「おはよー、」
「大変だったらしいね、!大丈夫?」
「あーうん平気。無事だったから」
「それにしてもその頬、どうしたの」
「うー、うん。これはその」
「どうしたどうしたー。男にでもやられたか」
「・・・その方がまだマシだったよ。恐ろしいよ」



大広間へ行くまでに、私とメリエルのあの事件は広まっていたらしく、声を掛けられる事が多かった。
しかし、大事件になった割に平然と回復している私を見て野次馬根性も冷めたみたいで、なんだそんなに 大したことかったんだな的な視線が始終注がれていた。居心地が悪いままリフィアと大広間を目指す。 とにかく今の目的は、朝食だ。おなかすいたなぁ・・・。











そう、あの湖から医務室へ運ばれた後、一晩を過ごした私は、無事にその朝目が覚めた。
おなかはぐーぐーと絶え間なく鳴き、実のところ空腹によって目が覚めたってのもある。あの朝は遅刻しかけて たからレモンキャンデーしか食べてなかったしなぁ・・・。
ぱしぱし、と目を何度か瞬きさせて周りを見れば、ベットに上半身を倒すようにして眠るリフィアがいた。 そっと名前を読んでみる。起きる訳ない声量で。



「・・・・・・・・リフィア」
「・・・・・・・・・、」



名前を呼べば、名前を呼び返してくれた事にびっくりする。 眠りは浅かったのだろうか。ううん、と一回唸ってから身を起こすリフィアは眼の下にクマが出来て髪は乱れていて、 いつも完璧な容貌からは程遠かった。
でもそれだけ心配してくれたってことだよね。身を起こしたリフィアはいきなり矢継ぎ早に私に質問を投げかけた。 いや、投げかけると言うよりは詰め寄る、の方が正しいかもしれない。



、どうして溺れたのよ。泳ぎは人並みに出来るって言ってなかった?」
「いやぁ、それがあの日朝食食べれなかったからお腹すいちゃって・・・」
「な・・・・!」



リフィアの眼が見開かれたと思ったら、平手が飛んできた。
いきなりの事過ぎて避ける事も、なにも出来なかったので直撃でくらったのだけれど、その痛みというか 衝撃に驚き過ぎて、目の前のリフィアをただ見つめる事しか出来ない。 この私が置かされている状況を茫然というのだろう、うん、ぴったりだ。



「メリエルの事はお礼を言うわ、ありがとう。でも、・・・・本当に心配したんだから」
「リフィア・・・ごめん、朝食、もう抜いたりしないから。ごめんね・・・リフィア、泣かないで」
「泣いてなんかいないわよ!馬鹿言わないで・・・・エリオットから聞いた時、――――、止まるかと思った」
「え?・・・リフィア?」
「・・・・なんでもないわ!」



どうしたらよいか迷って上げた手を下げたりとおどおどとしてしまう、まさかリフィアが泣くだなんて思いも しなくて。 ぷい、っと横を向いてしまったリフィアをなだめるので精いっぱいだったけれど、 その心配してくれた気持ちが嬉しくて、じんじんと熱を持つ頬を押さえながらも私は最高の笑顔を見せた。
涙をふいたリフィアは(本人は泣いてないと言い張るのでまぁ、そうは言わないけれど)口を開く。



「それで?気分はどう?大丈夫?痛い所ない?」
「・・・・・・・・・え、えっと・・・今リフィアに平手打ちされた所が一番痛い・・・」
「それは良かったわ」
「その笑顔、さすがリフィア・・・・。あっ、メリエルは大丈夫なの?!目、覚めた?」
「ええ、おかげ様でぴんぴんしてるわよ。にお礼言ってたわ」
「そっか、良かったね。セブルスとエリオットにもお礼言いに行かなきゃ」
「そうね、頼れる奴らが一緒の組で良かったわね」
「うん、迷惑ばっかり掛けちゃったけどねー。セブルス怒ってないといいけどー・・・」



ぎゅっとシーツを握れば、その上に優しくリフィアの手が置かれる。 心配をかけたけれどメリエルも無事だって言うし、私のやった事が良い方向に動いて良かったなぁ、と 思った。











「ちゃんと食べなさいよ、
「分かってるよ、そんなに盛らなくても食べるってばー」



無事に大広間へ着いて、席に着くと、リフィアが私の皿にこれでもかってくらい食材を手当たり次第に乗せる。
そ、そんなにはいくらなんでも、という視線に気が付きながらも気が付かないふりをしている リフィアである。これは逆らえない・・・!フォークを握りしめてこの量をどう食べるか 思案している時だった。



「じゃあ、いただきま・・・・・ぐはっ!」
!大丈夫なの?!心配したのよ!平気?もう動けるの?!」
「ぐっ・・・・!ごほっ、げほっ!」
「リリー、の喉が詰まってるわ・・・首から手を離して」
「ああっ、ごめんね、。私ったらつい!」
「う、ううん、リリー心配してくれたんだね、ありがとう。もう平気だよ」
「そうなの!良かったわ!私心配で心配で・・・!ついジェームズにヘッドロック掛けちゃったくらいよ!」
「ええと、ジェームズ・・・・平気かな・・・・」



、スープ零れてるわよ、とリフィアに言われて慌てて遠い目をしていたのを戻して 目の前の朝食に意識を戻す。
ジェームズのメガネ、ぼろぼろになってるだろうな・・・でも多分ジェームズ 喜んでいる気がしてなんか嫌だ。リリーに関する事ならなんでも嬉しくなっちゃう人だからなぁ・・・。 恋とは素晴らしいな、うん。
そんな事を思っているとその本人が背後に登場した。リリーの表情は恐ろしくて言えないくらいになった。



「やぁ、リリーおはよう!良い朝だね!・・・・ん?、君もう大丈夫なのかい?」
「おはようジェームズなんだかすごく話が広がってるけど平気だよ」
「・・・・・・・・」
「そう、それは良かった。あ、リリーどこに行くんだい?」
、また会いましょ!じゃあね」
「リリーは恥ずかしがり屋さんだからなぁ」
「ジェームズのそういう所尊敬するよ・・・すごいね。心折れないんだね」
「ん?まぁ僕は毎日前向きにがモットーだからね!・・・・・ちょっとシリウス、なにしてるのさ」
「ばっ、声掛けんなジェームズ!バレるだろが!」
「シリウス・・・・、君、そんな所にいたら嫌でも目に入るよ・・・出てきなよ」
「なんだと!お前には俺のこの繊細な心が分かんねぇのか!」
「シ、シリウス・・・とりあえず出てきた方が良いよ。狭いでしょ、そこ」
「あ、ああ・・・・」



そう私がジェームズに続いて声を掛けるとシリウスは若干戸惑ったものの、レイブンクローの机の下から はい出てきた。そして平然とした感じで私の前に立つシリウス。いや、なんでそんな所に?という疑問は 沸き上がるのだけれど、それを感じさせない自然な動作だった。
さ、さすがだ、あんなに挙動不審だったのに、優雅ささえ漂うこの感じ。やっぱり美形は違うな。 リフィアもそうだけど。
そんな事を考えていると目の前に立つシリウスはそわそわしだした。そして隣に座っているリフィアの オーラが急速冷凍した感じがひしひしするんだけど。
このどうにも煮え切らないシリウスの態度に 苛々とする、と前に言っていたので、多分それだろう。
シリウスは散々変な咳払いと目をきょろきょろとさせた後、ようやく口を開いた。



「あーその?・・・・身体の調子は、大丈夫か?」
「あ、・・・うん、大丈夫だよ。問題なしです」
「そ、そっか。それなら良かった」
「シリウス、押しが弱い!なんでそこでいつもみたいに行かないんだい?」
「うるせぇ!余計なエール送るんじゃねぇ!」
「エールって事は認めるんだ・・・・」



斜め下に俯きがちに言われた言葉はさっきから言われ続けている「大丈夫か」の言葉で。
まさかシリウスがそんな言葉を言うなんて想像もつかなくてしばし止まってしまったけれど、 その顔を上げた時のシリウスの顔がなんとも言えない顔だったので、少しひっかかった。



「シリウス、気のせいだったらアレなんだけど、なにか・・・・あったの?暗いよ?」
「はっ?!へっ、あ、ああ!だ、大丈夫だ少し・・・少し自分の不甲斐なさにへこんでるだけだから・・・」
「そ、そう?元気出してね」
「・・・・・・・・・ごめんな、
「本当にどうしたの?!重症じゃない?気持ち悪いよシリウス!」
「気っ、気持ち悪・・・・・、」
「顔色も悪いみたいだし・・・!」
「あの?シリウスは、その放っておいていいんだ。奴の自業自得だからね!」



どんどん顔色が悪くなっていくシリウスを心配した言葉は途中でジェームズに遮られてしまった。
リフィアは笑ったままだし(ただし冷凍済みの笑顔だ)この微妙な空気を打破する為に、 山のような朝食に私が逃げたというか、結果立ち向かう事にしたのは言うまでもない。









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(100707)