「な、ならぬならぬ!!女子が戦へ出るなどと・・・!」
「大丈夫、陣のなかでじっとしてるし、けが人をちょびーっと見るだけだから!」
「それに、殿の力は人の傷をうつしとるものではないか!それだと殿が危険だ!」
「だーいじょーぶ!ちょびーっとだけだから!ねっね!!そんなに力は使わないし」




ACT.11



ちゃん、それは俺サマも反対だな。旦那に賛成ー」
「佐助!だいじょうぶだってば!!」
ちゃんの大丈夫は信じられない」
「ぐっ・・・!同じ台詞返してくれちゃって!」



すたっと天井から降りてきたのは佐助。
どうやら一部始終を聞いていたようで、見事に反対してくれた。
なにさ、なにさ!力があればそれを使わないでどうするのよ。 このままじゃずーっと私は武田軍のお荷物ということになってしまう。 別にこっちに来たのは私が来たかったからということじゃないし、私には関係ないと 言ってしまえばそれまでのことなんだろうけど。
でもなぁーだって、来ちゃったんだこの世界に。しかもこんな力があることも分かっちゃったし。 お館さまには使わないって言ったけどやっぱり、うん。使うべきときに使わなくてどうするの私!



、その力武田のために使うと申すのか」
「お館さまぁぁああああ!!!」
「大将!」
「・・・!お館さま・・・」






騒ぎを聞きつけてきたのかお館さまが外にいた。
そうだ、私お館さまにこの力は使わないって約束した。
危ないことはしないって。
それでも力になりたいと思うのは、駄目なんだろうか。



「お館さま、約束破るようなこと言いたくないんです、でも・・・!」
「そうじゃ、約束は約束。そう簡単に破られてしまっては困る」
「でも・・・今は緊急事態です、そうじゃありませんか?!」
「・・・
「勝手なこと言ってるって分かってます。でも武田の人たちを守りたい!」
「大将!ちゃんをどうにか説得してくれ!」
「幸村からもお願い申し上げまする!」
「うむ・・・」
「お願いします、お荷物にはなりたくない・・・!」
「・・・・よかろう、がそこまで言うのだったら」
「お、お館さま?!な、何を・・・!」
「大将!!!」
「お館さま・・・ありがとうございます」
「ただし、何度も言うが危険なことはしない、と約束できるな」
「・・・・はい、」






私の頭に大きな手をのせて、 なぁに、陣にはこの甲斐の虎と呼ばれるわしがおる。伊達の子倅なんぞ蹴散らしてくれるわ! などと明るく笑うお館さま。きっと私を気遣って言葉を掛けてくれているのだろう。
幸村と佐助がお館さまに対して抗議の声をあげているが、一向に掛け合わない。
それどころか、おぬしらはの意思を尊重しないのかと逆に2人を説得してくれた。









殿・・・お館さまはああ言うが、実際心配なのでござる」
「幸村。私はできる限りやることはやりきるタイプなの」
「たいぷ・・・?」
「そういう性格ってこと。私が守られるタイプじゃないことぐらい知ってるでしょ?」
「そ、それはそうだが・・・!」
「なぁに、私のこと信じられないの?」



幸村がそのあと私が一人で団子を食べていると話し掛けてきた。
てっきり団子が欲しくて寄ってきたのだと思ったら、違ったらしい。
不安げな顔なんて幸村にはちっとも似合わないのに、曇らせてしまっているのはやっぱり 私だ。団子を一本差し出しながら私は話を切った。





「もう、何回言わせるの!お館さまもああ言ってたしさ」
「・・・殿の決めたことなら、某が口出しをしてはならぬな・・・」
「そうそう!そうだって!」
「それなら、この幸村全力を挙げて殿をお守りいたす所存!!」
「あ・・・うん。ありがとう・・・・」



熱く拳を握る姿はいつもの幸村で。
ちょっと気恥ずかしくなって俯いて笑ってみれば、幸村の目が見開かれ私の顔を凝視している。 いや・・・そのほうが恥ずかしいんですけど・・・。 なに、ちょっと笑ったことがそんなにも意外か。失礼な奴だな!




殿、普通に笑えたのでござるな」
「何、喧嘩売ってる?殴るよ」
「普段勝ち誇った顔や、怒った顔や、高笑いした顔や無表情しか見たことがなかった・・・!」
「ほんっと失礼な奴だな、幸村って」
「はいはい〜おふたりさーん、そこまでそこまで!」



拳を握って幸村の腹にパンチを一発食らわせてやろうと思っていた私は、 ふいに背中に掛かった重さで狙いを外した。
ふっと後ろを振り返れば、どアップの佐助の顔。相変わらずの飄々とした表情である。 ちょ、重いんだからはやくどいてくれないかな。あと手をさり気なく肩と腰に回すな。



「いったー!ちゃんそんな何も怒んなくてもー」
「佐助・・・・学習しない奴だなーまったくもって」
「それにしてもー・・・ちゃん、本当に無理しないでよ」
「佐助も心配症かー。分かったって、自分のやれるだけのことしかやらないから」
「オレ様を心配させないでくれよー?そんなのは旦那だけで十分だ」
「何?!某がいつ佐助に心配をかけたと言うのだ!」
「いっつもでしょーが!アンタ自分で気付いてなかったとか言うなよ?!」





いつもと変わらないおどけた会話。
そうだ、私はこれを守るために戦に出るんだ。 この変わらない風景を守るために、人を守るために、失いたくないって思う人たちを この世界で見つけたから。 頑張るんだ、私の力で。力が微々たるものだとしても、それでもやれることだけはやろう。 ぎゃいぎゃい騒いでいる二人を見ながら私はごっくんと団子を飲み込んだ。





戦が起きるまであと少し――――。