あれからどうなったかなんて私には分かるはずもない。 だって今、私の目の前に広がるのはテレビ、エアコン、コントローラーが転がった私の部屋なのだから。 どうやら、現代に戻ってきたらしい。あんな絶体絶命状態で。いや、逆に絶体絶命状態だから 戻ってきたのかもしれない。いずれにせよ、この仕組みは良く分からないことばかりだ。 ACT.15 幸村の傷は私が思うよりもずっと深いものだったらしい。ぱーんっと意識が飛んだかと思ったら、 いつのまにやら、私は、私の世界、私の見慣れた部屋へと戻っていた。あれだけ頑張っても、どうやっても 戻れなかったのに、どうしてだろう。 まぁ、あの状態じゃ明らかに足手まといだったから、結果的にはバッチグーなんだろうけど。 そういえば傷は?と疑問に思って そこまで考えてちらり、と腹を見てみると、そこには傷なんて残ってはいなかった。おかしいな、 1回幸村の傷をうつし取ったときには、引っかき傷とはいえ、多少なりとも跡が残っていたのに。 「あれ?」 ふと部屋に掛けてある時計を見ると4時30分を指している。 確か私が家に帰ってきたのって4時頃だったはず。それが日にちが変わったということではない、と するともしかしてこっちの世界では時間がゆっくりとしか進んでいないのだろうか。 耳を澄ましてみると、1階で母さんの怒っている声が聞こえてくる。どうやら私が向こうに行って しまう前となんら変わりない日常が流れていたようだ。 「ってことは、向こうはかなりの月日が過ぎてるんだよね・・・?」 誰も居ない部屋でも独り言は怪しいが、こうでもしないと状況が把握できない。 武田のみんなは無事だろうか?幸村は明智と戦ってどうなったのか。佐助は?敵に囲まれて ・・・とかなっていないだろうか。でもあの2人のことだ、無事だとは思うけど中途半端な所で 離脱した私には知る由もない。やっぱり本音を言ってしまえば・・・少し、心配な気持ちが心の 片隅にある。 自分の身に危険が迫ると、こちらへ帰ってこられる。それが本当に正しいのかは分からないけど、 それでも向こうの様子を見たいと思う気持ちがある。みんなが無事で居てくれるかどうか、 それが頭の中をぐるぐると回る。1度離脱した身で勝手だとは思うけど、でも、 「心配なら、見に行くしかないでしょ、やっぱ」 私は進んで離脱したわけじゃない。願わくば幸村たちと居たかったし、どうにかして切り抜けたかった 状況でもあった。かといってあの場所に残って出来た事といえば、足手まといにならないようにと 行動する事だけだった。しかもその行動のせいで、 幸村にあんな顔をさせてしまった私はあそこへ帰る資格はないのかもしれない。 それでも、やっぱり幸村を怪我させたのは私なのだから、最後まで責任を負うべきだろう。 なにも、責任だけの話ではない。純粋に心配なのだ。幸村や佐助やお館さまが。 戻っても何も出来ないかもしれないけど、戻らずにこのまま後悔するよりはずっといい。 時間は大分経っているはずだから、飛んだら即戦場、という可能性は低いだろう。 向こうへの行き方はもう分かってる。大切なのは踏ん切りだ。そう考えて私は足元に情けなく 転がっているコントローラーを見た。 「なに、いきなりゲームやってって。ねーちゃんも珍しいこと言うもんだねぇ」 「いいから早く!なるべく早くクリア出来るやつ!」 「もーなんなの?早く終わらせる・・・じゃあ、」 「もうこの際誰だっていいよ。ありがと!それだけがおまえのとりえなんだから」 「1言余計だな。ねーちゃんは」 「はいはい、それはもういいから、早く!」 まったくもう、とぶつくさ文句を言いつつもピコピコとこれまた手慣れた手つきで、 どんどんとコントローラーを操作していく。自分でやれれば1番いいけれど、そんなことを していたら、日が暮れて夜になることは確実だ。 それで向こうにようやく飛んだときには2年後とかになっていたら笑えない。 だからそこはゲームの得意なやつに頼むしかない。 ・・・それにしても・・・・。 「ねぇ、その人英語しゃべるの?」 「え、あ、うん。国際人だからね」 「うわ・・・お近づきになりたくねぇ・・・!」 「ねーちゃんの英語出来なさレベルは−100だもんね!」 「嬉しそうに言うな!」 英語を話す人はヤバい。全身から拒絶反応でちゃうし。てか武田の城にこもりきりだったから、 こんなへんてこりんな英語喋る奴がいるってことを知らなかったし! ・・・大丈夫、もし向こうへ行っても外に出なきゃ出会わない!うん、オッケーオッケー! この悪人面は死んでも覚えておこう。 「さくっとクリアー!」 「ごくろーさん。じゃあセーブはやっておくから、外に出て」 「は?どゆこと?わけわからんよ」 「いいからいいから。ほら、また母さんが呼んでるよ」 「うわ、ヤベ、もしかして理科のテストも見つかったか?!」 前回と同じように奴がどたばたと階段を降りていくのを確認してから、私はくるりと画面へと向き直った。 セーブをするために、コントローラーを握り、○ボタンを押していくと、案の定あの日本地図が 映っていた。・・・これでまた30分ほどは戻って来れないだろう。 「ふぅ・・・、覚悟決めた・・・っ!」 そうして私は息を止めてボタンを押した。 部屋が白い光に包まれる。この前と何も変わらない。変わったのは自分の心構えだけ。 待ってろ、今、そっちへ行くから。 → 間章です。またまた飛びます。 |