リリーがそいつに声を掛けると、哀れむように見ていた視線を俺から外して ばっとリリーのほうへ向く。なんだか雰囲気が一気に丸くなったような気がするのは気のせいか?
しかも目がきらきら輝いている。なんか俺の告白の時と態度違わないか?(それはそれでちょっと腹が立つ)



「ええうんそう、そうです!リリー・エヴァンズさん!私、あなたが大好きです!」
「え?」



しかもあろうことかとかいう奴は、リリーに告白しやがった。
俺に告白をしたすぐそのあとで!しかもつい口を滑らせた、という感じで下を向いてしまう。 おい、何度も言うが俺のときと態度違くねぇか? そしてリリーの名前だけは完璧だ。

そしてリリーの方をちらちらと上目遣いをしては様子を窺っている。



「(リリーのやつ、やけに嬉しそう・・・?)」



さっきまで攻撃を食らわそうとしていた奴の顔には見えないほどの笑み。 それはそれでなんだか気味が悪いがかなりの上機嫌ぷりらしい。 それがやけに癪に障った。
「なぁ、」と声を俺が掛けてやってみたが、「何!今忙しいんだけど!」と返された。 ああ、なんかこいつむかつく女だな。



「何だよ、その言い方」
「はぁ?」
「はぁ?じゃねーよ」
「何、あんたは何様ですかー?私のこれからの青春フレンドリー大作戦を海の藻屑に変えるつもり?!」
「(青春フレンドリー大作戦?)・・・名前くらい覚えろ!俺がシリウス・ブラックだ!」



いらいら、とする。腕を組みながら見るが、相手はさしてダメージを受けているわけでもない。 むしろ俺のことはなんとも思ってないように見えるくらいだ。 なにやら向こうは別のことを考えていたようで、なんだか訳のわからないことを言っていたが、 かなりの生意気だ。下級生のくせに。
しかも告白の相手と名前を間違えるなんてありえないだろ、普通。



「え、そうなの?こんにちはー」
「こんちはーってそうじゃないだろ!俺に告白したんじゃないのかよ!」
「あ。・・・・うーん、したした告白した。しましたー。」



しかもさらにありえないことにそうなの?、と名前の確認までとってきやがった。 つられて挨拶をしてしまったが、俺がつっこんでもかなり適当な返事。 自慢じゃないが俺に対してそんな態度をとる奴はこのホグワーツではいない。 「まぁ彼女、人違いで告白してたけどね。ちなみに名前も。ぶっ・・・シリアル・・・!」とジェームズが口をはさむ。
それをまた黙ってろ!と怒鳴って向き直り、そいつの顔を見た。



「あのう、一応お返事だけを報告しておきたいんでー、返事頂けますか?」



は?なにいってんだこいつ、と思いつつ、いるのか?と聞いたらいる、との答え。やっぱり奴も他の女と同じで告白の返事は緊張しているらしい。
変な奴なのに案外弱気じゃねぇか。なんだ。 となればいつものパターンで断って泣かせてやる。 そうしたらこのもやもやしたのも晴れるかもしれない。 ただでさえ今日は朝からウザい女ばかりでほんと気が滅入る。



「はいはい、早く言って」
「悪いが無理だ」
「へ、マジ?」



ありえないって顔してんなー・・・ばっかみてぇ、と俺は嘲る様に笑ってみせる。 さっきまでのんきな顔を装っていたみたいだが、この返事にはさすがに驚いたようだ。 口がぽかんと開いている。さぁこの場の雰囲気に耐え切れず泣いて走り去れ。
そんで二度と俺の前に姿を表すな。ああいらいらする。



「それじゃ、私の告白は断るってこと?」



諦めの悪い奴だな、こいつ。
妙に顔が輝きだしたのが変だとは思ったが、そのままそうだ、と答える。 するとなぜか階段の上の方でかなり大きな舌打ちが聞こえてきて、 ふっと見るとさっき階段の上で微笑んでいた女生徒がいた。いやいやまさか、あんなおしとやかそーな お嬢さまタイプが舌打ちなんてするわけがねぇ。




「(反応がないな・・・ダメージが大きすぎて声もでないか?)」




あまりに相手が長い間静かなので疑問に思って顔を覗き込んでみると、 そいつの顔には涙でもなく怒りでもなくただ笑みがこぼれていた。かなり幸せそうな顔だ。
ただあの舌打ちを聞いた瞬間ちょっと青ざめたような気がするが。



「(・・・どうしてショックを受けてないんだ?)」



俺はそいつの変化のなさを不思議に思った。
てっきりショックを受けて泣くか喚くかすると思ったのだけれど、意外と こいつは根性があるやつなのかもしれない。というか変な奴だ。



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