結局俺の考えたアイディアはこいつのせいで敗れたわけだ。 待ち合わせに犬として行ってみるっていうのはまぁそこそこの性格を掴んだりも できたりするんじゃないか、という安易な考えから来たものだった。 ・・・ちょっと安易過ぎた。 犬だからと向こうは何も考えていないんだろうが、こっちからしたらいきなり顔挟まれたり、 顔を近づけられたり、微笑みかけられたりでてんてこまいだ。 俺、少しガラにもなく照れたりしちまったじゃねーか!ああ、恥ずかしい。 冷静になって考えてみれば、あいつは犬くん、と呼んだりするところで大分変わってるだろう。 普通俺が犬の状態の時はワンちゃんが一般的だ。 なんだ、犬くんって。・・・そんなことはどうでもいいか。今はどうでもいい。 こんな風に行くはずじゃなかったのに。 なんだかリリーの考えた罠にまんまとはまっているような気がする。 俺はもしかしてリリーの考える道を歩んでいるのか?! 今の混乱したような状況に俺を貶めたのは、 俺の顔を覗き込むようにして、囁かれたあの言葉と表情のせいだ。 「心配しなくても犬くんの待ち犬も待っててあげるからさ。きっと私の待ち人の方が遅い だろーし」 へへっと情けない顔で笑われて、無性に寂しく笑うあいつの顔が頭から離れない。 何か言おうと思ったけれど、そういや俺犬だった。犬って不便だったんだな。 言いたいときに喋れねーし。慰められねーし。って、この状況を作ってるのは俺か。 ・・・・俺、一体何がしたいんだ?喋る?慰める?俺が、を? 頭にかーっと血が上って、俺の顔は今きっと真っ赤に違いない。よかった犬の姿で。 そうか、そうだったのか。自分でもよくわかんねーけど。 お昼を買ってくると言って視界から消えたを見たあとで、俺は元の姿に戻ることを決めた。 というわけで今に至る。 冷たい視線。いつまでも続く無言。 「・・・・」 「・・・・(何かリアクション返せよ!)」 内心理不尽なこの要求には素晴らしく良い意味で俺の予想を裏切った。 なんとスタスタと駆け寄ってきたと思ったら、手首を掴み焦る俺をものともせずに頭を思いっきり 引っぱたいた。またしても撃沈な俺。(いってぇえええええ〜っ!!!) 「来ないと思ったから帰ろうとしてたんだけど」 「はぁ?!」 「はぁ?!って何。それこっちの台詞だと思うよ!」 「あーなんだその、悪かったよ」 「・・・・ふー、まぁなんともなかったなら良いけど」 「はい?」 「いやただ、遅いからなんかに巻き込まれたのかなーって思って」 「・・・悪かったな」 「うん?ああまぁこっちも思いっきり引っぱたけてストレスぶっとんだよ」 それはありがとうといえばいいのかどういたしましてといえばいいのか。 思いっきり引っぱたかれた後で言うのもなんだが、は素晴らしく良い笑顔である。 なんだか笑顔がキラキラして見えるぞ。おいおい。 そんなに俺を殴るのが嬉しーか! 「うん!」 即答。このままだと、ずるずるとこの場で座り込んでしまいそうだった。 いや、悪いのは俺だ。俺が試すようなことをしたのが悪かった。 あれ、そういえば、あれこれってもしかしてデートとかになるんじゃねぇの? さっきまではリリーに言われてしぶしぶだったけれど、なんとなくに対する 自分の気持ちを理解してから急に心臓がどきどきいってきた。だぁああああああああ!!!! しずまれ自分、落ち着け!デートなんて何千回もやってきただろ! 気分を変えようと俺はきわめて落ち着いているように見せかけて話を切り出す。 これからどこ行く?なんて問い掛けてみれば大体の女は嬉々として、あそこに行きたいここに 行きたい!なんて言い出して腕でも組んでくるのが定番だ。いや、待て腕・・・俺とが 腕を組む?!うがああああああ!!!!ちょ、心の準備が・・・っ!! そう考えて頭の中爆発寸前の俺に対して、 「・・・あー、あたしホグワーツに帰るね」 「はぁっ?!」 相手はかなり落ち着いていた。俺の、この俺の誘いを断るほどに! next→ ----------------------------------------- |