「えっと・・・あの?」
「・・・・・・・」



図書館へ行って勉強でもしようと思った私が悪かったのでしょうか!
現在大変な事になってます。廊下の角を曲がったと思ったら、いきなり壁に押し付けられ、 身動きが取れない状況になってます!・・・ってなんでこんな報道口調なの、私。

至近距離で見つめられるのには慣れてない。
それなのに相手は私の名前を呟いた後、何も反応しないし、ピクリとも動かない。 うう、か、かなり気まずいんですけど・・・近い・・・! それにこの顔・・・どこかで見たことのあるような・・・?かなりの美少女だ。



「あ・・・!そうだ、あなた、えっと、メリエル・・・?」
「メリエル・・・?」



そうだ、この子、ホグズミードに行った時に、話し掛けてきた女の子じゃない?
金髪のショートカットに緑の目。私の名前を知っているようだったし、間違いない。



「ホグズミードで話した時に、自分の名前を叫んで帰って行っちゃったじゃないですか」
「何の話・・・?」
「あんなにつっかかってきてたのに、忘れたんですか?確かにメリエルだって言ってました!」



彼女は相変わらずぼやーっとして、こちらの話を聞いていないかのようだ。前会ったときと、かなりの違いがあるけど、 この顔の造りはそっくりだ。というか本人に違いないよ! しかしその腕からは逃げられない。ううっ、またシリウスの話で怒られるのかな。 本当に私は関係ない話でメリエルが勘違いしてるだけなのに・・・!怖い・・・!シリウス、おのれ・・・!


「何の事だか、全然わからない。しかも俺、メリエルじゃないし」
「え?メリエルですよ、だってこの前も会ったし・・・って俺?!今、俺って?!」
「だから、俺、メリエルじゃないって言って、」
「えええ?!べ、別人?!こんなにそっくりなのに・・・・あ、ご、ごめんなさい!!」
「なんなら男かどうか、調べてみる?」
「え?い、いや、いいです!」



耳元で囁かれた・・・!心臓がどきどきして顔が赤くなっていくのが分かる。 思わず手を顔に当てて熱を冷まそうと無駄な努力をしてみる。
美少女と思っていたら、実は美少年か! ローブで隠れていたから分からなかったけど、よく見たら制服も男物だった。状況が状況だったから、 そんなことも見逃してしまったんだろう。どれだけ焦ってたんだ、私。少し落ち着け。すーはーすーはー、深呼吸!
それにしても本当に綺麗な顔をしている。でもメリエルじゃないとしたら、なんの用があってあたしに 構うんだろう?メリエルはシリウスがらみだったし、えーっとだとすると・・・ リフィアとかリリーとかに用事があるんだろうか?私に用があるとは思えない。



「えっと、とりあえずどちらさまですか?」
「俺?エリオット」
「エ、エリオットさん。あの、私になにか・・・?ていうかなにかしましたか?」
「いや、別に。ただ・・・」



ちらっと視線を外し、廊下の角辺りを見てまた戻ってきたその視線が私とぶつかり合う。 透き通るようなエメラルドグリーンの瞳。・・・あたし、この瞳の色とそっくりな人、知ってる。 メリエルの時には視線も合わせてくれなくて、ちらりとしか見えなかったこの瞳。



「1回会って、確かめたかっただけ」
「・・・もしかして、エリオット・シュルツだったり、する?」
「そうだけど」
「やや、やっぱり・・・・!リフィアの・・・!!」
「そう、リフィアは姉さんだよ。ふーん、あんたがか、写真でしかみたこと無かったけど」
「そっか、写真・・・だから私の事も知ってたのかー」
「姉さん、家に帰るとあんたの話ばっかりしてる」
「え、そうなんだ?へへ、リフィアの弟だもんね。道理で瞳の色と髪の色がそっくりなはずだよ」
「そういうあんたは・・・真っ黒な瞳に真っ黒の髪、か」
「日本人はこれが通常装備なの!そりゃ君みたいな綺麗な色はしてないけど・・・」
「そんなことない。・・・綺麗な色だ」



眩しそうに見つめられたかと思うと、エリオットは私の髪をひとすくいして、まじまじと見た。 混乱して頭が沸騰しそうだ。壁によじ登って逃げたい・・・!綺麗なのはあなたです!と叫びたい気持ちで一杯だ。 しがない島国の人間はこんな過剰なスキンシップに慣れていないんです!てか外国の人ってかなり激しいよね。 手を繋ぐだけでもいっぱいいっぱいな私とは違うよ。 駄目だ、シリウスの時と同じく綺麗な人って目の前にするとやたら焦る!

でも確かにエリオットのこのエメラルドグリーンの瞳、これはリフィアの瞳とそっくりだ。 私の傍で、いつも必ず見守っていてくれている優しい目の色。やっぱこの色は落ち着くなぁ・・・。 動向はリフィアと似ていない様な気がするけど、 その瞳とそっくりってことは、と思って聞いてみたがそのとおりだった。 それにしてもリフィア、弟いたんだ・・・!ていうことはもしかして・・・。



「あの、メリエルさんって・・・リフィアの・・・?」
「妹だよ。あ、来た」
「来た?!来たってなにが・・・?」



ちょ、リフィア・・・!家族構成くらい私に伝えておいてよ!!私リフィアに弟妹がいる事すら 知らなかったよ・・・。
あっさりと驚愕の事実を口にしたかと思ったら、 エリオットはそのまま図書館方向へと首を向ける。見れば、向こう側からすさまじい勢いで誰かが走ってくる。 あれだ、廊下は走っちゃいけないよ、とかそんなもんオール無視!って感じである。

それに、今はた、と気が付いた。誰かが来るのにこの体勢はマズい。リフィアの弟ではあるが、 初対面も初対面それもさっき会ったばかりの人間だ。弁解しようにも話を合わせてくれるかどうか・・・!
しかもこれだけ美形なら、絶対にファンとかいるはずだし!このままではシリウスの時の二の舞だ。 メリエルのような人がいっぱい押し寄せてきたら困る!
焦りで一杯になった私とは逆にエリオットは平然としている。むしろその人物を待っているかのように 見える。ううう、せめてこの手をどけてくれればなぁ・・・! 言い出せない私が憎い・・・!
せめて顔を見られないように俯くが、それは叶わずその顔をぐいっと上げられて、 その人が向かってくる方向に向けられた。・・・エリオット!一体何がしたいんだ!憤る私をなだめるかように、 エリオットは口を開いた。出てきた言葉は、



「ほら、あれ。メリエルだよ」
「え?メリエル?」



こんなところでシュルツ家、勢揃いか!あのつっかかられたことは、今でも忘れられない。 恋する乙女はこんなにも怖いのか、と思い知ったから。可愛いのに、怖い。 可愛い子に睨まれるのは、何度も言うけどキツいものがある。それにしてもメリエルとエリオット似てるよね、と 心の中で思っているとその考えを読んだのだろうかエリオットが、双子だから、と淡々と返した。 今、私の心読んだ?!さすがリフィアの弟なだけはある・・・!思いっきりリフィアの血縁だ・・・! リフィア・・・双子の妹と弟がいるって言っておいてよ・・・! リフィアの身内に訳が分かんないことで恨まれたくないよ・・・。(訳分かんないこと=シリウス)ぐはぁ。



「エリオット!もー、こんなところにいた!ってなに・・・やって・・・・!!」
「こ、こんばんはー・・・ははは」
「ちょ、なんでがここに!ちょ、エリオット説明しなさいよ!」
「ああ、偶然に会ってこんなことに」
「こんなことにって!体勢可笑しいわよ!こんな所、姉さまに見つかったらなんて言われるか!」
「もう人に見られてるし、関係ない」
「え、人?ど、どういうこと」



なの、と言おうとして最後まで言葉を繋げる事が出来なかった。
エリオットのローブにばふっとうずめられたかと思うと、ぎゅ、っという音がして、抱きしめられる。
はぁあああ?!今度こそ頭が真っ白になった。じたばたしてみるが、ちっとも相手は動じてない。 メリエルも何かを叫んでいるようだが、私も私で叫びたい気持ちでいっぱいだ。でも 声が出ない!ちょ、本当になにを考えているのかよく分からない人だ、エリオット・シュルツ。 さすが、リフィアの弟。しかし、なにもかも分からないのに、リフィアの弟ってだけで納得出来てしまうような気がしてくる。



少しして、ようやく離してもらえたと思ったら、隣に立っていたメリエルは黙りこくっていた。
状況が掴めず、辺りを見回してみる。 前にはエリオット、その隣にメリエル。2人の目線は同じ場所。私もその目線の行く先に目を向けてみる。
そこには廊下の角から出てきたのだろうか、 唖然とした表情のシリウスが立っていたのだった。







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