「あ、それで結局シリウスはを好きだって自覚したわけだ」








俺は顔が引きつるのを必死で我慢した。なぜなら ジェームズが至極嬉しそうな笑みを浮かべたからだ。これは悪戯を考えついたときの笑顔と よく似ている。散々否定してホグズミードに出かけていった俺としてはかなり気まずかったのだが、 このジェームズの笑顔ですべてを理解した。
もしかして俺に自覚させるためにリリーと組んだとか じゃないだろうな・・・。 そんなことはリリーにとホグズミードに行けって言われた時から分かってたけどな!ちょっとやけくそ気味になって きてる、俺。
まぁこいつの場合名前呼んでやるかわりに、協力しろとか言われたら 喜んで従いそうだけどな・・・っていやいや、ジェームズはそんな友情を簡単に裏切るような 奴じゃない!・・・多分。 それ以前になんかこいつ面白がってねぇ?




「そりゃ、面白いに決まってるさ!なんて言ったってあのシリウス・ブラックが恋に落ちるなんてね!」
「心を読むな!・・・散々リリーと共謀しといて、よく言うぜ」
「ああ、あれはリリーがどうしてもっていうから。協力したら僕のこと名前で呼ぶって言ってくれたし」
「そうじゃないかも、とか思った俺が馬鹿だった。お前結局自分のためなんだろーがっ!」
「やだなぁ、シリウスの為に決まってるじゃないか、やだなぁ、はははは!」
「笑顔が嘘くさい」
「シリウス、結局好きになったんだからいいじゃないか。万万歳じゃないか!」
「ま、まぁな・・・」
「ははは!シリウスがをねぇ、ははははは!・・・いたたた!何をするんだ!痛いじゃないか」
「笑顔がむかつく」




あまりに笑い続けるので、どうしようもなくイラついて、ジェームズの頬をぎゅっとつねる。
素直に認めてしまえばこんなものだ。何を今まで意地になっていたのか。 まぁ・・・そりゃ、一度振った相手を好きになる、なんてこと今までになかったからそれは 当然のことかもしれないけど。いや、待て。まずそれ以前に俺は、自分から好きになった女は いなかった気がする。恋愛関係のことでジェームズに話すこともなかった。 何も問題はなかったからだ。相手が俺のことが好き、その法則が必ず当てはまっていた以上 俺はなにも考える必要がなかった。飽きたら別れれば良かったし、悩むことはない。 いつだって主導権を握っていたのは俺だったからだ。


でも今は違う。あいつに、に好かれたいと思っている自分がいる。
からかってたのも、否定しながらも結局ホグズミードに行こうと思った事も、 全てはこれに繋がっていたってことだ。




「だけどちょっとおかしいよね」


いきなり俺の背後のドアが開いて、紅茶片手にリーマスが優雅に入ってきた。 お前いたのかよ、と言いそうになったが、リーマスが気配を殺して入ってくることなんて 今までにもたくさんあったのを思い出して黙る。
大抵リーマスは俺や、ジェームズにとってあまりよくない話をしている時にかぎって 狙ったように部屋に音もなく入ってくる。これは一種の才能だろう。 なんだったか・・・じゃぱにーずにんじゃ?とか言ったか?そんなのになれる気がする。




「そうだね、僕も常々思っていたんだ」
「は?何がだよ」
「・・・まったく、シリウスは鈍いにもほどがあるね。おかしいと思わなかったのかい?」
「・・・おかしい?」
「いい?君は確かにに告白をされたわけだ。しかもあんな公衆の面前で」
「おう」
「でもその後なにもない。それどころかは告白自体なかったようにシリウスに接してる」
「・・・おう」
「シリウス、君も違和感を感じただろう?は告白後1度だって君に媚びる様な態度は取らなかった」
「まぁ、逆にそれが君にとっては良かったのかもしれないけどね。を意識するようになったんだから」




ジェームズはこれまでニヤニヤとしていた笑顔を消して、真剣な顔つきになった。
リーマスもそれに同調するように、真面目な顔だ。ジェームズとリーマスが言うその違和感。 それは俺も感じてはいた。今までの告白後の相手の行動は俺の経験上、 告白の翌日は逃げ去ったりして、気まずい雰囲気が流れる。それか、それとは逆にあきらめずに べったりとくっついて諦めないとか、そういうことが多かった。 どこかで隙とあらば、食らいついて来るようなそんな女の怖さに直面したことも少なくない。 それのどれにもは当てはまらない。告白したことなど微塵にも感じさせない。
おかしい、とは思ったがそういう奴なんだと決め付けてそれから接してきていた。





「違和感を感じるのも無理はないよ。だってシリウス。君がを好きになったのなら、は それを喜んで受け入れるはずだからね」
「でも、断られた挙句、リフィアに良いところを持っていかれたんだって?」
「・・・そうだ」
「いくらが仮に特殊な性格だったとしても、普通好きな人から誘われたら喜ぶ表情くらいは出すさ」
「で?その時はどんな表情だったって?僕、最初からは聞いてないんだ」
「そうだな・・・迷惑そうっていうか、困惑してたっていうかそんな感じだ」
「悪いけどそれ・・・なんとも想われてないっていうか、まぁそんな感じだね」
「むしろマイナスじゃない?」




オブラートに包みもしないリーマスの言葉にずしん、と心にくるものがあったが、そこは堪えて これまであったことをもう一度良く考えてみる。
朝食でカボチャジュースを噴いた時、おとりに使った時、廊下であった時の態度、ホグズミードでの行動・・・。
どれも自惚れているわけではないが、どうみても好きな相手にする行動とは、ずれている気がする。




「そうだ、俺。何度もおかしいと思った事がある」
「じゃあ、その違和感が本当だとするとは・・・・」









「・・・ようやく気付いたってわけ?学年トップ軍団が聞いて呆れるわね」






声が突然俺たち3人に投げかけられた。
驚いて振り返ってみれば、1つの人影。
扉を開けて怯みもせず笑みを浮かべながら入ってきたのは、あのリフィア・シュルツだった。






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