「ふー暑。・・・さすがあの熱く燃えたぎる天下の武田軍。風呂までこんなあっつあつなんてね」








ACT.07









またまたふーっと息を吐きつつゆっくりと湯につかる。なんだこの熱さは。年中43度設定か。
頑固オヤジしか好まないこの高温湯か。あつあつだぞ。 頭がショートするんじゃないの、これ。うわぁ。 みんなこんな熱いのに入ってて茹ダコ状態にならないんだろーか。 実を言うと熱いのが苦手な私は風呂は苦手だったりもする。 でもこんなに動き回って汗も多少なりともかいていると思うし、なによりあの酒臭さだ。 入らないですむわけがないじゃんか、乙女としては臭いがきつすぎる。 いろいろ振り回され動き回り・・・というかあの武田主従組みをどうにかして。 まぁ保護してくれて感謝はしてんだけど、なんだ・・・うん。





「はぁぁあぁああぁあああー」




と言いながらまた熱い湯につかる。
やれやれこの熱い湯は本当にこれが現実なんだと知らせてくれる。(知りたくもないけど) この奇妙な現象はどう解決すればいいのかちっともわからない。ともかくわかるのは、 一応保護されてるからとりあえずは身の危険を感じずに済むこと(一部例外もあるけど) ・・・・もっともどうにかできるとかも考えていないけれど。



風呂の中って特にすることもなくていろいろとりとめのないことを湯の中で考えてしまうのだけれど、
どーして自分がこんなところにタイムとリップしちゃったんだろーか、とか考えても 重要だとは思うこそすれ考えても無駄だと思ったし、 どっかのヒーローみたいに私の助けを待っている人がいるとも考えにくい。
みんな私の力を借りなくても強いし。向こうにしたってそんな使えないヒーローががいた所でお邪魔だろう。 あーあーあのとき同情に駆られて○ボタンおさなきゃここには来ていなかった、とかそういうことも 思ったりするけど。そんなことばっかり考えているようじゃまだまだだ。 せっかく来たんだったら、めいいっぱい楽しまねば!ポジティブ思考が私のモットーだったはずだ。


そう、どっか知らない外国にでも来たと思えばいい。そうだ、会話ができるという点では他の外国の土地より 苦労などはしない。思ったことを伝えればいいだけなのだから。
よかった、ここがアメリカだったりしたら、一生私はそこで無口な女として生きることになる。それはそれでくーるだな! コミュニケーションプリーズと流暢な発音で言われてもはろー、とはーい、とないすとぅーみーとぅー、などの 幼稚園英語ぐらいまでしかわからない私にはかなりの難題だから。(ちょっと自分で言って呆れた)





宿も決まったことだし、お館さまもいい人にちがいないし少なくとも臓器売買とか売り飛ばしとかはなさそう。 この時代なら身売りとかもありえそうだ・・・ま、どうせ高値とかつかないし。 ていうかほんとお館さまは大好きなんだけど。お館さまぁぁああああ!!と叫んでいた幸村の気持ちも少しわかる。 でもあんなふうに我を失ったようにはなりたくないな(本音)






「さてっ、酒臭くなくなったし出るとしますか」




ざぼっと湯から出て脱衣所の方へ歩き出す。
それまではよかったが、すこし頭がくらっとしてなんだか足取りがおぼつかない。 もしかして・・・のぼせたぁ・・・?おおっといかんいかん、せめてぶっ倒れる前に服くらいは着なくては! そんな全裸で発見とかほんと笑えないし。
朦朧とする頭で周りを見回すと、あれ、今まで着てたTシャツと短パンがなーい。(・・・・・) そのかわりそこにはここの時代背景にあった服になっている。まぁ服っていうか着物?浴衣っぽいやつだけど。




「・・・うわ、私のTシャツが、」



そうさ、さっき来る途中に女中さんっいうのか?なんかお手伝いさんとすれ違ったので道を聞いたらわざわざ 案内してくれたんだ。多分私が入った後に置いていってくれたんだろう。 そしてこの時代にTシャツなんてあんびりーばぼーな代物は置いてない。 そんなのおいてあったら余計にのぼせるし!ここはどんな時代だ、と。 そりゃ、汗+酒臭さついたTシャツなんて普通なら着たくないさ!感謝するだろうさ! でも、今この状況で浴衣・・・・きつい。時間かかるよなぁ。

あーもー!ちんたら考えてる暇はないんだっつの!
着るしかないだろ!着るしか!今ならどんな服置いてあっても頑張って着れる気がする。












「とりあえずは良しー、っと」




浴衣ってどうやって着るんだっけ?とか日本人にあるまじき発言をしつつ、 さらにくらくらする頭を必死で騙しつつなんとか着た。あれ、どっちにどっちをいれるんだっけ? 男子と女子でまた違うんだっけ?たしか死人が着る着物はどっちが前だったっけ・・・・・? とかも思ったけどこんな朦朧とした意識の中そんなこと考えられる余裕もあいにく持ってない。 がらりと引き戸を開け、ひやりとする廊下へ足を出した。
うう、このまま廊下にうつぶせになってしまいたい。 が、自分の部屋まで我慢。あと少し。頑張れ自分。←かなり切実










「う、これ、はきっとたどり着く、前に意識失っ、てたお、れ、る、」





気持ち悪さ意識遠のくのがかなりレベルアップしてきた。
そしてこれに浴衣プラスで歩きにくいったらありゃしないよ、もう。 ああ、もうこのままびったーんと行ってしまおうか、そのほうが楽だ。 誰かが拾ってくれて部屋まで送ってはくれないにしろ、人を呼んでくれるだろう。 あ、でもみんな酒でつぶれてるんだったっけ、使えねェー!!!



「部屋まであと、少しっ、」




足もなんだか動きが鈍ってきていたところで、ふ、と顔を上げると 見慣れた変な人影を見つけてとりあえずほっとした。だってあのぽんちょ、ここは暗いから影が出来る。
それが面白い影になってこっちににのびている。 よかったーこれで発見は遅れない、風邪引かない。無事部屋でゆっくり熱を冷ますことが出来る。




「さすけ、」


と、名前を呼んだ瞬間なんの前触れもなく意識はぶっ飛んだ。















しゅたっと音がしてひとつ影が現れて倒れる寸前にふわっとを抱きとめた。
どうやら風呂からなかなか帰ってこないの様子を見に来ていたらしい。
ちなみに武田軍の兵士たちは皆酒に強いためぞくぞくと眠りから覚めている。あんなに飲んでたのに。 もとより酒は水みたいな無茶な事も平気で言えてしまう人ばかりだし。





「うおっ、いきなり倒れるからびっくりしたなぁ、もう。まったくちゃんからは
目が離せないんだから」





そう一人ぐちりながらもその口の端はきゅっと上にあがって微笑みが浮かんでいた。
そしてちゃっかりお姫様抱っこである。





そのあと駆けつけた上司にずるい!某がやる、と連呼されるのは目に見えて分かっていたが、
部屋の都合上旦那の部屋の前を通らなくてはならない。仕事の関係上誰にも見つからず部屋に入る事も 出来ると言えば出来るのだが、なるべく今自分の腕のなかでぐったりしているには負担をかけたくない。
どーせ、見つからず入ったとしてもの部屋に来るのだから、と正々堂々とその部屋を横切った。







のが間違いだった。







「うおおおお?!殿!どうしたでござるかぁー!!」
!しっかりせい!おぬしにはこのわしがついておるぞぉぉぉぉおおおお!!」
「ちょ、うるさいですよ、ちゃんうなされますって!」
「「・・・すまぬ」」
「(まったくうちの上司たちは・・・)」
「佐助、殿は本当に大丈夫なのか?!もしやこのまま目を覚まさないということには・・・」
「だいじょーぶだって旦那、ただのぼせただけみたいだし。すぐに意識も戻ると思うぜ」







見事に見つかり部屋に駆けつけ永遠とわめいている。 すぐに目を覚ます、言ったもののなかなか目を覚まさない。ときおりひどく苦しげに眉をよせては 眉間にしわが出来るくらいの顔を作ったりしているところをみるとうなされているのか。 早く目覚めてくれれば良いんだけど。






「ううー幸村・・・・・」
殿!?某がどうかしたのでござろうか!」←嬉しいようなびっくりしたような
「(旦那の名前・・・?!)(ちゃんが俺じゃない名前を呼んだ・・・!)」←プチショック
「(佐助もだいぶ入れ込んどるようじゃな・・・若いわ!)」←楽しく傍観者






そんなこんなで皆がそれぞれ思っているところにぱちり、と目が開いてが目覚めた。
そして覗き込んでいた幸村の顔を見るなり



「ゆっゆゆ幸村ァ!私の団子なのに!!!!!何とってんだよ!」
「な、団子?!」
「あららー旦那ざんねーん」
「佐助顔近い・・・あんたに何回この言葉を言わなきゃいけないかと思うとほんとため息でるわ」
、目覚めたか」
「え、あ、お、お館さま・・・・!!(きゅん)」
「(え、今ちゃんのほうからきゅんとかいう音が聞こえたような)(嘘だよねまさかね)
「(お館さまもしかして殿のこと、)(いやいやそんなまさか)
「体の方に支障はもうないか」
「はっはい!元気です!」
「ならば良かった。これからは風呂の温度、下げておくからのう」
「あ、ありがとうございます!(きゅんきゅん)」




部下のじとーっとした目線を受けながらもさすが甲斐の虎。
びびることなく颯爽と去って行った。さっきまであんなに動揺していたのに、 ちゃんの前ではいつもかっこよくありたいのか、大将・・・。それは効をなしちゃんは
どこかりんりんとした目で去って行った大将をみている。 え、思わぬところでライバル出現?!隣の旦那はぽかんと口を開けたままだ。



まいったなぁ、ちゃんを運んだの俺なんだけどすっかり大将に手柄とられちゃったよ。