窓の外を見れば憎らしいほどの青空である。いっそのこと嵐でも来て欲しいと思ったほどだったが、 やはりそんなわけもなくシリウスの視界には秋空が広がっている。

夏の暑さも少し落ち着いて、なるほど、考え事をするにはもってこいの陽気となった。 いや、別に考え事とかしないけどな。・・・・あー・・・どうしてこんなことになっちまったんだ。 リリーがあのあとまた満面の笑みを浮かべながら「にはシリウスと行ってきてって 言っておいたわよ」と言われ、つい顔をしかめた。
余計なことを・・・と言いかけたが、ふと見たリリーの表情を見て言うのは止めておいた。 何故って、言わない方が懸命だと気付いたからな。俺は、勘はいい方だ。
と、いうわけで今約束の時間の1時間前である。シリウスは寮のベットに寝転びながら考えていた。




「・・・って本当に行くのか?俺が」


声に出してみたが、返事が返ってくる様子はない。そりゃそうか、ジェームズはリリーに まとわりついているに決まってるし、リーマスは図書館、ピーターはレポートの再提出だ(相変わらずだな)
あの時は感情に任せて叫んでしまったが、実際自分はのことがちょーっと気になるだけのことだ。嫌いではないが好きでもないに気持ちが変化 しただけのこと。そしてあの時焦ったのは、 ただちょっとリーマスと行かせるのは嫌だ、と思っただけのことだ。 俺、一体いつまでこの弁解を続けなきゃならないんだ?


があの告白をしたときにはのことはどうでも良いと思っていたのに、なんでだか 廊下ですれ違うたびに、ちょっかいを出したくなる。こう、なんつーか両手がうずうずするんだ! え、俺、今怪しい発言した?まぁいい。それはとりあえず置いておいて。
実際小さな悪戯なら結構な数を仕掛けていた。ジェームズとリーマスは飽きれた顔をしていたけれど あいつ、悪戯をしかけた反応が面白いんだよなー。

でもかえるとへびを入れた箱をプレゼントした時、開けた瞬間ぎゃー!!って叫んで リーマスにしがみついたのは気に食わなかった。かなり腹が立った。 くそう・・・なんでなんでなんでだよ!何が気に食わないのかも良くわからないが、むかついた。 友人に慣れ慣れしくされたから?俺は意外と心が狭い男らしい。って何、俺。

なんであいつのこと思い出してるんだ?そもそも思い出してみろ、を振ったのは俺だ。
あいつは俺のことが好きで、俺はあいつを振って、でも俺はちょっかいを出している。 ・・・・え、何この連鎖。もしかして俺・・・に構ってもらいたいとか思ってたりする? いやいやいや・・・それはないだろ。俺はあれだぜ、シリウス・ブラックだぜ。




わけのわからない理由付けをしてから、シリウスはベットからのそり、と起き上がった。 とりあえず行って見なければわからない。しかし・・・。 再び悩みがいっぱいになっているシリウスの頭に浮かんだのは一つのアイディアだった。











ホグズミードの噴水前。とりあえずは来ていた。約束の時間まであと10分。
日本人の気質なのか、約束の時間の10分前には到着しているのが当たり前となっているが、 こっちでは多少遅れてもみんな構わない、と言った感じである。 最初は戸惑ったもののそんなものか、と割り切ってみればそれまでのことである。

ただリフィアとの待ち合わせには気をつけなければならない。なにしろリフィアは 行く前日まで「なんで私がと行かなくちゃいけないのよ、1人で行けば良いでしょ」と 冷たく突き放すくせに自分がいざ駄目元で待ち合わせ場所に行ってみると ちゃっかり30分前にはいるのだ。
どうして30分前と分かるかというと、たまたま早く到着してしまった時にすでに待っている リフィアの姿を見てしまったからだ。冷たく言いながらも実際の所は 誘いをどうやら嬉しく思ってくれているらしい。ただこれは2年ほどしてようやくわかった事実だ。
腕組みをして仁王立ちのリフィアは怖いが、駆け寄っていくと笑顔を見せてくれるので、 それが見たくて、リフィアより前には待ち合わせ場所には行かないことにしている。 ただ、その笑顔は一瞬で慌てて消されてしまうのが残念だけど。




「でも・・・今回は違うんだよねぇー・・・」


そう、今回の待ち合わせはリフィアじゃない。
ななな、なーんと、あのシリウス・ブラックである。
とは言っても本人から聞いたわけじゃないので 怪しいことこの上なしなのだが。リリーからその話を聞いた時は驚いたと同時にちょっと行く気を なくした。シリウスには悪いが、私はシリウスに良い印象をあまり・・・いや、かなりの確率で 持ってはいない。
それはあの罰ゲーム告白の時のトラウマであるとか、フィルチに 追いかけられてる時におとりにつかわれただとかそんなこともあるのだが、 それが日常化してきていることが原因だ。
前なんて廊下を歩いていたら足引っ掛けられたし。
絶対、シリウスは私のことを快く思っているわけではないに決まっている。なのに なんで待ち合わせにはシリウスが来る、とリリーは言ったんだろう? 普通行きたくないよね。てゆかそもそもシリウスはそれに同意したんだろうか。謎。
私だって変なかかわりあいは持ちたくないけど、そもそも約束破るようなことしたくないし・・・ リリーによろしくねって頼まれちゃったし、リリーの悲しい顔見たくないし・・・・。




むむー、と考えてうなっているうちに約束の時間がきた。 みぎ、ひだり、みぎ。交通安全の基本である左右確認をきょろきょろと必要以上にしてまわりを 見渡してみたが、それらしき人影はまったく現れない。 やっぱ来るわけないよなぁ、とどこかほっとしながら下を向く。 と、ありえないものが私の足元にいた。




「いいいい?犬?!」




黒い大きな犬が私の足元にふんぞり返って座っている。可愛いといえば可愛いと言えるのだろうが、 何しろこいつ、ふてぶてしすぎる。なにもこんな邪魔な所に居座らなくてもいいのに。 驚いて声をあげると、その犬はうるさいな、と言う顔をして私を見上げた。 ・・・なんてふてぶてしい犬。 毛並みは綺麗で賢そうな顔をしているが、ふてぶてしい以外の印象をもてない。 とりあえずその場から右に動いて避けてみる。・・・と犬も右に寄ってきた。




「(ええええ、何!私ですか?!なんなのこの犬ーっ!)」




右にじりじりと動く私。それに習って右に動く犬。
永遠と繰り返して最初の立ち位置に戻った私は、あきらめることにした。 この犬・・・ふてぶてしいうえに、しつこい。口が引きつるのを懸命に堪えてシリウスが来るのを待つ。 あー・・あたしけなげだなぁ・・・。てか早く来いよー・・シリウス・ブラック。
30分以上は待てない、日本人の気質を私は持っているんだ。




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