久々に感じる眩しさに、若干懐かしさを感じつつ私はつぶっていた目をそろりと開けた。 見渡せば、またまた空中。またか、私は空中ブランコ名人とかじゃないので、地面に降り立ちたいの ですが。・・・うん、無理そうだね!うん、分かってたこういうことになるの。


と言う訳で、私はまたしても空から地面へと落っこちたのであった。 ああ、懐かしい感覚。って全然嬉しくないっつーの!





ACT.16






「無事帰還!・・・って、いててて・・・」


じゃんっと効果音が鳴れば最高の帰還となっただろうに、腰にくるこの痛みからはどうやら 逃げられないようだ。強がってはいても、やはりこの衝撃はキツい。腰をさすってどうにか 気分を和らげる。

辺りはうっそうと多い茂る木ばかり。戻ってきたのか?と思うと同時に、みんなは大丈夫かという気持ちが 湧き上がる。ただ、みんなを心配する前にひとつ問題点がある。・・・ここはどこだ。 きょろきょろと辺りを見回してみても、土地どころかこの世界のこともよく知らないので、 さっぱりお手上げ状態だ。なんじゃ、ここは。木ばかりで全く目印もなにもない。 水の音もしないということは、さっきの場所ではないことは確かなのだけれども。 ふむ、と考え込んだその時、私の耳にばたばたと近づく物音がした。



「ゆきむ・・・っ!」
「曲者!曲者!」



期待を込めて私が探す相手の名を言おうとしたが残念ながら違ったようだ。地味に凹む。 しげみの中から現れたのは完璧に武装した、武将である。ぎらりとした目が私の目と重なる。どうやら私は要注意人物らしい。 まぁ、そうですよね、こんな格好の女の子が山の中にいたら警戒もするよな。 ぐいっと槍を突きつけられ、そしてあっという間にホールドアップ。 最初の男の人の上げた声でわらわらと人が集まってくる。みんな黒い服。 情熱の赤い軍団、武田軍とは違う。あちゃー、妙な人たちに見つかっちゃったと手を頭に当てようと するも、即座に動くな!と激しい怒号が飛ぶ。 はいはい、黙ってろっていうんでしょ。でも武将っぽいってことはきっと時代は同じ。 多分、幸村たちのいる世界だ。


「こっちへ来い!抵抗するようなら・・・」
「わかりました、大人しく付いていきます」


私には怪我を治す力はあるとは言っても、所詮戦う力はない。付いていくほかないだろう。 それともなにか、さっきからこの怒鳴ってばっかりのこの人は私が火を噴いたりするとか思ってる のだろうか。ちょっと変わった小娘くらいであったのなら、こんなに警戒はしないはず。 なにか、あったのだろうか。しかしどうすることもできない。とぼとぼと武将の後ろを歩く私の バックミュージックはドナドナだろう。





森が開けた場所まで連れてかれた私が見たものは、黒い武将がわらわらしている所だった。 本陣とかそんなところだろうか。 こんなところから、どうやって逃げればいいんだよ・・・、俯いていると私の前を歩いていた武将が いきなり大きな声を上げた。肩がビクッと上がる。驚かせんなよ、びっくりするだろうが!・・・ そう言いたいが、言えない。こんな状況でそんな事言えるのは馬鹿か勇者だけだ。


「先ほど、こちらに怪しい奴がうろついておりました!」
「・・・ちっ、なんだ小娘か。そこらへんに転がしておけ!」
「はっ!・・おい、お前!こっちへ来い!」


偉そうにしている武将が、そう声を張ると私を連れてきた武将は、 ぐるりと縄を巻きつけた。そして私を隅の方に連れて行きじっとしていろ、 と言い残して行ってしまった。普通そうだよな、私なんか捕まえたってなんの価値もないもんなぁ。 なんだか腰が抜けてしまった。ぺたんと座り込んでいると下っ端の兵士が傍で立ち話をしているのが 聞こえてきた。下っ端なだけあって、装備も安っぽい。あれだ・・・雑魚キャラとかそういう感じの。


「明智さまは大層ご立腹だそうだ・・・」
「あの独眼竜だからな。何をしでかすか分からん。この辺りに潜伏しているのだろう?」
「ああ。早く見つけないと、大変な事になるぞ」
「・・・俺らの命も危ねぇ・・・急げ!」


兵士はがしゃがしゃと武具を鳴らしながら行ってしまった。 明智さま・・・・・ん?!明智?!ま、まさかの明智?!待って、こんなところで座っている場合ではない。 明智とびっくりな再会をしてしまったが最後、ここで会ったが100年目、確実に仕留められるだろう。 だってあの人「楽しいですね・・・ハハハハハ!」とか言ってたし、明らかにヤバい感じだったし。 うはぁ・・・よりにもよって明智軍の真ん中に自ら飛んで入ってしまうとは。なんというアンラッキー。


辺りを見回すと、人はまばら。本当に強そうなナリをしていなくて良かった。 明らかにか弱い女の子だもんな、私!これなら上手くすれば逃げられそうだ。私ってばラッキー。 明智軍はどくがんりゅう?とか言うのを探しているみたいだから、私のことなんか構っている場合では ないのだろう。しかし、怪しいといえば怪しい私を放っておくということは、そのどくがんりゅうは もっと貴重なものか、怪しいものか・・・そんなところだと思う。 ということはなんだ?武田軍との戦闘は終わった後なんだろうか?さまざまなことが頭を巡る。 ううん、今は考えるより、即行動!足を踏ん張って立ち上がり、茂みの方へそろりそろりと歩いていく。


「・・・ん?!お、お前何をしている!」
「・・・げ!まずいっ!」


よし、今だ!とダッシュを駆けようとした時、兵士の1人に見つかってしまった。 人生そうは上手くいかない、まさにそれが実現した瞬間であった。 見つかってしまった以上、もう立ち止まる事は出来ない。足を懸命に動かし、茂みを抜け、 とりあえず前へと進む。縄があるため速度はあまり上がらないが、追いかけている数もわりかし 少ないようだ。ただの小娘な私を捕まえるのには十分すぎる数ではあるが。






逃げる私、追う兵士。どんどんバテていく私とは違い、どんどん近づいてくる兵士は余裕の笑みを 浮かべている。その数多分3、4人。多分、が付くのはそれを確認している暇が無いだけだ。 たかが3、4人だけどされど3、4人。私には逃げる以外、成す術はない。 ヤバい、このままじゃ確実に・・・!ぐっと足に力を入れるも、もうスピードはでない。


諦めそうになった時、人影が私の前に現れた。黒い服。挟み撃ち!もう抵抗できない。 スピードを緩めた私を見て、兵士はますます笑みを深くする。 私の目の前に立つ武将は、諦めて立ち止まった私の腰に手を回したかと思うと、その背に隠すようにして立たせた。 もしかして・・・味方なの?これはどう見ても庇う体勢だ。 その様子を見て、追って来た兵士から笑みが消えた。私の前に立つ武将は大きく手を広げ、刀を 取り出した。


「お前、どういうことだ!そいつをこっちへ渡せ」
「・・・おいおい、こんな小娘1人に翻弄されてどうすんだ?」
「な、なに!?」
「HA!情けねェ面しやがって。俺が根性叩きなおしてやる。アーユーレディ?」


私の耳にはなんか英語っぽいものが聞こえた。 英語っぽいが、いやそんなまさか、この時代に英語なんてあるわけ・・・。 首を振る私の脳裏に、ひらめいた嫌な予感。まさかあいつが使っていたへんてこりんな国際人 じゃないだろうな!?
国際人は私を助けてくれるみたいだが、明らかに相手の兵士は萎縮している。 殺気が辺りを覆う。殺気だけで人を殺せそうだ。


「な、その言い回し・・・!独眼竜か?」
「・・・だったら何だ・・・?」
「そんな、お前は・・・!」
「しっかりしろ!こっちは3人だ、一気にやれば・・・!」
「そ、そうだ、おい!こっちに独眼竜がいるぞ・・・!」
「なんか言ったか?まぁ、待ってはやらないがな!・・・っ!」


一気に間合いをつめて、刀を振るう国際人。もとい独眼竜。これが明智軍の探していたモノ。 3人の兵士はあっという間に地面へと倒れた。流れ出る血が地面へとしみこんでいく。 それを見てここも、また戦場であったということを改めて思い知らされた。
突っ立っていた私の方へ、独眼竜は刀を納めつつ振り向いた。 そこにはにやりと笑う悪人面があった。


「早く逃げろ。こんな場所に居て良い人間じゃ、ないだろ、」
「・・・っ!?」


私の縄を解きながら、ゆっくりと吐き出されるその言葉。 言っていることが良く理解できないままに、じっと彼の顔を見つめる。でもその顔は ああやっぱりあの国際人だ、と同時に、その彼の表情が酷く歪んで見えた。 よく見ると彼の額には冷や汗が滲みでている。これは暑いとかそういう汗じゃない。 黒いと思った服も、黒いんじゃない。そういやテレビの中で見た彼の服は青だった。 ・・・青の服に血が滲んで黒く見えるのだ。




さっきの兵士の呼び声を聞きつけたのか、騒がしくなってきた。このままじゃ2人ともやられるだけだ。 せっかく助けてくれたのに、それではこの人が・・・!


私はぐっと握っていた手をゆっくりと開いた。その力を使う時、相手の傷の部分は輝きをみせる。 いたるところに傷があるのだろう、彼の全身から光が出ている。 よくそんな状態で私を守ろうなんて考えたものだ。見捨てることだって出来たはずなのに。
それなら私は・・・出来る事、私に今出来る事を精一杯やろう。 それが私に与えられた試練であり、やらなきゃいけない事なんだから。私は一歩踏み出した。


「ちっ、さっきの奴の声でここにいることがバレたな。おい・・・お前、なに、してる・・・?」


辺りを見回した独眼竜は、私の行動に言葉を詰まらせた。 ぎゅっと彼の背中に回した手は、彼が大きくて向こう側で結びつく事は無かったけれど、 どうやら効果は発揮したようだ。さぁぁっと傷が私へと流れ込んでくる。これで大丈夫 。私が生き延びるにはそれしかない。生きて、幸村や佐助やお館さまと会うにはこの方法しかない。 それにこの人は大丈夫な気がした。助けてくれたってだけじゃなくて、あとはこの人がなんとかしてくれるだろうという気持ちがあった。
独眼竜はさっきとは違い、焦ったように引き離そうとしていたが、自分に起こった異変に気が付くと その動きを止めた。そして、さっきとは違う強い力で私の肩を持ち、目を見た。


「・・・おい!お前、なにをした?!」
「あー・・・元気になったみたいだね」
「お前の体・・・!俺の傷を・・・?!」


全身が痛い。そして腹部に激痛が走った。しかもこれは彼の傷じゃない。幸村の時の傷だ。 あまりの痛さに立っていられなくなり、その場に崩れ落ちる。 やっぱりあの傷は治っていなかったのか。未来でふさがっていた傷が過去に戻って再度開き始めたという ことなのか?何、もうありえない!このタイミングの悪さ!
独眼竜はなにが起こったのか信じられないといった 表情だ。まぁ数秒前まで、追いかけられていたとはいえ、ピンピンしていた奴が急に血を出して、 倒れたらびっくりもするよね。


冷静に分析しているほど能天気には構えていられなくなったらしい。 血が足りない。目がかすんできた。あーだめだ、こりゃ。さすがに許容範囲外だったか。


「はは、信頼してるよ。どくがんりゅーさん、」




情けないけど、本日2度目のブラックアウトです。
あとどうなるかは目の前の彼に全て任せた。良い方向に行くように祈るしかない。