なかなか上手く行かない事ってこうも長く続くものなのか、俺はふぅ、とため息をついた。 普通こういう時ってそう、友人なら心配してくれるものだろ?だがしかし、だがしかし! 俺の友人(もしかして違うのか?!いやそんなはずはない)はそんな素振りをまったく見せない。 別に心配してほしいとかじゃなく、ただ、優しい言葉が少しだけ欲しいだけなのだ。 湖落下事件からというもの、スネイプのあの顔とエリオットの顔が浮かんでは消えて、 そのたびに自分の不甲斐なさというものを心底知らされる気になった。 あれだけ魔法が得意だの、次席だの言っていた自分がむなしく思えて、肝心な時にはなにひとつだって 出来ない。あれが、じゃなかったらなんのためらいもなく杖を振って助けていただろうから。 それが出来なくて、頭の中が真っ白になったんだ。 ・・・・・・・・・・こんなこと初めてだ。魔法が使えないくらいに、だなんて。 俺が出来る最大の事をに贈ろうと思う。 たとえその結果がまたしても不甲斐ないものだとしても、それでも俺はやめないから。 * 「・・・・・・・・・・・・!」 「シリウス、落ちつけ、落ちつけ。どうどう。いつもの君はどこへ行ったんだい?帰っておいでー」 「ぐるるるる、とか唸ってるとこ見るとほんと犬そのものだよねー」 「あ、すみません、これ見世物じゃないんで。ごめんなさい・・・!」 「ほら、シリウスの奇行のせいで人が集まってきちゃったよ」 「うう、めちゃくちゃ見られてる・・・!」 「ピーターほら、気をしっかり持って」 「うう・・・ありがとうリーマス・・・」 今日は休日だ。朝食も食べ終えて寮に戻ろうとして中庭を横切った時だった。 視界に入ったのは、と、セブルスだった。うげ、最高に良い奴と悪い奴の組み合わせって・・・! 前の授業の時から急速に接近しているような!気が!するのは!俺!だけか!!!??? 「エクスクラメーションマーク使いすぎだよ、シリウス」 「はっ!リーマス、俺の心を読むな!」 「だだもれだよ・・・読もうと思わなくても分かっちゃうよ・・・うんざりだ」 「うんざり?!ちょ、リーマス!そこまで言わなくてもいいんじゃねぇか?!」 「誰がシリウスの事クールとか言い出したんだろうね・・・僕にはさっぱりさ」 「お前ら・・・!」 睨みつけるように2人を見るものの、2人には気付かれないままで。 あ、が笑った。対するスネイプは仏頂面なままなのに。くそー、それがどんなに俺にとって羨ましい事か 知りもせずに、その表情は憮然としたままである。なんて奴だ。 息を一回はぁ、と吐くとどすどすと2人に向かって一歩踏み出す。 「おい!」 「・・・・じゃあ、僕は行く」 「あ、うん。またねーばいばい」 「ちっ・・・んだよ、あいつ」 「セブルスとシリウス、仲悪いもんねー。というかシリウスガラ悪っ!」 「んなことねぇよ。いつだって紳士だろ?」 「し、しんし・・・・・・・・・・・・・・・あー、うん。じゃあね、シリウス」 「おい、待てよ。なんで逃げようとするんだよ」 身体をひるがえして逃げようとするの手首をぎゅっと握ってひきとめる。 同じ黒髪がふわりと揺れて、振り返ったの目と俺の目が重なる。 こいつの前ではどうもいつもの俺らしく振舞う事ができない俺だけど、これくらいは頑張れる。 頑張ると言った手前、逃げはもうない。背後は崖だ。 「だ、だって、シリウス・・・・。その、」 握ったままの手首が熱い。いや、熱くなっているのは俺だけだ。 俯いてごにょごにょと言うを俺は辛抱強く待つ。 いつもと反応が違う、もしかして・・・?と期待を持つ。呼吸をするのすら忘れてしまうくらいに、 張りつめた空気が周りを包む。いや、正確に言えば、俺の周りだけだけど。はりつめてんのは いつだって俺だけだ。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・っ、ぷ、」 「ぷ?」 「ぷ、あっ、あははははははは、シリウスってば。なんか必死で面白いんだもん。別に逃げないよ」 「お、面白いってお前なぁ・・・」 顔をあげたはなんでか笑いだした。 彼女の屈託なく笑う顔を見ていたら、呆れるやらなにやらで張りつめた空気はまたたくまに 吹っ飛んでいってしまった。 「・・・・・・・あ!」 「なんだよ、」 「そう、あのね、シリウス!」 「?」 掴んでいた手首はいつのまにやら俺の手の中からすり抜けており、その代わり俺の両腕は にがっしりと掴まれていた。ち、近い・・・!意識しないようにしないようにと 思考を逸らそうとしたもののそれに失敗する。無理だー・・・・。 そう思って若干顔を逸らそうとしたものの、相手は興奮しているのか、こちらを見上げて 距離を詰めようとしてくる。しかも眩しいばかりの笑顔で。 こんな笑顔いつ見たか?今がもしかして初めてかもしれない。つーかまたしても思うけど 俺とっていつぶりの会話した?湖事件終わってからろくに話してねぇぞ。 何度も思ってしまうけど、本当につながりが薄いよなぁ・・・。 「前にシリウスが教えてくれた所、満点取ったの!」 「は?・・・・教えた・・・・ああ、あれか」 「そうなんだよー、小テストが抜き打ちであってね。そこであの問題が出たんだ!」 「・・・・良かったな」 「うん」 たった一言絞り出すのが精いっぱいで俺はかろうじてその言葉を返した。駄目だ、かわいすぎる。 本人はにこにことなにも知らずに笑っている。 それを見て俺は眩しくて顔を背けたくなる。なんで俺がこんな恥ずかしいような感じにならなければ ならないのか・・・!くそ・・・! そういやこいつレイブンクローだったなぁ、頭いいはずなんだがなんだろう、 この馬鹿っぽさは。本人に言ったら怒られるだろうけど、なんだろうバカ可愛いっていうのか。 にこにこ笑うはやっぱり可愛い。わしゃわしゃと頭を撫でて抱きしめてやりたくなる。 やっぱり日本人って小動物っぽいよなぁ・・・・。 それにしても、あの時の勉強がこんなところで良い方向に来るとは思ってもみなかった。 感謝されているようだが、教えたっていってもその時俺はどうすればと一緒に いられるかってことで頭いっぱいだったから、そんなに教えた内容は覚えていないんだけどな。 まぁ喜ばれたんなら、良かったけど。というかおいしいよな、今の状況おいしいよな! 滅多にないおいしいところだ!嬉しすぎて3回も言っちまった。 「チャンス逃すな、いけ!シリウス!いけいけどんどん!」 「しぃ、駄目だよジェームズ。ここで外すのがシリウスの御約束なんだからね」 「2人とものぞきは良くないよー。シリウスに怒られちゃうよ」 「こらっ、そんな事じゃいけないんだぞ、ピーター!君は弱気すぎる!」 「ええっ!そうかなぁ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お前ら、」 「シリウス、怒る気持ちは分かるけど僕らの前でそんな寸劇やろうものなら、からかわれるに決まってるじゃないか」 「ジェームズ、リーマス、ピーター、おはよう。そんな所にいたんだー」 おいしい状況は一瞬にしてかき消えた。 おい、柱から丸見えだお前ら、と、 まぁ、そんなもんだ、と納得して流せるようになったなら俺は本当に大人で紳士なんだろう。 だが、俺はまだまだ大人でも紳士でもなかったようだ。怒りは隠せそうにない。 というかそんな俺は、俺じゃない。 しかし朗らかに笑いながら挨拶をするは全然そんな事を気にする様子もなく、あっさりと俺から離れた。 悲しいような、ほっとしたような。 そしては俺たちの後ろに現れたある人物に手を振った。 あれは・・・・・・・・・・・・げっ、リフィアとエリオットと・・・湖でひっぱりあげた女だ。 げげげげっ、と思っていると何を思ったのかジェームズ達は俺の肩に手を置いて「じゃ!」とか言って 去っていく。おま、なんでこういう時だけ潔いんだよ・・・!俺を置いて行くな、と 声にならない叫びをあげたがウインクだけ残してジェームズは廊下をと歩いて行ってしまった。 それに続いてリーマスもぽんっと肩を叩いて脇をすり抜ける。 ピーターはおどおどとしながらリーマスに着いて行ってしまった。 ぽつん、とつっ立ったままでしかいる事の出来ない俺は微妙な笑顔を浮かべ続けるしかなかった。 きっと今日は微妙な休日になるに違いない、俺はほとんど動かない思考でそう思い、リフィアの 極上の笑顔と相変わらず何を考えているんだか分からないエリオットを見た。 「リフィアー!あれ、エリオットもメリエルも!」 「、待たせたわね」 「おはよ、」 「・・・」 「メリエル、大丈夫?元気?調子戻った?」 「・・・っ!」 「わっ、ど、どどど、どうしたの、メリエル!」 「にお礼を言いに来たみたいよ」 「・・・・・・・・・・・ありがとう、それと、ごめんなさい」 「いいよ、元気ならそれで」 「・・・・・・・・・・うん」 の肩に腕を回してメリエルは一言二言話して腕を外した。 なんだか俺の知らない所で話しは進んで、感動的なストーリーが繰り広げられているんだけど。 どういう事だよ。良かったね、みたいなこの空気。俺は完璧に蚊帳の外だ。 「メリエル、あなたシリウスにもお礼言っておいた方がいいわよ。シリウスが引っ張りあげたんだから」 「げ!」 「え?」 「え?シリウスが?」 が振り返る。俺は苦笑を浮かべながら頷くしかなかった。 メリエルはこちらを見て、口を開く。 「ありがとうございました」 「あ、ああ。気にするなよ」 本当に助けたかったのは君じゃなくて、その横にいるんだけれど。 そんな心境だった手前、素直にお礼に応える ことも出来なくて曖昧に言葉を濁して返した。助かったのはとても良かったことだ。そう、 良かったんだ。ただ、完璧じゃなかっただけで。 next→ ----------------------------------------- (100802) |