幸村の傷が私に移って、それで今私の腹には傷跡が残っているわけでして、 えーっとつまりそれは私が傷をテレポートしちゃったってこと?! うーわー腹に傷跡。私も腹筋ぐらいは割れてなきゃいけないかな。 ACT.09 「ど、どういうことだ?旦那の傷がちゃんに移動した?!」 「某、何が起こったかさっぱりでござる・・・・!」 私の腹を凝視しながらうなるように言う二人。 そんな見ないでよ、腹筋割れてるわけでもない腹をさ。見せるようなもんじゃないから。 「何でだかわかんないけどちゃんには傷をうつし取ることができるみたいだね」 「あああああ!!!某が殿に傷を・・・!嫁入り前だというのにどう責任を取れば良いか!!」 「そんなことはどうでもいいんだけどさ。幸村もそんな離れて地面に頭擦り付けなくていいから」 「大丈夫、旦那。ちゃんは俺が責任持って嫁にするからさー」 「そうか、それなら安心だ・・・っって佐助ェ!殿はそ、某が・・・!」 「さっきまで緊迫な感じだったのに、なんでこうなるかねぇ」 再びぎゃーぎゃー言い始めた二人を尻目に私はのろのろと考える。 もしや、これが私がこの世界に来た目的?この力を使って誰か困っている人に役立てなさい的な 神のお告げ?それだったら・・・・ 「2人とも何を騒いでおるのじゃ」 「「「お館さま(大将)!」」」 「そ、某が殿を・・・!」 「いーや、旦那悪いけどちゃんは俺が「そんなことじゃないでしょーが!」 「何があったのか話してくれるな、」 「はいっ、お館さま!」 「うう、殿・・・・」 「(本当に大将にちゃんとられるかもねー)」 かくかくじかじかで・・・と私とお館さまが話しこんでいる間、幸村と佐助は珍しく黙っていた。 あーあー、いつも真面目な顔してれば格好良いのにね。そんなの変だけど。 お館さまもいつになく(いつも格好良いけど!)真剣なまなざしで私の話を聞いている。 すべてを話し終えるとお館さまは言った。 「その力はやたら使うでないぞ」 「え、でも」 「確かに使える力ではある。この乱世、そのような力は滅多にあるものではない。 それもが未来から来たということも関係しているのであろう」 「そうでしょうか・・・未来でもこんな力は滅多にありませんけど」 「そうであろうな。だがその力は、おぬしに返ってくるのじゃ」 「私のこの腹にできた傷のことですね」 「そうじゃ、幸村の腹にできた傷がおぬしに移ったということはそれだけの痛みを伴ったのではないか?」 「(うっ、バレてら)・・・・そう、ですね」 「それは真か、殿!!」 「ああ、大丈夫。ただの擦り傷だし、そんなに痛くなかったから」 またしても土下座しようとする幸村に向かって後ろを振り返って大丈夫だから、と軽く言う。 本当に、すまないことを・・・と俯いたまま呟く幸村があまりに真剣な様子だから、私も 少し驚いてしまった。たかが擦り傷なのに。幸村のせいじゃない、と言ってはみるけれど 表情が晴れることはない。まったく変なところでこだわるんだから。 困った困った、と苦笑いを浮かべて助けを求めようと佐助を見ると 佐助もなにか言いた気な顔をこっちに向けてくる。きっといつもあんな軽い感じだけど、 やっぱり佐助も幸村と同じでこの乱世を生きる忍であって、怪我には敏感なんだろう。 純粋に心配してくれているというのが伝わってくる。 目が合って分かってるという意味も含めて軽く頷いてみせる。 お館さまのほうに向き直ってしっかりと目を見て言う。 「大丈夫です。無茶はしない」 「それが良かろうな」 「はい」 お館さまは温かくて、でもどこか燃えるような目をしている。 見つめ合って数秒、お館さまは豪快に笑って私の頭をぐしゃぐしゃ、となでた。 (あら、妄想が本当になっちゃったよ!!) そしてお館さまは後ろに控えている幸村と佐助を見て言った。 「おっと、忘れておったが近々戦をすることとなった」 「(忘れてた?!やけに軽いノリだな、おい!)」 「どことです、大将」 「伊達じゃ」 「伊達政宗殿か!」 「え、なんでそんなキラキラした目?!もしかして好きだったり?!」 「違うよちゃん、旦那と伊達の旦那は好敵手なんだ」 「要するにライバルってことか・・・」 「戦までにもっと鍛えねば!うおおおお、お館さまぁぁああああ!!!」 「まーた始まったよ・・・・」 輝かんばかりの笑顔で言うので、さっきまでの暗かった顔は嘘だったのかと思うほどだ。 でもそれを蒸し返すほど私は馬鹿じゃない。とりあえず、明るい幸村に戻って良かったと 思う。それがたとえ擦り傷なんて目じゃない戦の幕開けだとしても。 信玄とが出て行ったのを確認してから、佐助はうつむき加減の幸村のほうへと 顔を向けて口を開いた。 「旦那、」 「分かっている。殿は守りきる」 「あの力を持ったっていうことはすぐに広がる。それを狙う輩もでてくるかもしれない」 「噂というのは隠していたっていずれは広まるものでござるからな」 「俺も、全力でちゃんを守るつもりだ」 「ああ」 戦ではどうなるか、なんてわかるはずもなく。ただ守りきるという言葉だけがしんとした部屋に響き渡った。 そうしてふたりの覚悟は誰にも聞かれることなく闇へと溶けた。 → |