「おーいしー!!さっすが、ローエンさんは違うわぁ」 「お褒めにあずかり光栄です。喜んでくれる方がいらっしゃると、なお精進せねばと気合が入りますね、ほほほ」 次の街へ行く途中に休憩を取る事になった私たちは、ローエンさんが淹れてくれたアールグレイを堪能していた。 のだが、行動的な人間が多いこのメンバーはかちゃんとカップを置くと思い思いの場所を探索してくる!と言って 行ってしまった。休憩とか意味がないんじゃ、なんて思ってしまうが、たまに寄り道するのも良い事ですよ、と残された ローエンさんが私にそう言う。 1人残された、私は原っぱの真ん中とはいえ、良い香りが辺りに漂う癒される空間にいたままである。 休憩というからにはこの場所から少しも動きたくないと思ってしまうので、必然的に一緒にいるのはローエンさんになる。 いや、ローエンさんも結構行動的だけどね!けしてお年がどうのとか言ってる訳じゃなくてね・・・! 戦いの末のこの休憩が限りない癒しを提供しているのは、間違いない。 さすがはローエンさん、茶葉のこだわりや、湯の温度は申し分なく、素晴らしい香りを楽しみながらのティータイムは とても心が休まる。だというのに基本的にこだわってお茶を飲む人がパーティメンバーの中にいなかった為、そこまでこの お茶の素晴らしさを実感してくれる人がいなかったのだと言う。 まぁ、確かに、あの人たちはそう言う事に頓着しなさそうだし仕方ない事なんだろうけど。 せっかく休憩出来るのに、それをせずに探索とか、やっぱり若いと行動力が違うんだなぁなんて考えてしまう。 その考えを読んだのかローエンさんが苦笑いであなたも十分若いですよ、なんて言ってくるもんだから、 歳はそうかもしれないけれど、パワーが違う、パワーが、と返す。 そんな談笑をローエンとしていると、後ろから私の名前を呼ぶ声が聞こえた。 「・・・っ、〜」 「ーッ!」 「ん?」 振り返ってみれば、駆け寄ってくる足音と、二つの影。 私は飲んでいた途中のカップを置いて、立ち上がりそちらへと身体を向ける。 スカートの裾がひらひら、足音がぱたぱたとこれまたいつも通りに可愛らしいエリーゼがこちらへ走り寄って来た。 あと少しというところで、小さな石に躓いたかで、私の腰へと思いっきりダイブする。 「大丈夫?」と聞くと、真っ赤になりながらも大丈夫だと小さく返してくれる。 ゆっくりとした動作で私から離れると、エリーゼは俯いたままの状態でなにやらもじもじしている。 私は腰を落とし、エリーゼと目線を合わせる。ティポが乗り出してくるのをはいはい、と手で止めると、 ティポはいじけた様子で、エリーゼの後ろへと回った。 もう少しかな?なんてエリーゼの様子を伺えば、エリーゼはすぅ、と息を吸ってから、後ろ手に回していた手を 勢いよく私に向かって突き出す。 「ッ・・・これ!あの、あげます!」 「エリーが一生懸命つくったんだよねー」 「ティポ!言わないで・・・恥ずかしい・・・!」 「?」 「ミラたちと散歩していたら可愛いお花がいっぱいあって・・・それで、」 「それで花冠作ってくれたんだね」 「は、はい・・・あの、受け取って・・くれますか?」 「わぁ、かわいいね!これ本当に私がもらっちゃってもいいの?」 「はいっ、の為に作ったので・・・!」 「良かったね〜エリー、が受け取ってくれないんじゃないかって心配してたもんねー」 ふわふわと浮かびながらそういうティポにもう!っとエリーゼが拳を握りながらティポ!言わないでっ!なんて 反論する。 この2人?の掛け合いは本当に可愛い。 それをにこにこと見守るローエンさんと私である。 そのまま、その雰囲気に和んでいると、、頭下げてくださいと、遠慮がちにエリーゼに言われたので、その言葉に 素直に従って、頭を下にすれば、ふわっとした感触と、良い香りに包まれる。 目を瞬かせれば、目の前のエリーゼが可憐な笑みを浮かべて手を合わせる。 「わぁっ、、かわいいですっ、素敵です」 「ほんとは何でも似合うからいいよねー!」 「そう、かな?」 「とてもお似合いですよ、さん」 「ローエンさんまで・・・」 本当はそうやって笑っているエリーゼが一番可愛くて、可憐なんだけど!とか思ってしまうけれど。 そうやって笑ってくれるのは、私がエリーゼの要望に応えたからであって、と考えると、まぁ、こんな可愛らしい ものを頭につけてもいいかな、なんて思ってしまう。 そう思っていると散歩と言う名の探索を終えたのだろう、ジュードがひょっこり茂みから顔を出して戻って来た。 まだミラやレイア、アルヴィンは一緒に戻ってきてはいないみたいだ。 ジュードは私の頭に目をやると、にっこりと笑って口を開いた。 「あれ、。エリーゼからもらったんだね」 「ジュード!花冠、は喜んでくれました・・・!」 「そう、良かったね。頑張って教えた甲斐があったよ」 「はい・・・!ありがとうございます」 「ジュードは本当に器用だね〜。尊敬しちゃう」 「そんな事ないよ、普通だよ、普通」 ははは、と笑う、ジュードは私より随分年下のはずなのに、料理も応急処置も出来てしまう素晴らしいお嫁さん属性を持つ少年だ。 つくづくこのパーティメンバーは性格が逆転しているような気がする。 特にミラの男前度はここで語りつくせる代物ではない。 かっこいい・・・!といつも目をキラキラさせてしまうのは、私と、レイアとエリーゼである。 行動がかっこいいんだよね、ミラの場合は。 おっと話がずれにずれた。にこにこと笑うエリーゼは可愛いけれど、ここにあの花冠を乗せたらきっと100倍可愛くなって しまうに違いない。そこで私はエリーゼに提案をする。 「もしよければ、私にも花冠教えて欲しいなぁ」 「えっ、も作りますか?」 「うん、作ってみたい」 「簡単だし、にもすぐ作れちゃうと思うよ」 「ジュード!には私から教えてもいいです、か?」 「もちろん。に教えてあげて、エリーゼ」 「はいっ!」 「わーいわーい!!エリーはの先生だ〜」 じゃあ、こっちにかわいいお花いっぱいあります!とやる気まんまんといった様子でエリーゼは私の手を引っ張って、 さっきジュードが出てきた辺りの茂みをくぐる。 すると、少し開けた場所に小さな、花冠を作るにはぴったりの、花が咲き乱れていた。 そこにたどり着くと、いいですか?とエリーゼが少し胸を張って、花冠の説明を始めた。 うんうん、と頷きながらエリーゼの指示に従って、花冠を作っていくと、ピンク系でまとめた花冠が出来た。 わぁ、上手です、・・!なんて褒めてくれるエリーゼを手招きで近くまで呼ぶと、その頭に出来たばかりの 花冠を乗せる。うん、思った通り可愛い。思わず頬が緩んでだらしのない笑みが広がってしまう。 「かーわいい、エリーゼ」 「なっ、かわ、かわいくなんか・・!」 「んーん、かわいいよ、エリーゼ。ねっティポ」 「うんー!良かったね―エリー!」 かぁあっと頬を染める様を可愛いと言わずしてなんというか! 小さな小粒のピンクのお花達で形成された花冠はとってもエリーゼの雰囲気と合っていて、とてつもなく可愛い!! にこにこと笑いかければ、エリーゼも照れ顔から笑顔になって、手を握ってくれる。 「私と、、お揃いですね・・・嬉しいです!」 「あ、ほんと。そうだね、嬉しいね」 「おそろい!!エリーとはおそろーい!」 「あ、ティポにも、ほら。はい!」 「―!!ありがとー!大好き〜!」 かわいいこそ至福 「はーぁ、いいねぇ、癒しだねぇ。若いっていいねぇ」 「アルヴィン、そういうのをジジくさいと言うのではないか?」 「ミラ様、酷い!そういうのはっきり言わないでくんない?いくら俺でも傷つくんだけど」 「ふむ、そうか。ではこんな所で覗き見るのは止めた方がいい。あらぬ誤解を生むぞ」 「だっ、な、なんでそうなるかねぇ・・・!」 「ミラ、アルヴィン!なにやって・・・・本当になにやってるの?」 「ほら、さっそくあらぬ誤解を生んだぞ」 「、エリーゼ!ほら、ローエンの所戻るよー!やらしい大人がいるからねー!」 (111007) |