今日は月曜日である。私は休日中はもうコンビニで阿部隆也と会ったようなあんな事態にならないように極力外に出かけなかった。
引きこもりと言われても勝手に言っておけばいい。ふんだ、スイカバーを取られた罪は大きいんだぜ!
しかしなんだかこういうことをされた覚えがやたらと身にしみているような気がするのは何故だ。
はっ!もしかして私記憶を飛ばす前にもこんなことされてたりした・・・?!嫌だ、自分がかわいそうすぎる!
好きなアイスを取られまくるとかかわいそすぎる!ゆっくり思い出していけば良い、とか思ってたけど
そんなわけにもいかない!このまま記憶が戻らなかったらずーっとこうやってシンデレラみたいにいびり倒される
だけだ!シンデレラだって一発逆転したんだから、私だってそうできるはず!そうできる!
人間やればなんだって出来る!ファイト一発、


放課後、私は阿部くんに話を付けに行くために拳を握りぐっと決意を固めた。
友達に阿部隆也って何組?と聞くと何故かおかしそうに笑って答えた。
「大丈夫〜?暑さにやられてんじゃないの?ってば」
「はっ?何が?大真面目に聞いてるんだけど!」
「知らないわけないでしょーが、あんた毎日阿部くんとこ行くんだからさぁ」
「何?!毎日?!なんで?!」
「何でって、冗談はやめなさいよ〜。阿部くんは7組でしょ」
「なっ7組ね!ありがと!」


何故私が毎日阿部くんのところに通っていたのか、ということはさておき7組まで全力ダッシュ!
さぁ勢い付けて決着をつけるぞ・・・もとい話し合って記憶取り戻すぞ!という意気込みは
7組前に行った瞬間・・・消えた。いないのだ、阿部隆也が。
というわけで7組の友達に探りを入れてみる。
「ちょっと阿部くんいない?」
「あー阿部?・・・残念、すれ違いね。もう部活行ったんじゃないの?」
「部活?何部よ」
「はぁ?、私をからかってんの?野球部でしょ」
「・・・野球部!りょーかい、ありがとーっ!」
またしても、ん?とか思う言葉があったがとりあえず阿部くんを探すためにグラウンドまで走る。
でもそっかー阿部くんって野球部だったのかー。スポーツやってるんだなぁとは思ってたけど、
野球ねぇ。ベースボール。そういや野球部の活動しているグラウンドってどこだっけか、と
疑問に思っていたが適当に歩いていたら着いてしまった。奇跡だ、きっと普段の行いがいいからだな!
勝手に思い込み、とりあえず活動中らしいからフェンスの向こう側で草刈りをしていた可愛い女の子、
多分マネージャーなんだろう、その子に呼んでもらうことにした。
「ごめん、阿部くん呼んでもらえるかな?」
「わ!ちゃん、練習中来るの珍しいね!阿部くんね、ちょっと待ってて!」
「(ん?また身に覚えのないこと言われたぞ・・・本当になんなんだ)」
そしてそのマネージャーさんにも私は見覚えがない。
彼女の口ぶりからすると私と面識があるみたいだったけど知らないし。しかも野球部があるということすら
私って知ってたっけ?早く記憶を取り戻す、と思ってばっかりであまり気にせずにいたけどもしかして
私阿部くんの記憶だけじゃなくてもしかして野球部全体の記憶が飛んでいるんじゃ・・・。
あ、ありうる。だから今まで話がどっか繋がらないところがあったりしたんだな!


そんなことを考えていると、阿部くんともうひとり坊主頭の人がこっちに走ってきた。阿部くん、なーんか重そうなもの着てるなぁ。
野球とか全然わからないのは変わりないけど、暑くて重そうだってことはわかる。実際すごい汗だ。


「何だよ、練習中に!」
「あ、うん・・・ごめん。邪魔したみたいで」
「まぁそう言うなよ。が来るなんて珍しいことだし」
「・・・花井」
「なんか話することあるんだろ?阿部」
「阿部くん私さ、」
「こっち来い!」


ぎゅっと手を握られて校舎の日陰になっているところまで引っ張って行かれる。
前を向いているから、表情なんて見えないけど怒ってるんだろーなーとは思う。マネージャーさんの言葉を信じると
するならば、記憶を飛ばす前の私はどうやら練習中には行ってないみたいで、それによって阿部くんは怒らずにいたのだろうから。
そして野球をどれだけ大切に阿部くんが思っているのかということも、多分記憶を飛ばす前の私は知っていたんだろう。
今の私にはどれもわからないことだらけだ。



「んで?何、」
「あ、あのね!私今気付いたんだけど、野球部のことについての記憶がまるっと無くなってるみたい!」
「いや・・・そんなに明るく言う話でもないだろ」
「でもね、私どうやら野球を大切にしていたみたいなんだよね!」
「はぁ?」
「周りの人たちの証言を元に推理してみました!」
「はぁ・・・」
2回目のはぁ、はかなりきた。あきらかーに呆れている。
しかも私の顔を見る→ため息を何回も繰り返している。5回繰り返された後(もうこれは明らかに悪意だ)
(本当に阿部くんは私を地獄に落とすのがお好きらしい)
「多分阿部くんが関係しているんじゃないかな、と思って。そうでしょ?」
「!」
少し、笑ってみると阿部くんは驚いたような顔をした。
すこし考えるような表情を見せた後、私をじっと見てそうしてからゆっくりと口を開いた。


「思い出させてやろうか?」
「・・・・・は?」


今度は私が呆れ顔をする番だった。



「暑さにやられたのかな・・・・」