人生、ここだけは外せないというところが誰にでもあると思う。 思わず飛び出してしまったのは仕方がない事なんだ。だが、なんだろうかこのいたたまれない感じは。 そう言うなれば、 「ほーんとシリウスは馬鹿だよ」 「行き成り走り出すから何かと思ったよ、馬鹿」 「お前ら、やかましいぞ。馬鹿が」 ・・・・・・・・・・・・・なんでこんな酷い言われようなんだ、俺。 上から、ジェームズ、リーマス、スネイプ。毒舌3人組とか作ってデビューすればいいんじゃねぇか? と思わず提案したくなるほどの酷い言い様。 馬鹿馬鹿馬鹿を連呼される俺、シリウス・ブラックは一応感謝されこそすれ、こんな風に言われる覚えは・・・ それは、まぁ。身に覚えはあるにはあるのだが。 「シリウス、君ね。なに廻りくどい言い方してるのさ。身に覚えがなきゃこんな風に言う訳ないだろ?」 「・・・・・・・・あれはほんと、酷いよね・・・・・・・うん」 「リーマスが言葉少なになると、余計に心に突き刺さるんだけど!」 「あたりまえだよ、突き刺すように言っているんだからね」 撃沈した俺は湖の傍にがくりと膝をついた。 経緯はこうだ。 水に落ちた下級生を助けようとしたを目撃してしまった俺は湖に飛び込んで、彼女の手を引っ張り上げた。 ただそれだけの事だけれど、かなりここの部分が重要だ。 まぁ、そこでうんたらかんたら(以下略) ・・・・・・・・そして今に至るのだが。 俺が湖から上がった時にはスネイプの心底嫌そうな視線が突き刺さった。あの視線はかなり冷たかった。 それにイラっとしていると、その後ろからジェームズとリーマスが歩いてくる。どいつもこいつも! スネイプは俺の前まで来ると、ため息をわざとらしく吐いて、嫌そうに表情を歪めながら口を開いた。 「やはりお前か・・・先ほどから視線が痛くて仕方がなかったぞ」 「けっ、お前には関係ねぇだろうが」 「いちいち殺気を飛ばしてこられて煩くて適わん。僕はあいつに振りまわされているだけだと言うのに」 だが、なんというか。天敵スネイプと組む 。 なんという運の悪さ、いくらリフィアが放り出したからといって何もこいつと組まなくても、と いらだち紛れにテキストを投げつけたのは記憶に新しい。 スネイプがめんどくさそうに愚痴を言ってため息をつくが、俺にはそれがうらやましくてならない。 ・・・・表立っては決してそんな事を言わないけれど。本音はそうだ。 スネイプとあの要注意のエリオットと一緒に組む、と知った時にはくらりとめまいが起こった。 あ、もう俺、駄目だ。ピーターが下で「お、重いよ!シリウスってば。ちょっと気が付いてる?!ねぇ!」とか 喚いていた気がするが、それさえもおぼろげにしか思い出せないほどにショックが大きかった。 だからあいつらの後を付ける事にした。ペアも組まずに、課題もこなさずに、なにやってんだか、という気持ちは 自分にもあった。でもそれでも気になるもんは気になるし、どうしようもないのだ、とジェームズとリーマスに言って 付いてきてもらったのだ。その時の2人の冷たさといったらなかった。 しかし今、それを超えるほどのショックが俺を襲っていた。本当に俺って・・・。 「でも、まぁなんというかご愁傷様だね」 「なんて声を掛けたらいいか・・・シリウス、君ってばほんと、」 「うるせぇ!しょうがねぇだろうが!」 「無駄にずぶぬれになっただけだな」 そう彼女の、手をひっぱりあげたのだ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・しかし彼女が違った。 彼女だ、と思って引き揚げたのは、下級生の方の女で、肝心のは湖の底。 それに気が付いたスネイプとエリオットが共同でを助けたのだった。 なんてこった。必死過ぎて周りが見えないとこういう事にもなる。急いで引き上げたせいで、下級生とを 繋いでいた手は離れて、はそれで余計に冷たい湖の中に取り残されることとなった。 魔法は便利で、いつだって使いこなせるものだったのに肝心な時にはそれも忘れて湖に飛び込んでしまった。 いつも得意げに出して見せる難しい魔法だって、いいや、簡単な魔法だってひとつも浮かんではこなかった。 俺は一体何をやっているんだ、と自己嫌悪なんてものになりかけたのだが、周りははそうさせてくれる暇さえ 与えてはくれなかった。ジェームズとリーマスの代わる代わるの発言が痛い。 「、どう思うかなぁ。まさか間違えたなんて」 「だぁあああ、もう言うな!大体湖は暗くて濁ってるから分かりにくいんだよ!」 「へぇ、そう、そんなことで見間違えたりする訳。ふーん」 「うっ、し、仕方がないんだよ!」 「見苦しいな。男の言い訳と言うのは。だらしないのを自覚したらどうだ」 「お前に言われたくない!その長ったらしい前髪だとかよれよれのシャツとか!」 「ふん、お前の女にだらしない所より余程マシだ」 「・・・・・・・・た、確かに・・・・」 「ジェームズ!納得すんな!おい!」 「あなたたち!騒がしくするなら出て行きなさい!!!!」 ここでマダム・ポンプリーの喝が入った。ここで一番煩いのはあなたです、とでも言おうものなら さらになんと怒られる事か。そう、ここは医務室なのである。 なんとか2人を引き上げた後に、急いでホグワーツに引き返し報告したのである。 冷たくなった2人の身体はぴくりとも動かなかった。けれど、命に別条はないと聞いて、ほっと 胸をなでおろした。あとは眼を覚ますだけだ、と。 自分の不甲斐なさに腹が立って仕方がなかったけれど、それでも無事であった事は、本当に喜ばしい事だ。 騒ぎを聞きつけたのか、リフィアが言葉も出ない様子で医務室のドアを開け中に入ってきた。顔は青ざめていて、 いつもの自信に満ちた表情は雲隠れしていて、下手に声も掛けれない様子だった。 「リフィア・・・、その、」 リーマスが俺の肩に手を掛けて、ゆっくりと首を振る。 それは、何も言うな、という目だった。俺はそれを見て、他の奴らを見渡した。 スネイプもエリオットも黙ったままで、そのままゆっくりとドアへ向かう。 俺はもう一度ベットに横たわったを見て、傍に寄り添うリフィアを見て、ドアに手を掛けて外へ出たのだった。 next→ ----------------------------------------- (100602) |