぐったところで ギブアップを迎えてしまった。ほら・・普段の鍛え方がこの人たちとは違うから・・許して・・・マネージャーに またぐだぐだと言われるかもだけど。これからだから、私の活躍はこれからですから、そこはなんとか許して頂きたい。
するとビルの前に車が止まっていて、窓からはネイサンさんが顔を出した。



「あ〜ら、早かったわね。アンタたち」
「ネイサン!見つけたわよ」
さんも見つけたし出発進行だねっ」
「へ?あ、あの?ちょっと状況がつかめてないんだけど、なんでネイサンさんがここに?」
「話はあと。さ、早く乗って頂戴」
「ハーイ!あっ、ボク隣座るっ!」



後部座席に放り込まれるように入れられて全く状況がつかめていないのだが、何故か皆さん上機嫌である。
ネイサンさんがカリーナが乗り込んだのを見て車を発進させる。
ドライブかなにかだろうか、予想が付かないけれど皆さん楽しそうなので、なにかやるのかな? なんて思いつつ隣に座ったホァンちゃんがウキウキとしている様子を見て和む。 小さくてかわいくてなのに強いなんて凄いなぁ。本当に尊敬してしまう。
って、いやいや、それどころではないのだった。一体全体何をやるのだろう。ネイサンさんに尋ねるのが 1番手っ取り早いかな?なんて思って尋ねてみれば、ネイサンさんは不敵で素敵な笑みを浮かべながら車を走らせる。



「内緒よ。ついてくれば分かるわ」
「え、」



どうにもこうにも答えは教えてくれないらしい。 首を傾げて見てもカリーナには口の前に指を1本置いて内緒のポーズをされてしまった。
これはどこかに着くまで教えないってことだけど。うーむ、本当になんなんだ・・・?
疑問は膨らむばかりだったけれど、隣のホァンちゃんの「ボクお腹すいちゃったなー」という言葉で鞄をあさる。 確かここらへんにお菓子入れてたはず・・・!
探し当てたお菓子をホァンちゃんに差し出せば、輝く目でそれを受け取り頬張るホァンちゃんがいた。
かわいい・・これ限定ボーナス出たから張り切って朝から並んだ超レアものお菓子なのだけれど(「君は頑張る所が ズレ過ぎているのでは?」なんてマネージャーに言われたけども)美味しそうに幸せそうに食べてもらえると本当に あげて良かったな、と微笑ましい気持ちになる。妹がいたらこんな感じなんだろうなぁ。
頭をよしよしと撫でてあげたい。いつも撫でられるのが多いけれどホァンちゃん相手なら許されるだろう、うん。
そう思っているとキキィッとタイヤが音を立てて止まる。ここはネイサンさんのビル・・・だよね。



そのまま連れだされて、ビルの一室まで連れてこられる。
ぽいっと投げ出されて何事だと周りを見回して見ればキラキラと光るドレスやらアクセサリー、綺麗に並べられた靴が ぎっちりと壁やら床に詰まっている。
ネイサンさんとカリーナとホァンちゃんの笑顔が少し怖いんだけど・・・とその迫力に負けて後ずされば、 何時の間に回りこんでいたのか、ホァンちゃんがガシッと肩を掴む。
に、逃げられないってことか・・・ネイサンさんの目がキラリと光る。



「こ、これはもしや・・・」
「そのもしやよ。今度うんと着飾ってって言ってたのアンタ忘れたの?」
「忘れたとは言わせないわよ!」
「ボクはなんか面白そうだから2人に協力するよ!」
「お、面白くなんかないですよっ、いや、私は別に着飾らなくてもいつもヒーロースーツがそんな感じだから別に」
「そんなに嫌がらなくてもいいじゃない、は私たちと一緒に遊ぶの、いや?」
「そんな・・・そんな風に言われちゃったら・・・嫌な訳ないじゃ」

「じゃあ大丈夫よね、さぁやるわよ」
「うん、腕がなるわね」
「ええーーー!変わり身早ッ!」
「まぁまぁ、ネイサンもカリーナも、もちろんボクも!さんの着飾ったとこ見たいんだよー」
「そうよ、アンタヒーロースーツ以外はジャージみたいなそんな変な格好しかしないじゃない」
「う・・・うう・・・・」



そんなキラキラした瞳をこちらへ向けないでーなんて思ったけれどそんな心の叫びはいともたやすくポイッと 放り投げられてしまった。
今日はジャージじゃなくて簡単なTシャツとスカートだったのだけれど、まぁ、それは容赦なくはぎ取られ、 その代わりにすごく可愛い、それでいて上品なワンピースを合わせられる。 かと思いきや、綺麗な色のドレスを合わせられ、これでもないあれでもないと着せ替え人形になってしまっている。
いつものヒーロースーツがかなりヒーロースーツ開発室の人達の趣味に走っている事を考えれば、 違和感や抵抗などを感じずに着る事が出来た。 慣れって怖いね、あのヒーロースーツ、最初に見た時はすっごく抵抗を感じたんだけどなぁ。
ただヒーローしているわけでもないのにこうやってバッチリ決めて、ワンピースやら化粧やら髪やらをいじってもらうのは 少し気恥ずかしい気もしてしまうのだけど。
私にぽんぽんとチークを乗せてくれたカリーナは満面の笑みを浮かべながらバッチリとウインクを決めた。 どうやら仕上げも終了したようだ。


「うん!いい!可愛いわよ、!」
「あ、ありがと・・・!変じゃない?これ!?大丈夫かなぁ。あ、ホァンちゃんもやってもらったんだね、かわいい!」
「ボク少し恥ずかしいけど・・でも皆とおそろいだし、折角だからって」
「アンタたち、可愛く出来あがったじゃない!」
「ネイサンの見立てに間違いはないわね、さっすが〜」
「うんうん、凄いよね」
「ご満足頂けた所で、じゃあ次に行動するわよ」
「・・・・・え、うん?こ、この格好でどこか行くんですか・・・っ!」
「あたりまえじゃない、見せびらかさなくてどーするのよ」
「早く乗んなさい、出発するわよぉ」
「ねぇ、食べ物あるかな?ボク肉まん食べたい・・・!」
「せっかくだから皆、誘って行くわよぉー」
「「おー!!」」
「お、おー・・・・?」

















ジムに他のヒーローの皆も集まっていると言う事で、ネイサンさんの車はそのままジムへと逆戻りし、 早々と到着してしまった。
こわごわと歩いていればホァンちゃんに 笑われてしまったけれど、カリーナが強引に腕を抱いてそのまま引き摺られるようにして歩かせるもの だから、反論の余地もない。というかヒールが今までに履いた事のないような高さで酷く不安定です、これ大丈夫かな。




「ちょっと、なんでそんなにへっぴり腰なのよ、
「だ、だだってカリーナ・・・!これヒール高すぎて怖いんだよー。足くじいちゃいそうで」
「私のヒーロースーツの時のブーツのヒールより低いんだけど・・・・」
「いつもぺったんこ靴だから慣れてなくて・・・!」
「その高さが1番の足が綺麗に見えるのよ、もうすぐ着くから頑張りなさい」
「はーい・・・」



きゅっとカリーナの腕にしがみつけば、カリーナは少しこちらを向いた後、そっぽを向きながら「不安なら掴まってても いいんだからね」なんてお言葉をくれた。有難く頂戴したいところだ。これ。本当に凄いなぁ。
カリーナなんてこんな高いヒールで戦っているとか、凄すぎる。私がこれを履いて戦えなんて言われたら今以上に 使い物にならないだろうことが容易に想像出来てしまう。撃沈だ。

そんな事を思いながら歩いて行けば、前を歩いていたネイサンさんとホァンちゃんが立ち止まる。
どうやらトレーニングルームの前の休憩室のようなスペースに皆がいるらしい。声が聞こえてくる。



「おっなんだなんだー?」
「今日はなにかあるんですか・・・?」
「女子会よ女子会。着飾って来たわよ〜」
「女子会!それは素晴らしいね、実に楽しそうだ!」
「じょ・・女子会ですか・・・なるほど・・・」
「ごはん食べに行こうよー!ごはんごはんー!!」
「だから俺たちを呼んだのか・・・」
「やぁだ、綺麗過ぎて言葉も失くしちゃった?うふ」
「お、おい!触るな!!」
「ドラゴンキッドも可愛いなー!ネイサンにやってもらったのか?」
「え、あ、うん・・ボク変じゃないかな?」
「かわいいぞー!」
「ホント・・・?!ありがとう、タイガ―!」
「あれ?あとの2人はどうしたんだい?」

「ちゃんといるわよ」
「おーカリーナ!・・・と?」



どーんと、登場するカリーナの後ろで小さくなる私である。
キースさんのハテナが飛んでいるのが良く分かる。ちょっと今更ながらに恥ずかしくなってしまったのだ。
こんな時に、とばかりに持ってきていたバックの中から簡易式のアリスキャットの猫の着ぐるみを出してさっ、と被る。
「あっ、ちょ、なにやってるのよ、!」なんてカリーナの焦った声が隣から聞こえた様な気がするけれどそれは スル―したいところである。
しかしこの着ぐるみを被ってしまえば、わりとどんなものを来ていても恥ずかしくない様な気になってくるのは、これは 職業病というやつなのだろうか、逆に心配になっては来るものの、どうしようもない。
しかしいつまでもカリーナの後ろにいる訳にも行かないので、そっと横へずれて、皆さんの前へと出る。



「こんにちは、みなさん」
「あー・・その、なんだ?は出動命令でも出たのか・・・・?」
「そんな訳ないでしょう、」
!なんで被っちゃうのよ」
「だって恥ずかしいじゃないですかーいつも適当な格好してますし!急にこんな・・・」
「着ぐるみ姿のくんも、もちろん可愛らしいけど、私は君の顔も見てみたいと思う!」
「おおー・・・やるわねぇ、アンタ」
「さ、さささすが、スカイハイさん・・・!」
「え?なにがだい?」
「ネイサン、こいつにそんなの分かるワケないだろーが」
「え?・・・え?」
「あーあとで説明してやる」




きょろ、きょろと首を振るキースさんが可愛かったけれど、キースさんの言葉はいつも直球すぎて、 私の心臓には毒だ。本人はその直球すぎる言葉に気が付いていないみたいだけれど、これ、普通の女の子が 聞いたら勘違いしてしまうのではーなんて余計な心配までしてしまう。
カリーナのふくれっ面と、どこか犬を思わせるようなキースさんの表情に負けて、私はしぶしぶ 着ぐるみを外す。
いじってもらった髪の毛がくしゃっとした様な気がしますが、まぁ気にしない。
それにしたって反応が怖い。しん、としてしまった空気がどうにも苦手で、あれである。 着ぐるみを胸の前で握りしめて反応を伺う様に、目線を上げる。




「・・・・っ!!!」
「可愛いよ、とても!可愛い!!」
「えっ、ありがとうござ、ぎゃあーーーーー!!!!」
「キースさん!!!!」
「ちょ、!?」




目線を上げた先に待ちかまえていたのはキラキラとした瞳を持つキースさんで、 目が合った瞬間に突撃されて抱えあげられる。 久々だ、この浮遊感・・・なんて久しぶりな感覚。
・・・なんて思いをはせる間もなくくるくると 空中で振りまわされる。ひぃい。キースさんやっぱり恐ろしー・・!
ぎゅうと肩に回した腕に力が入る。この感覚には何時まで経っても慣れそうにない。 そう思っていると下の方から声が聞こえてくる。ホァンちゃんとカリーナの叫ぶ声だけが頼りだ。
そうだゆっくりと下に降りるんだ、キースさん・・・!そうゆっくりと!
しかしその願いはいつだって叶えられる事はない。分かっている。目を固く瞑って来る衝動に備える。



「こらー!そろそろを返してよ!」
「もー!スカイハイ!さんを連れて言っちゃ駄目って前も言ったじゃん!」
「は!すまない、つい身体が動いてしまって・・・っ!」
「ぎゃあああ、キースさんもっ、もっとゆっくり・・・ひぃ!」

「・・・大丈夫ですか?さん?」
「・・・・・・・・・・・ん?う、うん・・・!ありがとうイワンくん」
「バニーちゃん、今日はとことん運悪いっつーかタイミングワリィな」
「おじさんは黙っていてくれませんか」



固く瞑っていた目をそっと開けてみれば、心配そうにこちらを見降ろすイワンくんが見えた。
どうやら受け止めてくれたらしいが、それにしても 高い所はどうにもまだまだ慣れそうにない。
大丈夫だよ、と言って、動く事のない地面の 安定感にそっと息を吐く。バーナビーさんが手を差し出した様な格好で一瞬止まっているのが 見えたけれど、なにをしようとしていたのだろうか。 後ろでカリーナが口の前で手を当てて笑っているのが見える。
疑問を感じつつも、イワンくんはそっと地面へと降ろしてくれる。慣れないヒールなのを 気遣ってくれているのか、ゆっくりと手を貸してくれる。
ありがとう、と言えば、それまでの慣れた様な動作がぎくしゃくとし、白い肌が上気したようにぽっと赤くなり「いえ・・・」と返される。 可愛いなぁ。乙女ではないけど乙女の様な可愛さだ。



「それにしても綺麗にしてもらったな、似合ってるぞ」
「ふふ、本当ですか、アントニオさん」
「やぁだ、照れちゃうわぁ!アタシも着飾ってるのよぉ〜ど〜ぉ?」
「あ、ああ・・・い、いつも通り凄いな」
「うふふ〜」




ネイサンさんにしなだれかかられて、少し驚いた様子のアントニオさんにも褒められて、ついつい 笑顔になってしまう。
現金な事に、たまにはこんな恰好も悪くないかもと思えてしまった。女子としての力はまだまだ全然だけど、でも これからもこんな風に女子会もしてみたいなーなんて思ってしまったのは内緒の話だ。








シンデレラはときたまに
「さーはやくご飯食べにいこっ、さんっ!あっ、髪止めくしゃくしゃになってる!直してあげる!」
「へっ、わっ、ホァンちゃん?!あ、ありがと・・・」
「どういたしまして!さぁ、いこいこー!!レッツゴー!」


「さすが・・・キッド・・・男前・・・・僕も見習わないと・・・」
「ホァン、ナチュラルにをお姫様だっこするなんて・・・・!くっ、さすが稲妻と言われるだけあるわね」
「確かにあの子1番行動派だし、にも懐いてるから仕方ないとはいえ・・・出遅れてるわねぇ・・・」
「な、なんですか、こっち見ないでください」
「や、止めろ、今バニーちゃんは傷心中なんだからなっ」
「なんだと、それは悲しい!元気を出すんだ!ファイト!」
「お前が励ますと余計へこみそうだな・・・」
「貴方達・・・わざとやってますね・・・っ!」
「アンタ達になんか渡すもんですかー!!」






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