やはり一時近付いたかに思える距離もふと気を抜いた瞬間にまた一気に離れてしまうものだ。
俺はそれを今――この身でひしひしと感じている。あのあとエリオットの事もまともに聞けなかった自分に落ち込みそうに なるが、そんな事をしている場合じゃない。リフィアはこの事を分かっていて見逃したんじゃないかだとかそんな 馬鹿みたいな事を思ったりもした。
・・・本当の所、疑ってみてもさすがのリフィアにも未来を見通す力なんてない事はよく分かっている。 こんな微妙な距離で止まっているのは自分が悪い訳だし、これから頑張っていこう!
ぐっと拳を握るシリウスを冷めた目で見ているリーマスはそんな彼にとどめを刺した。そりゃもうぐっさりと深く。


「だからその気持ちにもうちょっと早く気付けてたら良かったのにね、残念」
「・・・うっ!リーマス気にしてる事を!」
「だからあえて言ってあげてるんだよ、分かるよね?」
「・・・・・はい、すみませんでした」
「だけど図書館では良かったね。まさか君が勉強を教えるなんてさ。も君がそんな悪い人間じゃないって分かっただ ろうし」
「まぁ、まぁな。運が良かったていうかなんていうか」
「その通りだね」
「・・・リーマス」
「なに?」


レポートから顔を上げたリーマスは相変わらずの笑顔で俺を見た。 ニコニコの裏が怖い。ちくり、と刺すように言うのだから余計にそれが堪える。 だがリーマスはそれを気にした様子もなく(むしろ気にしてくれていたらおかしい)笑顔のままで1枚の紙を レポート用紙の下から引っ張りだした。 ああ、クッキーの食べかすが付いたままなんですけど!


「これ、知ってる?」
「ああ?なんだよ、それ」
「レイブンクローとの合同授業のお知らせ」
「……なに?!」


こ、こここれは凄いチャンスなんじゃないか?レイブンクローのとグリフィンドールの俺とでは、話す機会 どころか見かける機会すらないに等しい。この前も前に会った場所でまた会えないだろうかと待ってみたりしたが…、


「そういうのなんて言うか知ってる?ストー、」
「待て言うな!!俺は違う!」
「ストーカーって皆そう言うよね」


リーマスによる俺いじめはとりあえず置いておいて。


「そんなことより、合同授業はいつだ?」
「そんなことって…ストーカーって結構重要じゃない?まぁいいか、明後日だよ」
「明後日?!すぐじゃねぇか!こうしちゃいられない!」
「いられないって…なにするの?」
「…なにもやることないが…こう、気持ち的にだな」


身振り手振りで説明する俺を鼻で笑った後、こう言い捨ててリーマスは談話室を出て行った。

「エリオットとか言う奴の事調べたらどうかな?まずは身元からだよ」






「ジェームズ!」
「なんだい、そんな必死な顔をして」
「お前知ってるか?エリオットっていう奴の事!」
「落ち着けよ、シリウス。エリオットなんて名前この学校に何人もいるよ!」
「そ、そうだった…!えっと確か…って俺聞いてねぇ!」
「…シリウス、それは間抜けすぎるよ」




そんなこんなで自分がエリオットの容姿ぐらいしかろくに分からないことに気が付いた俺は、 かなりのダメージを受けつつも、なんとか前に進もうとしていた。 ジェームズに聞けば分かるとも思ったが、なんだか冷静に諭されて自分がどれだけ 間抜けかを思い知らされただけだった。
あと、俺にはさらに重要なことがある。そう、合同授業のことである。
合同授業とは言っても特に寮同士が合同ですることはあまりない。
教授の予定がなにかとかち合ってしまって、やむを得ず合同という場合もある。 その場合、違う寮同士でペアになることは極めて少ない。
・・・何故って、同じ寮でもうすでに仲の良い友達と組んでしまうことが多いからだ。 それを俺は今、猛烈に悩んでいる。




「シリウス・・・?シリウス、ねぇ、シリウスってば!」
「・・・いって!な、なんだ、何が起こった?ってジェームズその手に持った分厚い本は・・・!」
「ジェームズ・・・シリウスは最近ずっと寝てなくてね。あまり手荒なことをしてると壊れるかも」
「なんてことだ!シリウス睡眠はとても大切だよ。まぁ僕もリリーの事を考えるとね、」
「はいはい、ジェームズ退場」
「退場?退場だって?ちょっと待って、リーマス!君は最近えげつないぞ!」
「ピピーッ」
「話を聞いてくれない上に、話してもくれないのかい!?」


隣は余計な会話しかしていない。そんな2人に相談をもちかけるだなんて馬鹿な事は出来ない。
・・・っつうか、聞いてくれないだろうしな。
大体相談した所で、笑われるのがオチである。まぁ、その合同授業の前に俺には大きな課題が のしかかっている訳だが。そう、エリオットとかいうあのに抱きついたああいまいましい・・・ 以下略のやつの事である。


「ああ、そういえば前に言ってたエリオットだっけ?調べておいたよ」
「・・・ああ、はいはい。・・・・ってジェームズ?!!!お前、どうした!?」



俺の重くのしかかっていた問題は、たった今結構あっさりと解決をしたようだ。
ジェームズの人脈はかなりのものだが、前回お前エリオットなんて 山ほどいるとか言わなかったか?言ってたよな?調べてくれてるなら、調べるよ、とでも一言言って くれれば、こっちも眠れぬ夜を過ごす事も多少は減っただろうに。
あまりの早い解決に俺はほっとしたような泣きたくなるような気持ちになった。 いや、だってまさかそんなに早く身元が分かるだなんて思わないだろ、普通。


「君が言ってた外見だとか、そういうのを色々と参考にして聞いてみたんだよ。かなり詳しい説明だったしね」
「ああ、あれは忘れられるもんじゃねぇ・・・。今も忘れようとしているのに、その情景が浮かんでくる・・・!」
「重症だね、君は。そしてそんな君の為に、僕はある1人を突き止めた!」
「マジでか、ジェームズ!俺お前を尊敬するよ・・・今までないがしろにしててごめんな・・・」
「そうか、じゃあ僕の話を聞いてくれるかい?そう、あれはリリーが、」
「それは巻きで。それより奴の事を教えろ」
「君もリーマスと所詮同じなんだ・・・はぁ、」



リーマスはいつのまにか席を立ってアイスココアのおかわりを作りに行ってしまったようだ。
談話室にある簡単なキッチンはすでにリーマスの手中に落ちており、ココアやら、スティックシュガーやら、 ガムシロやらで埋め尽くされている。前にピーターが紅茶を淹れた時なんて、スティックシュガー 5本を突っ込まれていた。そして当然のようにピーターは涙目(最近デフォルトである)
ああいや、そんな事は置いておいて、だ。




「それで?奴はどんな感じだ」
「そうだね・・・僕が聞いたところによると、容姿端麗、成績優秀な今年入ってきた新入生だそうだよ。 ああ、あとファンクラブとかも出来てたっけ。容姿が目立つ割にあまり喋らないから『彼の あのミステリアスビューティなところがたまんないのよね』とか 言われてるみたいだね。物腰とかも優雅だし、紳士的だから最近のホグワーツ女学生の中で 人気の注目株。僕らの中ではタイプ的にリーマスみたいな感じかな。 ああ、もちろん紅茶に角砂糖10個いれたりもしない。まぁ、ようするに君とは間逆ってことさ」


息継ぎをいれずにべらべらと喋り続けるジェームズの言葉を聞き逃してしまわないように、 じっと聞き続けるが最後のシメの言葉、間逆・・・・そうか・・・。
だが、俺は声高らかにこう宣言したい!


「急に抱きついたりするのは紳士的ではないと思う!」
「・・・まぁ君も大概紳士的ではないと思うけどね」
「・・・そうだった・・・俺、今後の身の振り方考えた方がいいかもな・・・」
「どんまい、シリウス。今気付いたところでちょっと遅いかもしれないけどね」




ジェームズのその言葉が久々にまともだっただけに、俺に与えられるダメージは半端なかった。
しかもリーマスと同じ事を言われた・・・。
なんか・・・・はぁ。俺は本当に馬鹿な事ばかりやっている気がする・・・。







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(090714)