「だぁーっ!黙れ黙れ黙れーっっ!」

ついに耐え切れなくなったのか叫びだす。
あたりがざわざわとして注目が集まる。無理もない、奇声を発しているのはあの 有名なシリウス・ブラックである。



「おや、僕のリリーに向かってそんな口をきくなんて」
「ジェームズ!!お前だって見ただろ?!あの態度!!」
「見たけどそれが何だって言うんだい?君はの告白を断ったんだし、そんなことは良くあることだろ? 何をそんなに気にすることがあるのかな?」
「大勢の前で振ったらふつーもっと違う態度取るだろ?!それがむかついてるだけで気にしてなんかいねーよ」



苦々しげにそう言いながら、傍にあったチキンを噛み切る。行儀が悪いわ、とリリーが眉を潜めても、 一向に気にしない様子だ。



「これでも飲んで落ち着きなよ」
「さんきゅ、リーマス。・・・・・って甘えッ!!」
「そうかな。おいしいと思うけど」


ろくに中身も確かめずに豪快に勢いに任せて飲んでしまったのが悪かった。
平然とこのなんともいえない甘ったるいものを飲んでいるリーマスを横目で恨めしげに見つつ、 ジェームズから渡されたコーヒーをがぶりと流すようにして飲み干す。
もう一杯飲もうかな、などと言っているリーマスにはリリーも呆れ顔だ。



「何よ、結局のところシリウスも私のが気になってるんじゃない。女の子でこれまで
そんなに固執することなかったし、そんなことは初めてよ」
「はぁ?誰があんなやつの相手なんかするかよ。日本人だから背も低いし顔も地味でぱっとしねーし、 胸も貧相だし。いいとこなんかないだろ」



言い切ってからリリーのほうを向くと「シリウス、それ以上悪口言ったら呪うわよ」と言って、 左手にはあつあつの先ほどのココア。右手には杖を持って戦闘態勢での笑顔。 恐ろしいことこの上ない。ピーターは毎度の事ながら息をひぃ、っと飲んで動かなくなった。 シリウスは、少しはビビりはしたものの負けじと答える。


「そもそもどーして俺が気にしなきゃいけないんだよ?俺とあいつは何の関係もない!」
「とか言って、ずーっと不機嫌じゃない!がシリウスに告白して断ってからのこの2週間。
いつもだったらそんなことは忘れて悪戯の計画でも立てているでしょ?」
「確かにシリウス。君はうわの空のときが多くなってる。いまいち悪戯にも身が入ってないようだし」
「ほら、ポッターもそう言ってるわよ」
「さっきだって僕の渡した甘いココアを見もせずに飲んでしまったし。普段なら絶対飲まないのに」
「そ、そういえば僕の教えてもらった魔法薬の問題、いつもはパーフェクトなのに2問ぐらい間違ってた!」



こめかみに手をあててまた怒鳴ってしまうのを必死に止めようとしていたというのになんだ、この こういうときだけやけによくまとまるチームワークは。とくにリリーとジェームズとか。リリーは嫌っているみたいだが、 なかなかいいカップルではないかと思う。
とにかく、こんなところで何回も声を荒げるわけには行かない。下手に騒いであいつからの視線を感じるのを 避けたいからだ。


「お前等、俺だってぼーっとしたり、うっかりしたり、凡ミスしたりすることはいくらでもあるんだぜ?」
「・・・・まったく、往生際が悪いんだから。いいわ、すぐわかることよ」



どこかの刑事ドラマみたいに台詞を吐き捨ててリリーは朝ごはんにようやく取り掛かる。
それを見て他の3人も朝ごはんに戻る姿勢をみせたのでようやくグリフィンドールのテーブルは、 元の穏やかさを取り戻したのであった。







「それにしてもやっぱりシリウスはのこと何だかんだいって気にしていると思うわ」
「あぁ、そうかもしれないわね」



そっけなくそう返事を返すのはの親友リフィアである。
そっけないのは自分のがリリーの話の大半を占めているからであって、そしてそれがさらにシリウスと なんやかんやあるみたいなことを騒ぎ立てるからに他ならない。
リフィアからみると2人の仲、というよりもまず会話もろくにしていないのにどーしてそこまで話が 飛躍してしまうのだろうか。それだけだ。
こういう類の話になると女の子は無敵である。
おせっかいなことですこと、と皮肉っぽくリフィアは言って紅茶のカップを机へ戻す。
ちなみに中庭でそんな優雅なことをしてしまえるのは彼女ただ1人だけということを一向に
気にしないままである。


「だってあのシリウスが女の子のことでずーっと根に持ってるっておかしいのよ! いつも遊びのようにとっかえひっかえで私の所にシリウス関係の相談者が何人も来るの。 はっきり言ってシリウスはあの中には本当に好きな女の子はいないのよ!」
「そう、それで?」
「それで私は思ったのよ。シリウスはのことを気にしている。ということは そっから恋へと発展させていけばいいってことに!」
「何?リリーは私のをもてあそぶっていうの?そんなの私が許さないわよ。 あの子を泣かせたらどうなるかわかっているんでしょうね」
「あらあら怖いわね。の前でも優しくしてあげればいいのに」
「馬鹿言わないで。あの子にはちょうどいいのよ、これくらいが」
「私だってそりゃをシリウスなんかには渡したくないわ!でもそれをは望んでるっていうんだったら協力するわよ」
がそれを望んでいる、ねぇ・・・」



リリーはそんな会話の中にシリウスとのことをこっそりと聞いたことを思い出していた。



「ねぇ、はどうしてシリウスに告白したの?やっぱり顔がいいから、とか?」

・・・・・

「へ?!あっ、ああシリウスのことね。・・・・あーリリー、そのことは忘れてくれる?」
「(ああ、・・・!思い出したくもないのね!そんなに奴が好きなのね!!)」




にとっては誤解もいいところなのだが、乙女リリーはそんなことはまったく考えてなかった。
「(やっぱり、あんな寂しげな顔をして・・・よほどショックだったんだわ!)」


寂しげな顔というのも、ただ青ざめただけだったりする。
の前では怖かったりなんだったりと優しい態度にはできないリフィアだけど、リリーは
それでもリフィアの時々を見る目や仕草がこのうえなく優しいものであることが分っていた。
リリーがと出会った前も後もそれは変化することもない。
それでも、あのの悲しそうな顔を見たら、解決してあげよう!と思うのが乙女の心ではないか。 それにシリウスもなんだか気にしているようだし、周りが協力すればきっと両想いにだって なれる。そうすればは明るく幸せに楽しく、あんな悲しい顔をしなくなるに違いない。




「と・に・か・く・!私はのために、シリウスのためにも2人をくっつけるわ!」
「本気?」
「本気、ていうかシリウスは今のままじゃ駄目なのよ!」
「・・・じゃ、まずはシリウスを特訓することから始めたら?せいぜい頑張りなさい」
「まずは、ってはシリウスが好きだから告白したじゃないの、あとはシリウスがを好きなんだって 自覚させるだけじゃない」
「・・・そうね」



リフィアの含み笑いが多少引っかかったが、まぁ特に問題はないだろうと流しておくことにする。 そうと決まれば即実行。と行きたいところだけど具体的にどうすればいいのだろう、と考えてみたりする。 特に何をしろ、とか言うわけでもないし恋なんてものはやっかいで、自分の知らないところですでに始まっているときもある。

んーと唸ってみるが、目の前の成績優秀レイブンクローのなかでもさらに天才な彼女はどこ吹く風で 優雅に紅茶を飲むだけである。 どうやら本当に協力してくれなさそう。きっとのためにもなると思うのに。
まぁ、可愛い可愛いが 自分の手から離れていってしまうのはすごく寂しいことだと思うしこれまで可愛がってきた (愛情表現に多少問題があるとしても)リフィアからすれば そんな男は地獄行きなんだろう。
それでも粘ってみてふと目が合った瞬間にどうすればいい?と目で訴えてみると、 呆れたような顔をして言った。



「とりあえず様子を見たら?何か心境の変化でも起こすかもしれないし」
私としてはそんなこと起こって欲しくないし、どうでもいいけどと付け加えるのもわすれない。

「でも、シリウスってほっておいたらやっぱどーでもいいや、とか言いそうなのよね」
「はぁ、もうシリウスのことなんかいいじゃない、大体私は協力しないわよ。 あいつ、の手を無断で握ったし、むしろ縛り首にしてやるわ・・・



地獄に落ちるのは本当っぽい。
なにしろリフィアの顔は黒い笑みでいっぱいだったから。 リリーは青ざめながらも続けた。


「・・・縛り首は死なない程度にしておいてね。じゃさっそく計画をたてなきゃいけないわ!」
「それよりも、」



立ち上がり去ろうとするリリーを引き止め、リフィアはまっすぐリリーの目をみて言う。
この目は彼にとても似ていると思う。ときおりのぞかせるすべてを見透かせてしまいそうな目。 今リフィアの目はそれだ。



「リリーは人のことより自分のこと頑張った方がいいんじゃないの?・・・ポッターとか、ね」
「ポッターは関係ないわよ!!!!」
「そんなこと言ったって。シリウスと仲がいいポッターなら何かしてくれるんじゃない?」
「なっ!ちょ、リフィア!」



最後の台詞を言い放ってリフィアはイスをがたん、と動かして立ち上がりそのまま去っていってしまう。
その後ろ姿に向かって無駄だとは思いながらも叫ぶ。



「協力しろって言うの!?あの男と?!冗談じゃない!!」



ひらひらと手を振って答えるリフィアにリリーは、何を言っても意味がないと思い直した。そして肩の力をふっと抜いて まったくかなわないわね、とあきらめてそっと息を吐いた。しょうがない、女の友情は強いのだ。ちょっとやそっと嫌な男と 組むことになったとしてもそれが何だというのだろう。現にもう覚悟は決めている。


のためだものね・・・・・」




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ほとんどリリーとリフィア編のお話。